あっという間に、最初の目標金額は達成された。すごい。賛同文も、たくさんの人が書いている。さすがキグチくんだ。多くの人に愛されていた。でも、彼が愛した人を誰も知らない、そういうやつ。僕は、賛同というかなんというか、次の目標まであと10日、最後の一押しみたいな気持ちでこれを書く、役立つかどうかわからないけど。

 

彼の作業を初めて見たのは、ユーストの中継で、瀬戸内の確か豊島だったかな、その町の公民館に「搬入」する物体を、彼は滞在しながら作っていた。その日々を毎日のように中継しながら、しかし視聴者は、毎回5人とかだった気もするが、たまたまそれを目にし、それから見続けた。

 

「搬入」当日、地元の人たちが大勢集まって、「搬入」されるさまを見た。それがとんでもなく機能する「装置」なのだと、それを編み出した危口という人に、注目するようになった。いや、それ以前のダラリとした中継も好きだった。ツイッターのアイコンは光る出っ歯のような顔だった。たまにアイコンは変わったが、またすぐ戻るので、あの顔がいちばん落ち着くのだろう、今でもそれがキグチくんだ。

 

彼の書く絵が好きだった。一度、女性の頭上、空中にテトリスのような幾何学が浮いている絵を、買いたい、と言ったことがある。美術家のつもりは無い、と断られた記憶があるが、記憶なので定かではない。絵の女性は妹さんで、ケンカしたから泣いてんだよ、しょっちゅう泣く、と言った気もするが、その記憶も定かではない。

 

親しかったとは思えない。いつもお互いの距離をとっていた。しょっちゅう批判もされた。でもやれば必ず観に来てくれた。お互いに作品で返していた。「ブルーシート」を真っ先に批判したのは彼だったので、授賞式に彼を呼び、僕の賞金を使って、1本作品をつくれる機会をつくり、彼を推薦した。高校生を相手に、「悪魔のしるし」と名乗るんだろうか?と思ったが、やっぱり悪魔と名乗っていた。

 

彼が、ある時、「墓」の話をした。話したのか、ツイッターか何かに書いてたのか、「墓」にとても興味があると、そのことに僕は強く関心を持ったが、彼が、具体的に何を述べていたか、忘れてしまった。

 

「墓」についても、「妹の頭上のテトリス」の絵も、きっとアーカイブされるだろう。1000本文庫は、とてもいい案だ。見ごたえのある本になるだろう。全部読む人などいないだろうが、それでいい。バラバラな人が、バラバラにページをめくって、無数の再生がされるだろう。

 

アーカイブは、「墓」だろうか? 彼なら何と言うだろう。「墓」があるから墓参りができる。参るたびに、それぞれに何かが再生される。そのために人は、骨を残しておく。父親の骨がアーカイブされてたから、骨と一緒に、「教室」を上演できた。それを観たキグチくんは、例によって、「飴屋さんはエゲツない」と、とても知的で上品だった、「わが父、ジャコメッティ」を返してきた。

 

骨を拾った。右手の指の骨だった。やっぱり飴屋さんはエゲツ無い、と思ったろうが、僕にできるのはそういうことだ。右手が動かなくなった時、彼は何故あれほど嫌がったのか。指が描きたがってたことを思いながら。ここに賛同文だけを寄せる。アーカイブには関われないが、実現して欲しい。実現するだろう。意志のある人がたくさんいる。

 

来年、彼の発案した装置が、すぐにも美術館で再生される。作品の形で、また返答しあうつもりでいる。よろしくお願いします。キグチくんが残したもの、と、残し損ねたもの。

 

飴屋法水

 

 

「キグチくんの居ない公園」 撮影:飴屋法水

 

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