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古典音楽を無償公開するデジタルアーカイブを充実させたい!

中西 泰裕 [特定非営利活動法人 KFアーカイブ]

中西 泰裕 [特定非営利活動法人 KFアーカイブ]

古典音楽を無償公開するデジタルアーカイブを充実させたい!
支援総額
329,000

目標 1,300,000円

支援者
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2016年03月18日 17:55

音楽の起源から受難曲、多声音楽書法から弦楽四重奏曲

KFアーカイブは、先人がどのように真っ新な状態から、あらゆる文化や社会を構築してきたかを稠密に追跡します。アンブロジオ典礼のミサによる福音書に節を付けた朗唱Tonus evangeliiからビクトリアやバッハの受難曲までです。

 

4世紀にエフレムがアラム語によるシリア聖歌で交唱型式antifonaを創始、ミラノのアンブロジウスが導入しました。アンブロジオ聖歌の特徴は華麗なメリスマを延ばして高音に達して急降下する音型、聖歌隊が唱和する交唱型式です。

 

 

Ephraem Syrus[ギリシア キオス島 ネア・モニ修道院](11世紀)

Ambrosius Mediolanensis[ミラノ サンタンブロージョ聖堂](5世紀)

 

 

受難曲は福音書の朗唱から発展しました

 

9世紀に正典福音書の十字架に処されたキリスト受難の記事に音程をつけて朗唱tropusに役柄と音高や唱法が示され宗教劇ludusとなり、12世紀に物語historiaから受難曲passioとなりました。「コルビ写本」の朗唱に福音史家にc(速くceleriter)、イエスにt(保つtenere・延すtrahere)、イエス以外の人物や群衆にs(高くsursum)とされます。1254年の朗唱受難曲(Correctorium Humberti)では、福音史家は助祭、イエスは司祭、他は副助祭が担当しました。

 

「コルビ修道院写本」朗唱受難曲(12世紀)

[Paris, Bibliothèque nationale, lat. 11958, 75r]

 

1348 年の「ブレスラウ写本」で群衆が合唱、1444 年の「ロンドン写本」で導入・群集・人物が三声のディスカント[ファブルドン]で多声化され、1450年頃の「フュッセン論文」で福音史家は単旋律、イエスの弟子やユダヤの群衆と大勢の人物の群集を複数の旋律で合唱して場面が劇的に活写され、応唱受難曲responsoriale Passionが確立されました。

 

「ロンドン写本」三声ディスカント様式による受難曲(1444年)

[London, British Museum, Egerton 3307, 15r]

 

1480年頃にフランドルのマルティーニ[モデナ写本]はフォーブルドンで多声化、1490年頃にイギリスのデイヴィー[イートン合唱曲集]は、セーラム式受難旋律定型を多声化しました。1504年にサヴォワのロンガヴァルは全福音書による総合受難曲summa passionisを作曲、福音史家も多声化して通作受難曲durchkomponierte Passionを確立、1538年にヴィッテンベルクでオブレヒト作として出版されました。

 

Johannes Martini, Ut quid perdition hec?(1480年頃)

[Modena, Biblioteca Estense α.M.1.12, 91v]

 

1527年にフィレンツェのコルテッチャが導入と群衆と終結を多声化して、1540年頃にマントヴァのコレボーは人物も多声化しました。1540年にベルガモのアルベルティはイエスの言葉も多声化して、マドリガル形式を導入しました。フランドルのセルミジやローレらは通作受難曲、スペインのゲレーロやビクトリアらが感情の高揚を表現した応唱受難曲を作曲しました。ミュンヘンでラッソはモテット様式により、イギリスのバードは群衆のみ作曲しました。

 

