6月25日(日)「大阪ホリエモン祭り」の予防医療に関するトークショーにて、大腸がんの闘病経験を持つジャーナリストの鳥越俊太郎さん(写真中央)、大阪市立大学学長で医師の荒川哲男さん(写真左)から、お話をおききしました。 前回の更新につづき後編です。

 

 

この話を誰かにするだけでも、命を救えることがある 

 

堀江 最近、同い年の親しい友人が、僕が「予防医療普及活動をやっている」と話したことがきっかけで大腸内視鏡検診を受けてみたら、ステージⅡのがんが見つかって急いで手術をした、と聞いて驚きました。この活動をやっていて本当によかったと思いましたね。

 

「じつは、がんだったんだ……」と半年くらい経ってから聞かされたんですが、鳥越さんのように3センチ大のかなり大きながんが見つかったらしい。幸い、首の皮一枚でギリギリ漿膜内に留まっている段階で発見できて、リンパ節への転移もなかったから腹腔鏡手術で摘出できた。今は元気になって社会復帰もできて、再発していない。友達や身近な人を亡くしたくはないですよね。

 

鳥越 今がんで死亡する人のデータを見ると、国内では男性は肺がんが1位で、女性は大腸がんが1位なんですよね。おそらく女性にとっては、大腸内視鏡検査を受けにくい、恥ずかしいというのもあるんじゃないでしょうか。

 

荒川 そうですね。「カプセル内視鏡」を使う方法もあります。口から小さなカプセル型の内視鏡を飲み込んでもらって、腸内を見ます。これは恥ずかしくないし楽で、精度も高く、一定の条件下では保険も適用されます。

 

堀江 ほかにCTやMRIを使って腸内を立体撮影する検査もありますね。ただ、まずはスクリーニング検査として便潜血検査を受けて、陽性だったら保険適用で大腸内視鏡検査を受けるのが手軽で、安くていいんじゃないでしょうか。

 

荒川 そうですね。ただし、平坦なタイプのがんはCTやMRIでも見つかりません。また、出血しないがんもあり、便潜血検査が「陽性」にならないこともあります。見つけられないがんもあるから、かならずしもそれだけでよいというわけではない。

50歳以上の年齢だとか、家族に大腸がんになった人がいるとか、リスクファクターが大きいと思われる方には、できれば内視鏡検査を受けていただきたいですね。

 

堀江 胃がんや大腸がんのように予防がしやすいがん、子宮頸がん、肝臓がんなど、感染症由来のがんは検査やワクチンでかなり予防ができる。予防ができたはずのがんにかかってつらい思いをしたり、人生の質・QOLが下がったりするのはもったいないですよね。もちろん予防が難しいがんもある。

 

僕は最近、また新しい予防医療の本を作っていて、すい臓がんの専門家の先生にインタビューをしてきたんですが、すい臓のがんは早期発見も治療もとても難しいそうです。見つかってから手術するのも難しいし、それ以前に、がんであるかどうかを調べる検査にもリスクがともないます。

 

 

100歳まで健康でいるために、まずは予防しやすい病気から

 

荒川 すい臓がんは一番難しいですね。そういうがんは別として、堀江さんがおっしゃっているように、見つけやすいがん、死が防げるがんはまだある。食道がん、胃がん、大腸がんは見つけやすいのに、いまだに毎年約9万人もがこれらのがんで亡くなっています。

 

今、がんがもっと早く見つけられるようになれば、日本人の寿命は100歳に延びると言われています。現状は平均寿命と健康寿命に10年ほど差がありますが、がんを早期発見できればQOLも上がり、この差も縮められる。そうすれば医療費の負担も、介護の負担も軽減できると思います。

 

ただし、胃がんに関しては、ピロリ菌の除菌で防げるというのは、とくに60歳以上の人に関しては間違いで、除菌しても胃がんは多くの人にできてしまいます。50〜60代以上の人にとっては、胃カメラ検査で早期発見することが、除菌治療をすることよりも大事です。

 

堀江 先生のおっしゃることもよく分かるのですが、僕は除菌しておいたほうがいいと思います。さらに、除菌したらかならず、胃カメラで定期的に検査を受けてくださいと言いたいですね。

