患者さんにとって「楽しいこと」「嬉しいこと」は、いくら多くてもいいんです。
ほんの少しでも、辛い思い出の中に楽しい思い出をつくれたらいいと思います。
ファシリティドッグは「いたらいいな」の存在ではなく、必要な存在なのです。

 

 

今日は、過去にハンドラー森田とベイリーが登壇したTEDでの発表内容から抜粋し、
ファシリティドッグにとって大切な三つの絆を紹介させていただきます。

 

後ほど紹介する、Mr頑固ベイリー
こんな表情もするんですよ!

 

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1つめの絆:

「ファシリティドッグと子どもたち」
 

 

一つ目の絆は、ファシリティドッグと子どもたちの絆。

 


ファシリティドッグは毎日同じ病院で仕事をしているので、何度も同じ子どもに会います。

 

時には子どもと一緒に手術室まで行くこともできます。大人でも手術を受けるのって怖いですよね。「痛いのかな? こわいなぁ」って、病棟から手術室まで子どもにとっては恐怖の時間です。

 

でも、リードを持って一緒に歩くと、「こっちだよー」って、誘導しながら笑顔で歩いてくれます。

 

フサフサとしたしっぽに猫のようにじゃれつきながら歩く子もいれば
「しっぽでがんばれって言ってるね!」と嬉しそうに笑う子もいます。

 

 

こうして、怖い気持ちが楽しい気持ちに変わって手術室まで向かって行きます手術室までのお散歩は、みんながファシリティドッグをひとりじめ出来る時間です。

 

 


ある目の見えない子は、採血が始まるとき、いつもパニックになって泣き叫んでいた
のにファシリティドッグの頭をなでながら採血をしたら泣かずにできました。

 

手術後、痛くて動こうとしなかった子が、ファシリティドッグ会いたさに
ガバッと起き上がって医師を驚かせました。

 

 

 

子どもたちにとって「ただ、犬がいればいい」のではありません。毎日来てくれる、その子だからいいんです。絆で結ばれているから「がんばろう!」と思うんです。子どもたちにとってファシリティドッグは、共に闘う「しっぽの生えた仲間」なんです。

 

 

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2つめの絆:

「ファシリティドッグとハンドラー」
 

 

二つ目の絆は、ファシリティドッグとハンドラーです。


ファシリティドッグとハンドラーは24時間生活を共にしています。
お休みの日もいつも一緒。これが重要なのです。仕事のときだけ一緒にいて、仕事が終わったら「じゃあバイバイ」ではダメなんです。

 

 

ファシリティドッグとハンドラーとの絆、これがファシリティドッグが仕事をする上での基盤になります。絆があるから、ファシリティドッグは信頼して仕事をしてくれるのです。

 

でも実はトレーニングを受けた犬というと「何でも言うことを聞く」と思われがち
ですが、自分の意思がはっきりしているんですよ。

 


例えば、ベイリー。
ベイリーは困ってしまうほど頑固です。行きたい方向にしか進みません。
行きたくない方向には、脚をガッと広げて爪を立てて、絶対に進みません。

 

後ほど紹介する、Mr頑固ベイリー
こんな表情もするんですよ!

 

でも、病院に行くのを嫌と言ったことは1度もありません

逆に帰るときには「まだ帰らない!」と座り込んで、また病院の中に戻って行ってしまうこともあります。

 

犬は相手が自分のことをどう思っているのか、すぐに感じ取ります。自分のことを愛してくれる人がたくさんいる場所だから、ベイリーも病院が大好きなんです。

 

 

「人と犬と相思相愛」これがファシリティドッグの真髄だと思います。愛情のやり取りのない、犬のぬいぐるみではダメなんです。ロボットでもダメなんです。
 

お休みの日もずっと一緒です。

 

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3つめの絆:

「ファシリティドッグと医療スタッフ」

 

ファシリティドッグと医療スタッフ、これが三つ目の絆です。

 

ファシリティドッグのハンドラーは医療従事者です。なぜ、医療従事者がハンドラーになるのでしょうか?

 

先日の新着情報でも紹介いたしましたが、それは、ファシリティドッグは「癒し」だけではなく「治療」にも関わっていくからです。

 

 

ハンドラーとファシリティドッグは患者さんの治療方針を決める話し合いに参加することもあります。その場で私も患者さんの状態を把握して、その子に合わせた関わり方を考えていきます。カルテへの記載もします。

 

この「目的を持って関わっていく」というのがファシリティドッグにしかできないこ
であり、ハンドラーが医療従事者である理由でもあります。

 

 

 

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これまで、何千人もの子どもたちとの出会いがありました。

 

病状が悪化していき、ご飯が食べられなくなってしまった終末期の子がいました。食
べたいけど食べられない、そんな状態でした。残された時間が少ない中で、家族も看
護師さんも何とか少しでも食べさせてあげたかったんです。

 

そんなとき「ベイリーと一緒にご飯を食べたらどうか?」と提案がありました。ベイ
リーと一緒だと、笑顔で椅子に座りました。そして「ベイリー見ててね」と言って、
ほんの数口ではありましたが、自分でスパゲティをつかんで口に入れたんです。

 

アイスクリームをパクパク食べました。嫌々ではなく、楽しそうに。

 

その場にベイリーがいるだけで、これだけ変わるんです。「ベイリーに会いたいから入院したい」と子どもに言わせるほど、病院のイメージが変わるんです。

 

 

 

ベイリーと一緒だと、楽しい気持ちは倍増。
悲しい気持ち、怖い気持ちは半分こできるんです。

 

 

 

ほとんどの子は元気に退院していきます。でも、残念ながらお星様になって旅立って
行く子もいます。お空に旅立つ直前までベッドで添い寝することもあります。

 

「ベイリーが隣にいるのわかるでしょ?あったかいね」って、悲しいけれどあたた
かい、そんな時間が流れています。

 

お子さんのご葬儀に参列させて頂くこともあります。火葬場で最後に棺の蓋を閉める
ときのご両親の気持ち、想像してみてください。

 

 

でも、ご家族はいつも「ベイリーがいてくれて本当に良かった」と言ってくれます。
「ベイリーがいなかったら辛いだけの入院生活だった」「ベイリーがきてガラっと変
わった」と言ってくれます。

 

子どもを亡くしたご家族は、その後の長い人生の中、毎日その子のことを思い返しま
す。

 

「何度も手術をして痛い思いをさせて、かわいそうだった」と思い返すのと

 

「亡くなる前にもベイリーと添い寝して、くっついて笑ってたっけな」と思い返すの
とでは気持ちが全然違いますよね。

 

ほんの少しでも、辛い思い出の中に楽しい思い出をつくれたらいいと思います。一つ
でも多く、その子の笑顔を思いかえしてほしいです。

 

 


ファシリティドッグは「いたらいいな」の存在ではなく、必要な存在なんだと強く感
じています。

 

世界最高水準だと言われている日本の医療。ただ病気を治すだけではなく、もっと前向きに病気を治せる環境が必要だと思います。

 

 

患者さんにとって「楽しいこと」「嬉しいこと」は、いくら多くてもいいんです。ファシリティドッグがいて当たり前の日本、入院しても楽しいことがある日本の病院にしていきたいです。

 

 

本当にたくさんのかわいい子どもたちがお星様になって、私たちを見守ってくれてい
ます。あの子たちに自信を持って「いい病院になったでしょ」と言える日本の医療現
場にしていきたいと思っています。

 

 

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▼TED全編はこちらから

 

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