1551年にドレスデンのヴァルターが宗教改革に協力して、ドイツ語に調和させ朗唱形式の応唱受難曲を作曲しました。アンスバッハのメイランドは受難旋律定型を群衆に使用せず、リディア旋法から調性音楽に移行して、ニュルンベルクのヘイデンのリート受難曲を継承して讃美歌や二重唱も導入しました。ドレスデンのスカンデッロが福音史家を除き多声化しました。ライプツィヒのガリクルスは総合受難曲、ミュールハウゼンのブルクは通作受難曲を作曲しました。

 

Johann Walter, Passio secundum Matthaeum(1551年)

[Nürnberg, Germanische Nationalmuseum, Hs 83795, 91v]

 

ドレスデンのシュッツは簡潔な書法で味わい深さを表現しました。ハンブルクのゼレは二重合唱・器楽伴奏・通奏低音による器楽シンフォニア・声楽コンチェルト・モテット・コラールを追加したモノディ様式の協奏受難曲を確立しました。イタリアの最新様式であるレチタティーヴォやコンチェルタート様式で構成されます。

 

タイレは四旬節に器楽アリアをコラールに代替しました。北ドイツでマドリガーレ風の自由詩に管弦楽・アリア・合唱を導入してオラトリオ受難曲oratorische Passionが確立、ポステルの受難詩にリッターまたはベーム、ブロッケスの受難詩にテレマンやヘンデルらが作曲、ライプツィヒのクーナウはマルコ受難曲を作曲しました。

 

バッハは先人の受難曲を自由な歌詞より聖書の詩句を優先して改作、1714/26/47年にブルーンスまたはカイザーのマルコ受難曲、1730/35/45年にルカ受難曲(BWV 246)を上演しました。1724/25/32/49年にヨハネ受難曲(BWV 245)、1727/29/36/42年にマタイ受難曲(BWV 244)など自作を上演しました。

 

受難曲の歴史やバッハの研鑽を総括する大作です。トーマス・カントルのギュンター・ラミンフリッツ・ヴェルナーによるヨハネ受難曲、クルト・トーマスアントン・ファン・デル・ホルストによるマタイ受難曲を聴くことができます。

 

マタイ受難曲(BWV 244)第35曲「おお、人よ、汝の大いなる罪を嘆け」

[Berlin, Preuzische Staatsbibliothek, Mus. Ms. Bach P 25]

 

 

音楽性は低音部で規定され表現されます。

 

緊密な低音の上で旋律が優美に歌われると基礎から安定して高雅に聴こえます。ルネサンス以降の多声音楽は低音から構築されます。バッハのヴァイオリン・チェロ・フルート・リュートによる無伴奏楽曲(BWV 995-1013)は、低音部が奏でられなくても、疑似的に旋律が示唆して、緊密な音楽になる手法によります。

 

ヴェネツィアの聖マルコ大聖堂の音響からヴィラールトが発達させた複合唱様式をスペインのビクトリアが多用しました。ガブリエリに師事したシュッツの降誕節オラトリオ(SWV 435)は、片方の合唱を器楽に置換、通奏低音が他方の合唱に付加されます。バッハのモテット(BWV 228)は、二重合唱を留め、古風に聴こえます。

 

 

Historia der Geburt Jesu Christi, SWV 435(1664年)[新全集1]

Fürchte dich nicht, ich bin bei dir, BWV 228(1726年)[旧全集39]

 

ミサ曲 ロ短調(BWV 232)第20曲「唯一の洗礼を認むConfiteor unum baptisma」にはモテットが器楽と調和して配置されます。バッハが最後に完成した大作ですが、1724年にザンクトゥスを作曲、1733年にキリエとグロリア、1748年にクレドを補完して完成したことから、四半世紀も一つの作品にかけていることからとても重視していたことが分かります。ミサ曲は音楽家の試金石とされており、後世に残していく執念が感じられます。

 