 

僕の知り合いで元F1レーサーの鈴木亜久里さんは、50代でピロリ菌検査を受けたら陽性と分かって除菌をしたんです。その後も定期的に検診を受けていたら、あるとき早期胃がんが発見された。早くに見つけられたから手術できて助かった。こういう例もあるので、ピロリ菌検査はいいきっかけになると思うんです。

 

一般の人って、そもそも検査のことを知らなかったり、陽性だと分かっても何もしない人もいたりする。だからまずは第一に「検査をして、除菌しましょう」と伝えていったほうが、広く胃がんのリスクを減らせると思うんです。理想としては5060代になるもっと前、中高生くらいの若い段階で検査、除菌しておくことをお勧めします。

 

鳥越 まだ自分には関係ないと思っている方も多いかもしれませんが、僕がそうだったように誰にでもがんになる可能性はある。健康で長生きするためにも、40、50歳を過ぎたら、便潜血検査、胃カメラ、大腸内視鏡検査、CT、PET検査……など自分に合った方法を組み合わせて、定期的にがん検診を受けていただきたいですね。

 

荒川 がんは早期に見つけられたら、今はかなり治ります。大阪は国内でもとくに検診率が低くてワースト1か2の地域。ぜひもっと検診を受けていただきたい。またがんの部位や種類によって危険因子が違うので、自分はどういうがんになりやすいのか、検診やドクターへの相談で把握しておくとよいでしょう。

 

堀江 予防医療普及協会では、まずは死亡者数がとても多いがんのうち、誰でも予防がしやすくて、しかも予防法や検査にしっかりとした根拠がある「胃がん」「大腸がん」のキャンペーンを実施しました。ちょっとした検査で防げる病気があるということを、もっとみんなに知ってもらいたい。

 

そして自分が検査を受けるとか、人に伝えるといった行動に移してもらうことで健康で長生きできる人が増えたらいいなと思います。そのためのプロジェクトを今後も続けていく予定です。歯周病の予防や、子宮頸がんワクチンに関する啓発などにも取り組んでいきたいと考えているんです。

 

 一回検査したから終わり、はダメ。「毎年うんち」を実行しよう

 

 

*プロフィール

鳥越俊太郎(Shuntaro Torige)

ジャーナリスト。1970年、福岡県生まれ。京都大学文学部卒業後、毎日新聞社に入社。1989年に同社を退職して以降、テレビ朝日系列「ザ・スクープ」「サンデージャングル」でキャスターを務めるなど、テレビメディアに活動の場を移した。2005年、ステージⅣの大腸がんが発覚、肺や肝臓への転移を経て4度の手術を行った。2010年からスポーツジムに通い始め、2012年にはホノルルマラソン完走を果たすなど健康的なライフスタイルを貫いている。現在もさまざまなメディアで「ニュースの職人」として活躍中。自身の闘病記録やがんに関する著書に『がん患者』『食べて よく寝て 鍛えなさい』などがある。

 

荒川哲男(Tetsuo Arakawa)

医学博士。消化器内科が専門。公立大学法人大阪市立大学理事長兼学長。1950年、大阪市生まれ。一般社団法人全国医学部長病院長会議顧問、一般財団法人ものづくり医療コンソーシアム顧問、日本消化管学会理事、日本消化器病学会財団評議員・指導医、日本消化器内視鏡学会評議員・指導医、米国消化器病学会および米国大学消化器病学会評議員。また、カリフォルニアやアリゾナ、香港、大連など世界中の大学医学部の客員教授でもある。

 

堀江貴文(Takafumi Horie)

実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。株式会社ライブドア元代表取締役CEO。 1972年、福岡県生まれ。現在は自身が手掛けるロケットエンジン開発を中心に、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」のプロデュースを手掛けるなど幅広い活躍をみせる。 自身のwebメディア ホリエモンドットコム でも予防医療の重要性を呼びかける。一般社団法人予防医療普及協会理事。予防医療に関する書籍に『むだ死にしない技術』(予防医療普及協会との共著)、近著に『すべての教育は「洗脳」である』『好きなことだけで生きていく。』『多動力』などがある。