松竹京都映画スクラップの補修見学@資料保存器材工房 ご報告
お早うございます。松竹大谷図書館です。
この度、当館が所蔵する映画スクラップの保存に関して大きな進展がありましたので、【第6弾】の支援者の皆様に新着情報でご報告致します!
【第6弾】では、ご支援により、特に傷みが激しい戦前から昭和27(1952)年までの映画スクラップ233冊について、1冊ずつオーダーメイドで制作したアーカイバル容器に収納する事が出来ましたが、今後利用される場合、さらに破損が進む恐れがありました。そこで、この233冊のうち、今回、松竹京都製作作品のスクラップについて、資料の保護と活用のため、文化庁が進めている「アーカイブ中核拠点形成モデル事業(撮影所における映画関連の非フィルム資料)」の令和元年度の事業の一環としてデジタル化の提案書を提出したところ、この度31冊のデジタル化が採択される事となりました。
※「アーカイブ中核拠点形成モデル事業(撮影所における映画関連の非フィルム資料)」についてはこちらをご覧ください。
今回のスクラップのデジタル化事業では、主に
(1)デジタル撮影前準備(スクラップの解体・簡易補修・袋とじ剥がし・塵芥除去など)
(2)デジタル撮影(デジタルカメラによるスクラップの撮影)
(3)デジタル撮影後処置(スクラップ本体の綴じ直しなど)
の3つの作業を行います。現在は「デジタル撮影前準備」として、撮影による資料の破損を防ぎ、撮影作業の効率化と撮影画像の品質を上げるために、株式会社資料保存器材さんでスクラップの解体・簡易補修などの作業が行われています。
そこで、株式会社資料保存器材さんにお邪魔して、どのように作業が進められているのかを見学させて頂きましたので、今回新着情報でご報告致します!
資料保存器材さんのご紹介記事についてはこちらをご覧ください
アーカイバル容器の制作をお願いする資料保存器材さんについて
作業を拝見する前に、まず現在実行中(2019年10月30日募集終了)の【第8弾】プロジェクトのために試作して頂いた、【歌舞伎ブロマイド】の保存容器を見せて頂きました!写真資料をOP袋(透明なフィルム状の袋)に入れ、立てて収納する事が出来る保存容器です。写真がたわまないように、仕切りも付けて頂きました。
歌舞伎ブロマイド】の保存容器(被せ蓋式保存箱)に、1万枚の写真資料がご支援によりデジタル撮影後に保存容器に収納されます!
さて、ここから映画スクラップの簡易補修のご報告に戻ります。まずは解体作業から。
スクラップは撮影前に留め金具を外して解体する事で、ポスターなどの大きな貼り込み資料も、フラットな状態で撮影が出来るようになり、さらに上からガラス板などで均等に押さえる事により、よりきれいな画像が撮影可能となります。また、スクラップの厚みを考慮しなくてもよいので、いちいち台座などを用意する必要が無くなり、撮影作業も効率化する事が出来ます。
解体前のスクラップです。ポスターなど大型の資料もたたんで貼り込まれている状態です。
スクラップを綴じていた留め金具は長年の間に錆びており、資料の劣化要因となるため、一つずつ外します。
スクラップから外された留め金具です。長年スクラップを綴じるために頑張ってきた金具も、もはや見るからに劣化要因!
表紙は周囲を和紙で補強し、劣化した折り溝部分も補強する事で、撮影作業中の破損を防ぎます。縁の折れや剥がれた部分も糊を付けて形を整えます。

