被災した人たちへ、楽しい思い出を写真集にして配布したい

被災した人たちへ、楽しい思い出を写真集にして配布したい

支援総額

692,000

目標金額 610,000円

支援者
61人
募集終了日
2015年11月27日

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2015年11月10日 11:49

「おまえに」フランク永井

「私はその日、嫁ぎ先からほど近い実家に遊びに行っていました」

 

 歌と歌の合間、ふとした時間に何の合図もなく、集まった数名の女性が震災当日の話を順番に語り始めました。観光名所である風光明媚な海岸のそばにある、駐車場に建設された仮設の談話室。最初に口を開いたのは、一番年配の女性でした。その声は穏やかで、静まり返ったプレハブの部屋に心地よく響きました。

 

「家族とテレビを見ながらお茶を飲んでいたら、今までとは規模の全く違う、恐怖を感じるような大きな地震がありました。小さい頃から海辺に住んでいた私は、まっさきに津波が来ると頭に浮かんだので、急いで家族と一緒に家を飛び出しました。熊野神社というのが近くにあるのですが、坂の上まで階段で上がって、その途中まで波が到達したんです‥間一髪でした。同じ集落では、飼い犬を助けようとして自分まで流された方もいて」

 

 あの方、亡くなったのよね‥と、隣にいた方が相槌を打ちながら聞いていました。全員が俯きながら、当日のことを想起しているようでしたが、どの方も淡々とした表情で落ち着いていました。

 

 次に話をした方は、当日は市の中心部にあるスーパーマーケットで仕事をしていたそうです。

 

「私は店でレジを打っていました。大きな揺れがあり、店内にいた客も従業員も、それほど取り乱さず、そして慌てずに地震がおさまるのを待っていました。同僚は揺れている間、ずっと酒瓶が並んでいる棚を手で抑えていました。直後に停電となり、全てのレジは使用不可能になって、家が心配になった私は早退して通勤で使っていた軽自動車で私達の家まで帰ろうとしましたが、ちょうど町が津波に襲われた時間帯だったので、ぎりぎりで回避して迂回路に逸れて助かりました。家が流されたので、車は今ガソリンスタンドに置いたままになっています」

 

 三人目の方は他の仮設で行われた「歌と体操のサロン」にも来てくれた方で、私の音楽療法を気に入って心待ちにしてくれていたそうです。娘さんが働いていたレストランでの出来事を教えてくれました。

 

「本屋や洋服屋がある一角に、ファミリーレストランがあるんです。ご存知ですか?」

 

 私は大きく頷きました。

 

「ハンバーグが美味しい店ですよね、昔から良く行ってます」

 

「実は娘が働いているんです。娘はレジを打っていたんですが、大地震で店にいた全てのお客さんが途中で食べるのをやめて、帰ろうとしました。あんな緊急時だから、すぐに飛び出していっても良いくらいだと思いませんか?でも皆さん、律儀にお会計を済ませてから出ていったそうですよ」

 

 参加者による震災当日の話が終わったのは、20分後でした。私は出来るだけ彼女たちの目の前でメモはとらず、大まかなところを記憶して家で記録につけようと思いました。うっかりメモをとっていたら、話をしている最中の彼女たちの表情やしぐさを見逃していたと思います。

 

 三人目の方が、さっきとは一転して明るい表情で

 

「じゃあ、歌を聞かせて下さい。私の大好きな歌を是非」

 

 と言いました。

 

「何がいいですか」

 

「フランク永井の、おまえに」

 

 まだ仮設巡回の初めの頃だったので、歌詞があまり揃っておらず、残念ながらその曲は手元にありませんでした。私がうろおぼえでメロディと簡単な伴奏を弾いただけになりました。

 

「すいません、またお邪魔した時は歌詞を用意してきますね」

 

 彼女の夫は、この町にあるダンスホール(兼スナック)でテナーサックスを演奏していたのだそうです。私も過去、その店に行ったことがあり、外観からは想像がつかないような広いホールと、音の良い古びたアップライトのピアノが置いてありました。市の中心部にあったこの店も、津波で破壊されたそうです。

 

 この時期、他の仮設では見られなかった「震災当日の話を順番に語る」という光景が、何故この仮設だけ見られたのでしょうか。はっきりとした理由は分かりませんが、私の推察ではかなり早い段階で談話室に集まる人々のコミュニティが強く形成されたのではないか、と思われます。この仮設は談話室に足を運んでイベント等に参加する住民と、決して参加しない住民にはっきり分かれていました。他の仮設でも同様の傾向は見られますが、最初に談話室で寄り集まった集団が強く結ばれたことによって、後からは入りにくい雰囲気になってしまう‥ということが起こったのだと思います。

 

 その後、談話室の常連によって「さをり織り」という手芸活動のサークルが立ち上がったと聞きました。サークル名は「とつこ」、宮古弁で「からまった糸」という意味です。彼女らは北海道から来る支援団体の援助により、織り機を揃え、活発に作品創りと発表会を行っていきました。仮設住人が家を新築して退去した空き部屋を、第二の談話室として使用しながら、アトリエ代わりに日々素晴らしい作品を生み出しています。

 

 「とつこ」の活動が軌道に乗った頃から、音楽療法に参加する人は目に見えて減っていきました。私はそれで良い、と思いました。仮設に暮らす人の目の前にいくつもの選択肢があり、彼女らが自発的にどれを選ぶのかは自由です。そして、それが心の豊かさにつながるのだと感じました。

 

 ところで私は「おまえに」を弾いていて、何故か途中「さそり座の女」につながってしまうのですが。そういう方は他にもいるんでしょうか。同じパターンで「月光仮面」が「浪曲子守唄」につながります。
 

リターン

3,000


①お礼状(ポストカード)

支援者
31人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2016年2月

10,000


①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

支援者
20人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2016年2月

30,000


①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③「三陸ことば絵本」1冊

④オリジナルエコバッグ1枚

⑤当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

⑥仮設住民がヘンプもしくは刺繍糸で編んだミサンガ、フクロウなどのマスコット、布製小物など5点セット
(色や模様、種類は在庫により変更がございます、あらかじめご了承ください。)

支援者
8人
在庫数
1
発送完了予定月
2016年2月

50,000


①お礼状(ポストカード)

②写真集1冊

③「三陸ことば絵本」1冊

④オリジナルエコバッグ1枚

⑤当法人ホームページへお名前の記載
(掲載を希望されない場合はご連絡下さい)

⑥仮設住民がヘンプもしくは刺繍糸で編んだミサンガ、フクロウなどのマスコット、布製小物など5点セット
(色や模様、種類は在庫により変更がございます、あらかじめご了承ください。)


⑦仮設住民と一緒に「歌と体操のサロン」体験にご招待
(2016年9月まで有効、現地までの交通費は自己負担となります)

支援者
3人
在庫数
完売
発送完了予定月
2016年2月

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