世界で一冊の手描き絵本『まる』を、沢山の人に読んでもらいたい

世界で一冊の手描き絵本『まる』を、沢山の人に読んでもらいたい

支援総額

2,025,000

目標金額 1,100,000円

支援者
235人
募集終了日
2020年11月5日

    https://readyfor.jp/projects/project-maru?sns_share_token=
    専用URLを使うと、あなたのシェアによってこのプロジェクトに何人訪れているかを確認できます
  • Facebook
  • X
  • LINE
  • note
2020年10月04日 22:13

まると私(5)「家族のこと」

描きかけの娘の肖像画(千葉リハにて)
 

話はいったん受傷した2017年に戻ります。

私には、単身赴任中の夫と、看護学部3年生の娘、そして美大を目指して一浪中の息子がいました。

娘は、事故現場を目撃したので、かなりのショックを受けていたはずです。それでも冷静に脈をとり、気道を確保するなど応急処置をしてくれました。その時のことを娘に何度か尋ねたことがあるのですが、その話になるといつも彼女の口が重くなります。息子はママチャリしか乗らなくなりました。

夫は急きょ単身赴任先から駆けつけてくれました。しかし、事故から2、3日の記憶は大変に曖昧です。最初ICUにいて、その後個室に1日だけ移されて、それから4人部屋になったと思います。記憶がはっきりしだすのは4人部屋になってからです。

4人部屋で状態が少し落ち着くと、友人や知人が見舞いに来るようになりました。家族は誰かしらが毎日来てくれて世話を焼いてくれました。ごはんを食べさせたり、身体をさすったり。

私の両親は、我が子の大怪我に身を切られる想いで、ずっと付いていたいと思ったにちがいありません。でも、夫やうちの家族に遠慮しながら見守ってくれました。見舞いには毎日のように来てくれていました。

最初は誰に対しても、なんでもない顔をして極力笑ってこたえていましたが、とうとう熱を出しました。

 

息子の受験

 

広島に赴任中の夫は、広島と千葉の家と千葉大病院とを何往復もしてくれて、私のそばにできる限り居てくれました。言いたいことも泣きたいときもあったと思いますが、感情を表に出すこともなく、普段通りに接してくれました。それは娘も息子も同じでした。それがどんなにありがたかったかわかりません。おかげで、私も普通でいられたのです。

千葉大病院から千葉リハビリテーションセンター(千葉リハ)に移ってからも、毎日毎日誰かしらが来てくれました。病院も人手が足りず、食事の介助や洋服の脱ぎ着など家族の手を必要としていました。

気がかりだったのは、子ども2人のこと、特に浪人中の息子のことです。センター試験の前に私が怪我をして、繊細な神経の持ち主である彼が正常な気持ちで試験に臨めるか、とても心配でした。

二浪が決まり、見舞いにやって来た息子の姿を目にしたときに、私は初めて泣きました。怪我をして、歩けないかもしれないとの不安に押しつぶされそうな夜でさえ涙は出なかったのに。一番大事な時期に支えてやれなかったこと、悪い母であったと後悔しました。

私は息子に車の免許を取ってくれと頼みました。車でしか交通手段のないこの施設に通うのに、娘だけの運転だと負担が大きかったからです。それといったん受験から離れて、気分転換してほしいとの思いもありました。息子は「(免許を)取れる気がしない」と力なく言いましたが、免許を取るために参加した合宿で周りによくしてもらい、すこし元気になって二浪目に突入して行きました。

 

夫と受容

 

しばらくして、夫と娘は自転車に乗り始めました。

娘は私の自転車の一部分を乗せ替えて走っていました。自転車が悪いわけではないという私の想いを代弁してくれていると思いました。その頃は私のために乗っていたのかもしれません。

しかしながら私の両親は、そうした想いをおそらく理解できなかったと思います。自転車のせいで、こんなことになったとしか思えなかったのではないでしょうか。

夫と、今後のことについて話し合わないといけません。ところが、夫はなかなか話をする気持ちになれないようでした。リハビリを続ければ、もっと動け、歩けるようにもなると信じていたのです(きっと今も)。一方、両親は私の障害の程度が重いとみていました。リハビリはもちろんですが、現実の生活をこれからどうしていくのかを案じていました。夫はそんな両親と会いたがらなくなりました。

両親と夫の間に小さな溝ができました。私はただ見ていることしかできません。

また、私は私で、子ども扱いする両親に素直になれず、ダメだとわかっていながら冷たくしては自己嫌悪に陥る日々でした。それは夫に対しても同じで、感謝の気持ちがあっても素直になれません。私は密かに、今週は両親に優しく接するキャンペーンウイーク、来週は夫ににっこり「そうだね。ありがとう」と言うキャンペーンウイークと決めて実行しました。あんまりうまくやれなかったけれど。