バッハは西洋音楽の書法を学び盡くして、自己の個性を為しながら、後世に規範を遺しました。あらゆる時代や地域の作品を研究しました。イギリスの堅実な和声、フランスの典雅な風情、イタリアの明朗な旋律、北ドイツの峻厳な抒情、南ドイツの温和な楽想という異質な特徴を調和して、刻苦の末に老熟した作風を大成しました。バッハは生前から古風と見なされながら、門人が確実に伝承を重ねました。バッハの作品には、大らかな温かさや穏やかな豊かさが感じられます。情趣の深さ、枯淡な趣き、質朴な構成に勤勉さが窺われます。

 

ミサ曲 ロ短調(BWV 232)第20曲「唯一の洗礼を認む」

[Berlin, Preuzische Staatsbibliothek, Mus. Ms. Bach P 180]

 

多声書法を基礎としてこそ、あらゆる音楽書法を統合できます。多声書法は旋律を掛け合わせて、少ない音符や旋律で多くの和声や内声を生み出せるからです。ブルゴーニュ=フランドルの職人たちが声楽作品で蓄積した対位法は、音楽書法に内在する要素をシンプルな構成で実現できました。バッハの門人アグリコラは『一般ドイツ文庫』第22巻(1774年)で「故ヨハン・ゼバスティアン・バッハ楽長の通奏低音を教える際、門人に規則をよく説明してから、通奏低音の演奏の際に与えられる幾つかの音を用いて純正な四声部の楽曲を書かせた」と証言します。

 

四声は、最も少ない要素で多くの表現を成せます。三つの声部が和音を生み、通奏低音が下から支え、リズムを与え続けるからです。音楽の構造を規定する対位法は器楽に応用され、バッハのフーガを研究したハイドンモーツァルトまで保たれました。対位法を取り入れた軌跡を考察すると作品への理解が深まります。

 

 

Wolfgang Amadeus Mozart & Franz Joseph Haydn

 

モーツァルトは1764年にロンドンでバッハの末子ヨハン・クリスティアンに面会、1770年にボローニャのマルティーニ神父の下で厳格対位法を研究しました。1781年にウィーンに移住、翌年からフーガ断片を作曲、ベルリンでバッハ関係者と親交してウィーンへ伝播したスヴィーテン男爵の蔵書を利用しました。1776年にゲッティンゲンでフォルケルと親交したリヒノフスキー侯爵は、1782年にウィーンに移住後、モーツァルトやベートーヴェンを支援しました。1789年に彼とベルリンへ旅して、ライプツィヒに寄り、モーツァルトは聖トーマス教会で二重合唱モテット(BWV 225)に衝撃を受け、直ぐにパート譜を広げて研究したとニッセンの『モーツァルトの伝記』が伝えます。

 

モーツァルトの弦楽四重奏曲第18番(KV 464)

[London, British Museum, Add MS 37763, 45r](1785年)

 

 

多声音楽の神髄とは、少ない音符で多くの和声を生み出せることです

 

対位法の真髄は、声部の組み合わせ方であらゆる要素を単純な構造に帰着できることです。ポリフォニーを単旋律に制限すれば、聖歌や民謡などのモノフォニー、また、最低音部を通奏低音に還元すれば、バロック音楽の基礎であるモノディ様式にもなります。グレゴリオ聖歌はモノフォニーとされますが、ロマネスク様式の石造りの聖堂で歌われて、人の声が堅い壁に跳ね返り、微妙な時間差や複雑な重なりから偶発的にポリフォニーが生じ、音楽に深みや厚みが増し、ヘテロフォニーにもなります。

 

バッハのブランデンブルク協奏曲第5番(BWV 1050)では、ヴィヴァルディの協奏曲(RV 230)の影響から旋律線とリズムが交替しました。カデンツァでは、イタリアの巨匠達の協奏曲を編曲した経験から、独奏協奏曲が器楽協奏曲に編曲されるように展開されます。ヴィヴァルディが旋律線やリズム、バッハは低音部や対位法から発想して作曲しました。

 

