2016年5月開催『アートシアター新宿文化・蠍座ポスター展』

昨年、弊社のギャラリー（現在は休業中）にて開催した『アートシアター新宿文化・蠍座ポスター展』をご紹介します。ポスターハリスの収蔵ポスターからこの展示で特集したのは、60～70年代、新宿でアングラ文化のムーブメントを作り出した「アートシアター新宿文化」と、「蠍座」というふたつの小さな劇場の興業を彩ったポスターたちです。

 

 

 

 

アートシアター新宿文化

1962年4月に誕生したATG（日本アートシアターギルド）の映画館「アートシアター新宿文化」は、ブニュエル、ゴダール、トリュフォー、大島渚、寺山修司など、非商業的な映画作品を上映し、なんと映画終了後の夜九時半からも前衛劇を上演するという、今では考えられないスタイルで話題を呼びました。

若者たちのメッカとして夜ごと長蛇の列ができ、そこから数々のスターも輩出。寺山修司が「毛皮のマリー」「星の王子さま」を上演し、蜷川幸雄が演出家デビューをはたしたのもこの劇場でした。

 

蠍座

新宿文化のさらに５年後の1967年、映画・演劇の実験劇場として、新宿文化の地下にあらたに誕生した小劇場が「アンダーグラウンド蝎座」です。この名称は三島由紀夫が名付け親です。新宿文化に比べ、さらにアングラな作品の興行が行われました。映画は、足立正生監督の『銀河系』で幕を開け、若松孝二監督の全作品上映が全日大入り満員を記録するなど、国内外問わず既成概念にとらわれないアヴァンギャルドな作品たちが当時の人々を魅了し続けました。

 

80年代を待たずに幕を閉じたこのふたつの劇場は、カウンターカルチャーが世を席巻した60～70年代という時代の象徴でした。

横尾忠則、宇野亞喜良の手がけたポスターはもちろんのこと、イラストレーター／グラフィックデザイナーの小島武によるポスターが数多くみられ、シルクスクリーンによる鮮やかな色彩と力強くシンプルなデザインは印象的です。

 

 

 

 

イベントでは、イラストレーターの宇野亞喜良さん、俳優の山谷初男さん、映画監督の足立正生さん、歌手の渚ようこさん、寺山修司義弟・演出家の森崎偏陸さんらを迎え、新宿文化・蠍座にまつわる貴重なお話を伺いました。

 

この展示は、60～70年代アングラのムーブメントの中にありながらも、そういった文脈ではまとめて鑑賞できる機会の少ないポスターをご紹介し、なおかつポスターを通して、アートシアター新宿文化・蠍座という特異な劇場の、当時の熱気を少しでも感じ取っていただけたらと思い、開催いたしました。