6月25日(日)に開催された「大阪ホリエモン祭り」で、予防医療に関するトークショーがおこなわれました。「プ」プロジェクトにちなみ、大腸がんの闘病経験を持つジャーナリストの鳥越俊太郎さん(写真中央)、大阪市立大学学長で医師の荒川哲男さん(写真左)をお招きして、お話をおききしました。 

 

4回の手術を乗り越え12年間闘病、今はハードな筋トレができるほどに回復

 

鳥越俊太郎(以下、鳥越) 荒川先生、はじめまして。堀江さんはお久しぶりですね。

 

堀江貴文(以下、堀江) 鳥越さんは、僕の高校(久留米大附設高)の超大先輩なんですよ。前は同じスポーツジムに通っていて、よくお会いしていましたよね。いまおいくつなんでしたっけ?

 

鳥越 77歳です。

 

堀江 いや、お若い。ジムで僕の隣でけっこうハードな筋トレをしているのを見ていたから、そんなに長く闘病なさっていたとは思ってなかったんです。

 

鳥越 ひととおりがんの治療を終えた70歳からジムへ行きはじめたんです。

 

堀江 最初にがんが発覚したのはいつだったんですか? 

 

鳥越 65歳のときで、今から12年ほど前ですね。検診を受けて、大腸がんのステージⅡと診断されました。すぐに腹腔鏡手術を受けて治療したんですが、それから1年2か月後に左の肺への転移が見つかりました。そのとき医師に「鳥越さんは“ステージⅡ”と言いましたけど、実際は“ステージⅣ”でした」と言われました。

 

荒川哲男(以下、荒川) 鳥越さんの場合、当初はリンパ節までの転移が認められずステージⅡと診断されたけれど、その後、肝臓や肺への転移が見つかってⅣに修正された、ということでしょうね。

 

鳥越 大腸がんのステージⅣというのは、一般に5年生存率17~18%と言われています。僕はさらにその後、右肺と肝臓にも転移が見つかって、65から69歳になるまでに計4回も手術を受けました。

 

堀江 今は再発していないんですか?

 

鳥越 はい、今のところ見つかっていません。

 

 

「おかしいな」と気づく前に、もう少しだけ早く病院に行けるといい

 

堀江 鳥越さんは、そもそも何をきっかけにがん検診を受けたんですか?

 

鳥越 トイレに行ったときに何気なく、便を流した水を見たら黒く濁っていたんです。それで、「あ、これはがんにやられたかもしれないな」と直感的に思った。

 

堀江 それまで検査を受けたことはなかったんですか?

 

鳥越 受けてなかったですね。

 

堀江 大腸がんだと分かったのは65歳ですよね。会社や自費で、健康診断や人間ドックを受ける機会もあまりなかったんでしょうか。

 

鳥越 人間ドックは受けてましたよ。でも大腸がん検診、便潜血検査は受けなかったかな。

 

荒川 便潜血検査は検診のメニューに入っていますけど、がん検診の受診率は意外に低いんですよ。全国平均で40~50%、大阪府はワースト1か2で30%程度に低迷しています。受けていない人が多い。

 

堀江 鳥越さんのようにトイレに行って、目に見えるほどの異変で「おかしいな」と気づいて検診を受けるのではもうやばい、ということですよね。

 

荒川 やっぱり早期発見が大事ですから。早く見つけられれば、がんは治りますし、体への負担も少なくなります。

 

鳥越 僕の場合、発見した時点で大腸がんは3.3センチもありました。医師に「あなたのがんは10年ものだ」と言われましたね。昨日今日できたものではなくて、10年をかけてここまで大きくなった、と。だからもっと早い段階で便潜血検査を受けていれば、その後の転移によって何度も手術したりしなくて済んだのかもしれない。

 

堀江 じつは僕、去年、便潜血検査を受けたんですが、2日分サンプルを取ったうちの1日目が「陽性」だったんです。それで人生ではじめて大腸内視鏡で診てもらって、結果、ポリープもがんも見つからなかった。こういうこともたまにあって、実際は肛門がちょっと切れたときに出血した血液が混じっていたのかもしれない。

でもそれをきっかけに検査したことで、ポリープがないと分かったから向こう5年くらいはがんの心配はない、と。便潜血検査は優れていて、肉眼で見えない血液も検出するし、胃や口からの出血には反応しない。不安な人は40代から、できれば50代以上の方はみんな受けたほうがいいと思いますね。

 

 

「ラッキーな例」に頼りすぎず、予防で死のリスクを確実に減らす

 

堀江 荒川先生、鳥越さんのようにステージⅣから長期間闘病して、今は再発がないという、ここまで元気になるケースは医師から見て珍しいんですか?

 

荒川 非常にラッキーな例だと思いますよ。よく「5年生存率何%」と言いますが、あくまでも平均した数値です。「ステージⅣ」と言っても個体差があって、抗がん剤がよく効く人、効かない人もいますし……辿る経過は人によってかなり違います。鳥越さんはがんに打ち克つタイプだったんでしょうけれど、もちろんもっと早く亡くなってしまう方もなかにはいらっしゃいます。

 

鳥越 ステージⅣと言うとね、先日34歳でお亡くなりになられた小林麻央さんは、乳がんのステージⅣで闘病なさっていましたよね。

 

堀江 僕も予防医療普及協会の活動のおかげで、がんについて専門家に何度もインタビューしてきたんですが、「がん」と言っても本当にいろいろなタイプがある。乳がんにも進行が速くて悪性度が高いものがあるんですよね。

 

荒川 ええ、それでも「分子標的治療」ができるようになってから、5年、10年前はかなり予後の悪かった悪性度の高い乳がんでも、薬がぴったりはまれば完治できるような例も出てきています。分子標的治療というのは、がん細胞の表面にあってがんを増殖させる特定の「受容体」の働きを押さえ込む薬を使ってがん細胞を叩くんです。

乳がんの場合だと3種類の受容体に働きかける薬あって、そのどれかに当てはまる場合は効果がある。しかし、どれにもあてはまらないタイプのがんは、現在では打つ手が昔ながらの治療に限られてしまう。

 

堀江 がんの遺伝子タイプにもよるんですよね。また別の見方では、転移しやすいがんと転移しにくいがんがあって、甲状腺がん、前立腺がんなんかは転移しにくい。前立腺がんはまれに骨転移することがあって、それはめちゃくちゃ痛いらしいですけど……最近はアルファ線を放出する放射性医薬品を使った治療もできる。

もうひとつの見方としては、早期発見しやすい・がんになる前に発見できるタイプのがんと、早期発見が難しいがんというのもある。大腸がんは早期発見がしやすいがんの典型例で、前がん病変のポリープの段階で取っておけば、ほぼ9割は防げる。予防しやすいがんです。

 

(後編へつづく)


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