家族は、私がどこそこに行きたいと言えば、黙って協力してくれました。まだ手も上がらず、ご飯の練習すらしてないときにも外出許可をもらって出かけました。

私の中で徐々に自分の障害を受け入れつつあるように感じていたある日、夫が

「もう大丈夫、お義父さんお義母さんと普通に話せる」と宣言しました。ちょっとびっくりしながらも、ほっとしたのを覚えています。

 

自画像(国リハにて)

 

娘の心のうち

 

娘は、自分の母親が目の前で大きな怪我をしたことで、心に大きな傷を負っているのではないか。そう思い探ろうとしたものの、娘の心のうちは見えませんでした。今できることを一生懸命やってくれようとする姿が痛々しかった。

4年になり実習で忙しくなると、娘は家に帰れない日もありました。東京の知り合いに間借りさせてもらっていました。夫は単身赴任中で普段家にいませんし、息子も私の両親の家に泊まりながら予備校に通うことが多かったようです。一見すると、家族みんなバラバラの生活でした。

娘には、就職先は家の近くの病院にしてほしいと頼みました。娘は黙って近隣の病院を受けました。6月早々に内定をもらいました。あとは2月に行われる国家試験を通りさえすれば、晴れて看護師になれます。

10月、私は千葉リハから所沢の国立障害者リハビリテーションセンターへ移りました。所沢は遠い。家族もなかなか来られなくなりました。しかし家族とも離れリハビリに専念する毎日は、むしろ集中できてよかった。家族であっても互いに気を遣うことはあります。考えてみれば、娘には国家試験という目標があり、息子は受験勉強をとにかく頑張らなくてはなりません。そして、私はリハビリです。私たちは同じ時期に、それぞれ乗り越えなければいけない壁と闘う状況にいたのです。

2018年春になり、息子は第一志望の美大に合格、合格証書を持って所沢まで来てくれました。娘も無事国家試験に合格しました。娘の卒業式には母に代わりに出席してもらいました。娘から卒業式に出てほしいと話があったときに心は動きました。でも、頼りにしていた夫がこちらに戻れず諦めたのです。

2人の子の成長を前に、私は夫とやっていた月島の絵画教室でのことを思い返していました。その教室は大学の先輩から引き継いだものでした。教室を始めて次の年に娘が、その2年後に息子が生まれ、子育てしながら教室を結局16年ほど続けたのでした。2人が絵や工作の世界に幼い頃から触れることができたのは、生徒に混じって月島の教室で過ごしていたからです。いつの間にか一緒に絵を描いたり、工作をしたりしていました。2人とも器用でセンスのよいほうだったので、他の生徒たちのお手本係をつとめてくれることもありました。娘は色がきれいではっきり描くタイプ。息子は小学校低学年から渋めの写生や絵を描いていました。親子でいい時間を過ごさせてもらった気がします、本当に。

2人がそれぞれ希望する道に進めたことに成長と自立を感じ、何とも言えない気持ちでいっぱいでした。心の中で精一杯のエールを送りました。

リハビリだけを考えていた生活から、だんだんと今村家の母親、妻としての心が戻ってきていました。

リターン

3,000


お気持ちコース

お気持ちコース

■サンクスメール

■自分で印刷できる「まる」のオリジナル電子ポストカード(1枚)

支援者
12人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

5,000


絵本『まる』+名入れ

絵本『まる』+名入れ

■出版された『まる』1冊をお送りいたします。

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
95人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

6,000


絵本『まる』+オリジナルポストカード(5枚) +名入れ

絵本『まる』+オリジナルポストカード(5枚) +名入れ

■描き下ろし2枚を含めた、オリジナルポストカード(5枚)

+
---------
■出版された『まる』1冊

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
74人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

10,000


出版お祝いコース

出版お祝いコース

■サンクスメール

■自分で印刷できる「まる」のオリジナル電子ポストカード(1枚)

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
46人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

30,000


出版お祝いコース

出版お祝いコース

■サンクスメール

■自分で印刷できる「まる」のオリジナル電子ポストカード(1枚)

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
7人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

50,000


出版お祝いコース

出版お祝いコース

■サンクスメール

■自分で印刷できる「まる」のオリジナル電子ポストカード(1枚)

■希望者には、巻末に支援者としてお名前を入れさせていただきます。
『まる』を書店売りする場合も、応援してくださった方のお名前入りで発売いたします。

支援者
7人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2020年12月

記事をシェアして応援する

    https://readyfor.jp/projects/project-maru/announcements/146182?sns_share_token=
    専用URLを使うと、あなたのシェアによってこのプロジェクトに何人訪れているかを確認できます
  • Facebook
  • X
  • LINE
  • note

あなたにおすすめのプロジェクト

注目のプロジェクト

もっと見る

新着のプロジェクト

もっと見る