最高音部を旋律、他の声部を伴奏やリズムと解釈すると、ホモフォニー(伴奏書法)に還元されます。ヴェネツィアのヴィヴァルディがオーボエ協奏曲(RV 449)やナポリのペルゴレージがフルート協奏曲で使用して、マンハイム楽派のスターミッツらやウィーン古典派のハイドンらに伝承されました。モーツァルトのファゴットとチェロのためのソナタ(KV 292)は通奏低音書法によります。若年の作品は前時代の構成です。音楽書法が継承されながら変遷していく過程を観察して、実際に通奏低音が伴奏低音に移行することが分かります。

 

Joh. Seb. Bach, Brandenburgisches-Konzert Nr. 5, BWV 1050

[Berlin, Staatsbibliothek zu Berlin, Am.B 78]

 

多声音楽を縮約して音楽様式を導出する過程は、アインシュタインの一般相対性理論を離散化すると、特殊相対性理論になり、古典化すれば、ニュートン力学に還元されることに似ております。事物の本質は個々の事象を内包します。

 

実際に音楽史でも中世に聖歌の装飾から定旋律に対旋律を配位する方法である対位法が発達して、フォーブルドンで即興されテノール声部が基礎となり、ルネサンス期には全ての声部が対等になり厳格対位法に発展して、バロック期に接近して、固執低音上の即興曲や変奏曲が発達して、最低音部が重要になり通奏低音やモノディ形式に発展して、古典派音楽に移行すると最高音部の旋律線に伴奏書法が発達して、ロマン派音楽に移行すると機能和声が発達しました。

 

バッハは降誕節オラトリオ(BWV 248)第43曲「栄光あれと、神よ、汝に歌わんEhre sei dir, Gott, gesungen」で音楽を推進させる活発な通奏低音のリズム上に声部が重ならないよう旋律を繰り出す、ホモフォニーで構成しました。一本ずつ旋律が重なり合うよう繰り出し、モノフォニーからポリフォニーに移りゆき、音楽に盛り上がりが生まれます。ポリフォニーの旋律が伴奏となる状態がモノフォニーです。リズムだけの状態から、旋律を加えてモノフォニーになり、旋律を重ねてポリフォニーになり、濃密な表現となります。最高潮に到達するとリズムだけに戻り、森から抜けて辺りが開けるような効果となり、聴く人の耳を惹きつけて、少ない旋律動機やリズム型から、多くの音楽効果を引き出しました。

 

クリスマスオラトリオ(BWV 248)第43曲「栄光あれと、神よ、汝に歌わん」

[Berlin, Preuzische Staatsbibliothek, Mus. Ms. Bach P 32]

 

 

多声音楽の基本構造は意味を変えながら守られました

 

ベルリン楽派の感情過多様式やマンハイム楽派を経過して、ウィーン古典派はポリフォニー(対位書法)を再検討してホモフォニー(伴奏書法)に再導入して豊かな感情を表現しました。テレマンとバッハに師事したミューテルは古典派の様式にいち早く移行しましたが、北ドイツやバルト海沿岸で活動して、現存する作品が少なく注目されませんでした。

 

モーツァルト(またはハイドン)の弦楽三重奏曲(KV 404a)は、バッハの平均律クラヴィーア曲集(BWV 853・883・882)、トリオ・ソナタ(BWV 527・526)、フーガの技法(BWV 1080,8)やフリーデマンのフーガ第8番(BR A88)の編曲です。弦楽四重奏曲(KV 405)は真作で第2巻(BWV 871・876・878・877・874・891)の編曲です。研究成果が弦楽三重奏のディヴェルティメント(KV 563)や弦楽四重奏曲第22番(KV 589)に情感の深みとして現れます。

 

モーツァルトの弦楽四重奏曲第22番(KV 589)

[London, British Museum, Add MS 37765, 29r](1790年)

 

