続々と、支援下さる方が増えてきています。
本当にありがとうございます。
正直、戸惑っております。
「被災地で雅楽を演奏しよう」、雅楽演奏家の私がごく自然に思ったこの行動が
こんなにも賛同頂けるとは思ってもおりませんでした。
ですが、まだまだ頑張らなければなりません。兜の緒を締めて頑張りたいと
思っております。


それにしても、調子は良いです。
…この「調子が良い」という言葉は雅楽の用語である、という事を御存知ですか?
正しく言えば「調子」は雅楽の曲名です。


「調子」という曲は、雅楽曲を演奏する前に序曲として必ず演奏される曲です。
雅楽にもハ長調やニ短調というような調性というものがあって、合計六つあります。
それぞれ、基準の雅楽音名を取って「壱越調」「平調」「双調」「黄鐘調」
「盤渉調」「太食調」です。(※太食、は音名ではありません)
この六つにそれぞれ「調子」という曲がある訳です。実際の名前は、
「壱越調調子」「平調調子」…となる訳です。
例えば、雅楽の中でも特に有名なのは平調(ひょうぢょう)に属する
「越殿楽(えてんらく)」という曲です。聞いた事はありませんか?
中学校や小学校の音楽の教科書に載っていたはずです。で、この「越殿楽」を
演奏する前には、かならず「平調調子(ひょうぢょうのちょうし)」を
演奏しなければなりません。


それでは何故この「調子」を演奏する必要があるのでしょうか?
それは二つの理由があるとされています。
一つはチューニング。その日の演奏の音高を定めなければなりません。
雅楽楽器は構造が単純です。当たり前です、千年前の楽器なのですから。
例えば気温が高ければ音が鳴りやすい訳で、そうなると音高も高めになる。
気温が低ければ音が鳴りにくく、そうすれば音高は低くなる。
唯一、鳳笙(しょう)はピアノと同様に調律が必要となる楽器ですが
篳篥(ひちりき)・龍笛(りゅうてき)はその日の感覚に頼ります。
二つ目は、この「調子」にはその場の雰囲気を整えるという役目があります。
この「調子」の演奏が上手くいって、場の雰囲気が良くなって、
さあ「越殿楽」だ!…この「越殿楽」があまり上手くない演奏だと、
結局「調子」だけしか良くなかったね、という事になります。
ここから「お調子者」という言葉が生まれ、そこから「調子が良い」という
言葉が独り歩きします。「調子が良い」というのは元来マイナスの言葉なのですね。


ちなみに、「調子」の演奏にはかなり時間が掛ります。
前奏曲がその後に演奏する曲(当曲とうきょく、と呼びます)より
下手すれば長い、という状況もあり得ます。
その為、この「調子」を簡略した「音取(ねとり)」という曲を演奏するのが
一般的です。これだと約2分程度の曲です。
「調子」は全員で演奏するのに対し、この「音取」は各楽器の主奏者のみが
演奏する形で時間を短縮するのです。
この主奏者の事を「音頭(おんど)」と呼びます。~音頭、の語源です。


博雅会では「音取」ではなく「調子」を演奏するように心掛けています。
演奏時間は長いですが、その方が非日常に誘うには好都合だと考えるからです。
日常と非日常。これはまた後日触れます。

 

 

 

 


 

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