2001年に世界で最初に同性愛者間の婚姻を合法化したオランダ。

同性愛者のパートナー同士が養子を取ることも認められています。

実際、オランダに住んでいる人であれば、家族や親族、または知人の中に、必ず、LGBT同士の婚姻があったり、そこで養子を育てていたりというケースを知っているものです。それほどに、LGBTは、ごく身近に、当たり前の存在として受け入れられています。

 

そのオランダでは、2012年から「性の多様性」教育が性教育の一部として全ての初等・中等学校で義務化されています。

公営放送が制作しほとんどの小学校が使っている授業用ビデオのテーマソングには「異性愛も同性愛もどちらも平等」という言葉が高らかに歌われます。

 

オランダの性教育は0歳児から。

性は、人の個性の大切な一部であり、性について学ぶことは、命や愛の大切さを学ぶことに他ならないのです。

 

性を何か「汚いもの」「恥ずかしいもの」としてタブーとして捉える考え方に真っ向から反対し、性意識や性のあり方は、一人ひとり異なるもの。

子どもたちが、一人ひとり、自分自身の性のあり方、そして、相手の性意識をあるがままに受け入れ、尊重できる人間になれることを目指したのが性教育であり性の多様性教育であると言えます。

 

同性愛者の婚姻の合法化や「性の多様性」教育実現の背景には、LGBTの人々自身による戦前からの長い権利擁護運動がありました。

1970年代、若い世代の人々による人権保護運動の広がりとともにLGBTへの認知度や権利擁護意識も広がります。

 

しかし、2000年ごろから、偏見が再燃し始めています。

それは、人権保護意識の未熟な国から移住してきた人々の存在が一つの要因になっています。

そうした国からきた人々の偏見を正し、そうした人々の間で自分らしく生きる権利を認められないでいるLGBTの存在に目を向け、オランダという国が、どんな人も排除することのないインクルーシブな国であることを開示していくための一つの現れが「性の多様性」教育の義務化であったとも言えます。

 

表向きには「先進国」であるはずの日本。

でも、本当の「先進性」とは、国が、制度としてありとあらゆる手段を用いて人権保護の立場をマニフェストしていくことにあるはずです。

その意味で、日本は、政治家やマスメディアの意識が異常なまでに低く、その結果、性へのタブー意識が人々の間にも根強く残っており、その後ろで、様々な性暴力野生差別が蔓延しています。

 

でも、こうした人々の意識を変えていくのは、やはり草の根の人々、当事者の声と行動に他ならないのです。

どんな意味においても、差別が存在する社会は、巡り巡ってどんな人にとっても人と人との間の絆を引き裂く住みにくい社会です。

日本におけるLGBTの人々の運動が、必ずや日本に住む多くの人々の幸せに繋がることを信じ、心から応援しています。

 

リヒテルズ直子(オランダ在住、教育・社会事情研究家)

1955年下関に生まれ福岡に育つ。九州大学大学院博士課程修了。専攻は比較教育学・社会学。1981~96年マレーシア、ケニア、コスタリカ、ボリビアに居住後、96年よりオランダに在住。翻訳、通訳、執筆業の傍ら、オランダの教育および社会事情に関する調査、著述、科研費共同研究などを行う。また日本各地で講演活動、オランダ人研究者や専門家を伴ってのシンポジウム等のコーディネートを行うほか、オランダにおいては各種団体の視察企画に協力、日本人向け教育研修も企画・実施している。グローバル・シチズンシップ・アドバイス&リサーチ社代表、日本イエナプラン教育協会特別顧問(設立時代表) 
公教育をイチから考えよう』より

 

2018年6月20日付で日本評論社より「0歳から始まるオランダの性教育」が刊行されます。

オランダの性教育を、人間関係教育さらには市民性教育として捉え、公教育におけるその意味を問い直すための材料として紹介しています。

http://naokonet.com/