三声では旋律が線的に対話して、和声の進行とリズム感は、跳躍進行音型やシンコペーションなどで生み出されます。四声が安定する理由は、三和音とリズムによる構造に加え、聴きなれた声の音域、ソプラノ・アルト・テノール・バスが、第一ヴァイオリン・第二ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロに対応するからです。横に長い旋律を合せるポリフォニーから、縦の和音やリズムを与えるホモフォニーになりましたが、弦楽四重奏曲として古典派音楽のディッタースドルフボッケリーニベートーヴェンシューベルトら、ロマン派音楽のメンデルスゾーンシューマン・ボロディン・ブラームス・チャイコフスキー・ドヴォルザークら、現代音楽のドビュッシー・シベリウス・シェーンベルク・レスピーギ・バルトーク・ヒンデミットに至るまで、音楽の構造として傑作を下から支え永脉を保ちました。

 

ニューオリンズのディキシーランド型式、カンザスでスウィング型式、シカゴでビバップ型式を経てきたジャズがニューヨークでモダンジャズに発展したことは、パノニカ男爵夫人が、チャーリー・パーカー、コルトレーン、セロニアス・モンク、バド・パウエルらのパトロネスとなり、西洋社会の芸術音楽を受容して、ジャズミュージシャンたちもブルースなどを芸術音楽と認識したからです。マイルス・デイヴィスのモードジャズは、サティやバルトークらが調性感を薄めるため旋法音楽や民族音楽により打開した軌跡を後追いします。フリージャズの源流となるセシル・テイラーの即興演奏は、新ウィーン学派のシェーンベルクが十二音列で調性音楽と決別したことに対応して、オーネット・コールマンは無調音楽を管弦音楽に拡大したウェーベルンに対応します。機能和声やビバップが確立すると打破する創作に発展しました。

 

 

Arnold Schönberg & Anton Webern

 

芸術音楽と大衆音楽や商業音楽を区別する一つの鍵は、古代から現代まで脈絡と継承されてきた、音楽の書法や伝統を継承する系譜と考えられます。しかも、芸術音楽の概念に対する欧州各国の理解も大きく異なります。

 

▶英語legitimate musicは、ラテン語の規範的legitimusに由来して、法lexが語源です。創作の規範とされました。着想より慣習に従い、過激よりも中庸を敬う、イギリスらしいです。

▶ドイツ語Kunstmusikは、技術Kunstに由来して、可能könnenが語源です。フランドルの職人たちが蓄えました。組合[ギルド]を構成して、職人[マイスター]を養成して、技術を継承するドイツらしいです。

▶フランス語musique savanteは、知るsavoirに由来して、ラテン語のsapereが語源です。識者が積み上げました。知るconnaîtreから、芸術の目利きconnoisseurを生み、人間の理性や感性を大切にするフランスらしいです。

▶イタリア語musica coltaは、ラテン語の文化cultusに由来して、耕すcolareが語源です。先人が切り拓きました。古代ローマから外来のギリシア文化を重視して、フランドルの影響からルネサンスを発信した、イタリアらしいです。

 

ホラティウスは『抒情詩集』4. 4. 33で「学問は生来の能力を発展させ、正統な教養は精神を強固にする」としました。原文「doctrina sed vim promovet insitam rectique cultus pectora roborant」で教養となる部分は文化cultusです。フランドルのジョスカンが、対位法の均整美の極致に到達、継承されるべき音楽musica reservataとなりました。バッハのDie Kunst der Fugeには、対位法の芸術を大成する意志が込められ、Dieに決定版という主張が含まれます。

 

Joh. Seb. Bach, Die Kunst der Fuge: Contrapunctus XIV, BWV 1080

[Berlin, Preuzische Staatsbibliothek, Mus. Ms. Bach P 200]

 

スカルラッティは『チェンバロ練習曲集』(1738年)の序文で「芸術の戯れlo scherzo ingegnoso dell'Arte」と宣言して、今までの語法に自らの感情を与えて、新たな意味づけをしました。モーツァルトは弦楽四重奏曲をウィットやユーモアの表現に長けたハイドンに献呈しました。人間の特徴が直に出てくるチャーミングな音楽には、感情表現の多様性がみられます。啓蒙主義では人間を中心に文化を組み立てようとしたからです。