スクラップに貼り付けられていた台本は台紙から外し、台本自体を綴じていたステイプル(金具)も外します。そうする事で、綴じ部分に負荷が掛からなくなり、また台本がフラットに開くようになり、撮影の効率が上がります。
新聞の切り抜きが11層も重ねて貼られていた部分も、一度全ての貼り込みを剥がして、少しずつずらして貼ったり、重なり部分を最小限にしたりするなどの処置を行う事で、重なって隠れていた部分の撮影が可能となります。
見開きの両方の台紙にまたがって貼られている資料は、撮影の際に破損する可能性があるので、片方の台紙に属するように、もう片方の台紙から剥がします。水分を加えて固まった糊を緩めていきますが、局地的に濡らしてしまうと、その部分に輪染みが出来てしまうので、少しずつ水分を加えていきます。
作業を行う際は、台紙の下に濾紙と適度な硬さと厚みのあるアーカイバルボードを挟み、資料と台紙の間に差し込んだヘラを滑らかに動かして剥がします。
作業の際、適度な硬さでヘラの動きを下から支える役割を持つアーカイバルボードは、保存容器などを制作する際に出る、切り落とし部分などを再利用しているそうです。資料の保存に適した材質のため、処置の際も資料に対して無害で、中に空洞がある事から通気性にも優れているため、処置後の資料を挟み乾燥させる事にも使用しているそうです。
最後に、他機関の資料の補修を2パターン見せて頂きました。1つ目は「リーフキャスティング」です。「リーフキャスティング」とは、紙資料の破損や虫害などで欠損してしまった部分に、和紙の繊維を補填して修復する技術です。一見、紙すきの作業のようで、「リーフキャスティング」の処置後は、穴に紙の繊維が補填され、まるで新しく漉かれた紙のように見えます。
また、2つ目は紙の裏側から補修用紙を補って、穴を補填する形の補修方法をご紹介頂きました。デジタル撮影のために必要最小限の補修、という事で依頼を受けたそうで、虫害による破損で資料が開かない部分や、指が引っかかってしまうような大きさの穴を主に補修する事で、費用と作業時間をおさえるのだそうです。このように「目的」と「利用」と「保存」に合わせて補修方針を考えなくてはならないとの事でした。
今回の映画スクラップ事業の目的はデジタル化という事で、処置についてはデジタル撮影に必要な最小限の補修、という事で依頼をしました。デジタル化という目的を考慮して補修を計画し、そのなかで補修作業もやってしまう方が、効率もよく、最終的なコストもおさえられるという事でした。作業を見学させて頂き、目的に沿って臨機応変に、そして細やかに処置を進めて下さっているスタッフの皆様の手さばきに感動致しました。
そして、今回の事業は、第6弾で保存容器を制作して頂いたからこそ、進められた事業です。もし保存容器が無ければ、劣化が進んたスクラップを資料保存器材さんの工房まで安全に搬出する事すら出来なかったでしょう。皆様のご支援から、保存・簡易修復・デジタル化、とさらなる保存と活用の道が開けました事を、スタッフ一同心から感謝申し上げます。
リターン
3,000円
活動報告+サンクスメール+HPにお名前掲載
■サンクスメール
■4月末に報告メール
■HPに名前を掲載
※ご了承いただいた方のみ掲載いたします
- 支援者
- 39人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2018年4月
5,000円

松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー(2種類1組セット)
3,000円のリターンに加え、
■松竹大谷図書館オリジナル文庫本カバー(2種類1組セット)
…蔵出し台本『助六由縁江戸桜』平成28年3月歌舞伎座公演&『東京物語』小津安二郎監督作品の表紙の特製デザイン!
- 支援者
- 65人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2018年4月
10,000円

オリジナル文庫本カバー+台本カバーに名入れ
5,000円のリターンに加え、
■台本カバーに支援者のお名前をお入れします
※作品リストより、ご希望の作品の「台本番号」と「タイトル」を応援コメントにお書き下さい
※作品リストはプロジェクト本文「リターンについて」の台本カバーの説明部分にリンクがあります)
※今すぐ決まらない方は、プロジェクト達成後にもご希望をお伺いいたします
- 支援者
- 89人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2018年4月
30,000円

オリジナル文庫本カバー(4種)+台本カバーに名入れ
10,000円のリターンに加え、
■組上燈籠絵「め組のけんか」の文庫本カバー
■浄瑠璃正本「新うすゆき物語」の文庫本カバー
- 支援者
- 16人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2018年4月
50,000円

図書館見学会+オリジナル文庫本カバー(4種)+台本カバーに名入れ
30,000円のリターンに加え、
■図書館見学会にご招待
【2017年11月30日(木)開催 午前(15人)/午後(15人)】
「午前」「午後」のご希望を応援コメントにお書き下さい
※今すぐ決まらない方は、プロジェクト達成後にもご希望をお伺いいたします
※11月30日に見学会に参加出来ない方には予約制で、松竹大谷図書館の書庫を1時間ご案内するガイドツアーへの招待券をお送りします。有効期限:平成29年12月~平成30年7月の平日(開館日及び整理休館中)
- 支援者
- 13人
- 在庫数
- 16
- 発送完了予定月
- 2018年4月