 

「芸術音楽」に対応する語彙の語源を分析することから、文化への姿勢が国々により少しずつ異なりますが、それぞれ文化活動の一面を捉えていると分かります。

 

多声書法は音楽の歴史や構造の根幹です。旋律の構成や和声の構築で感情を音楽で表現するかを探求して、ブルゴーニュのデュファイ、フランスのオケゲム、フランドルのジョスカン、オーストリアのイザーク、イタリアのパレストリーナ、ドイツのラッソ、スペインのビクトリア、イギリスのバードらは、人間性や地域性ある音楽を創造できました。多声音楽は和声の多彩さ、構成の自由さにより、数えられないほど多くのパラメータを生み出せる構造を内に備えていたからです。

 

15世紀のデュファイが、イタリアの明朗な歌唱、フランスの多声的な書法、イギリスの調和した和音を統一する様式でルネサンス音楽の基礎を構築したこと、18世紀のバッハが、イタリアの活きた旋律線、フランスの柔らかな空気感、ドイツの烈しい存在感など、相容れない特徴を多声の構造を重視して旋律と和音を兼備した様式で調和したこと、両者は多声書法における旋律同士の相互作用による和声進行により、人間感情の変化を直接表現しえたからです。

 

Domenico Scarlatti, Essercizi per Gravicembalo(1738年)

 

今回は受難曲の歴史、多声音楽書法から弦楽四重奏曲を記しました。

 

次回は鍵盤楽器・リュート・ビウエラなど器楽の歴史を叙述します。

 

KFアーカイブを今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

長文にお付き合い下さり、誠にありがとうございました。

 

平成28年3月18日

特定非営利活動法人 KFアーカイブ会長 中西 泰裕

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リターン

3,000円(税込)

当法人の賛助会員権と閲覧制限解除のアクセス権[半年分]

▶︎特定非営利活動法人 KFアーカイブの賛助会員権と一日当たりのダウンロード制限を解除できるアクセス権[半年分]を差し上げます。KFアーカイブシステムに登録された音源をお好きなだけ再生してお楽しみ頂けます。

支援者
11人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年6月

10,000円(税込)

古典音楽を味わう会にご招待

▶KFアーカイブの使用方法をご説明します。古典音楽を鑑賞する観点をご提案します。先人の演奏を楽譜に突き合わせながら聴き進めて、感動を与える仕組を発見して鑑賞できます。

▶西洋の古典音楽や日本の伝統音楽から、各時代または音楽家ごとに特色あるテーマを選定して、多角的な観点や文化的な要点を通じて、主体的に認識を深めて、音楽を味わい楽しむ集いにご招待します。

▶古典の構造を分析して、先人の発想を把握して、人類の文化発展の軌跡を追跡して、人間の思考様式や発想方式を把握する過程をお伝えして、先人の知恵を活用する方法をお話しします。上記の賛助会員権とアクセス権の特典も附属します。

支援者
4人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年9月

50,000円(税込)

古典音楽を味わう会のリクエスト、または、法人用閲覧制限解除のアクセス権[半年分]

▶個人の方からご支援を賜りましたら、「古典音楽を味わう会」のリクエストをお受けします。上記の特典も附属します。

▶法人の方からご支援を賜りましたら、法人全体で使用可能な閲覧制限解除のアクセス権[半年分]を差し上げます。

支援者
1人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年9月

100,000円(税込)

講演会のリクエスト

▶企業や団体の方からご支援を賜りましたら、その事業所や営業所に伺いまして、「古典音楽を味わう会」のリクエストをお受けしてお話しします。上記の特典も附属します。

▶古典文化や芸術作品の解説に留まらず、現実的なテーマに合わせ、幅広い領域の事例を交えて、人類の文化に内包される人間性や創造性につきましてお話しします。

支援者
1人
在庫数
制限なし
発送予定
2016年9月

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