(左:荘子万能さん / 右:岸田徹さん)

 

NPO法人がんノート代表理事を務める、岸田徹(きしだ とおる)さん。25歳で全身がん宣告、27歳で再発、29歳現在は経過観察中という岸田さんは、がん患者へのインタビューという形で情報発信を行い「がんと共に生きる」ことを世の中に広めています。

 

今回は、「医学生だからこそ社会と医療との架け橋になることができる」と様々な形で活動する医学生の荘子万能(そうし まの)さんとの対談を記事にしました。

 

二十代・関西出身のお二人が、医学生と患者それぞれの立場から、世の中に対してリアリティある情報を発信し続けている意味を、熱い想いと共に語っていただきました。(後編はこちら

 

 

予防医療は「病気にならない」がゴールではない

 

荘子万能(以下、荘子) じつは僕、世の中一般的に言われる「予防医療」は明確な課題を抱えていると思っています。「病気にならないようにする」を目的に語られすぎていて、病気になったら『あ〜もう残念』みたいに聞こえるし、そう受け取られがちなんですよね。

 

岸田徹(以下、岸田)確かに。がんになった身として話すと、僕は社会人になってからは毎週末スポーツクラブ通って、コンビニだけど野菜は食べるようにしてたんですよ。自分なりの病気予防として。それでもがんになった。

 

その時点で『病気になった?ハイ、あなた失格』みたいに、患者からしたらやっぱりちょっと「突き放された気持ち」はあったかもしれない。
 

 

荘子 「予防」とか「治療」だけではなく、「治療のその後」までも含めて医療だと思います。予防しよう、病気かもしれない、病気だった、治療した、再発するかも、社会復帰をどうするか、そしてその後……一人の患者さんが全部経験するわけじゃないですか。でもこういった一連のプロセスってけっこう寸断されてるように感じます。

 

岸田 そうそう、ほんとにそう思います。予防領域と、治療領域と、社会復帰したらどうなるのか。がん患者にとっては、二次がんとか再発リスクもあるわけだけど、『一回がんになったから次の予防はパーフェクト』なんてことはないわけで。
 

荘子  そこで一緒に伴走していけるような一貫した社会的な仕組みが必要だと思います。

 

岸田 僕の活動の中で、手術後に人工肛門を付けることになった大腸がん・直腸肛門がんの患者さんにインタビューした時の話なんですけど。毎回、ストーマ装具を変えないといけないとか、そこに対するストレスが凄くある。オストメイト対応トイレは都心はまだあるけど、地方だとなかったり。だから旅行とかもほんと大変っておっしゃってますね。(※) そういうのに対する無意識のストレスなのか、すごく温和な人だったのが性格が変わってしまうこともあったり…というのは、一定数聞く気がします。

 

(※便を体外に出すために腹部に設けた人工の排泄口(ストーマ)から、お腹につけた装具で便や尿を溜めて処理します。ストーマを持つ人のことを「オストメイト」と呼びます)

 

荘子 治療をしたあとの生活の質をどう高めるかって大事ですよね。、「病気にならない」ことを目指す一次予防だけじゃなくて、「治療」に関する二次予防や「再発防止、リハビリや社会復帰をどうするか」などに関する三次予防も同じくらい大事だ、というメッセージを、どう世の中に伝えるかにも取り組みたいです。
 

 

 

「患者中心医療」ではなく、今は「患者さんも一員のチーム医療」

 

岸田 患者さんに対しても、もっと啓発していってほしいなって思いますね。ある先生に聞いたら、メモを持ってくる患者さんは、一日診察して一人二人らしいです。お医者さんの言うことを全部聞くだけじゃなくて、患者さん側もリテラシーを高くするのは大事だと思いますね。

 

荘子 その領域で言えば、「チーム医療」ってここ10年くらい言われてきていて、医療はお医者さんだけじゃなくて、看護師さんとか薬剤師さんも一緒に取り組むチームの一員、それに患者さんもチームの一員だって考え方です。

 

このチームは、何かの専門家でできているんですよね。医療の専門家、薬の専門家、看護の専門家で、患者さんも専門家だと。僕、この考え方が結構好きなんです。患者さんを「その病気を抱えること」の専門家だと捉えて、専門家どうしリスペクトしあえたらいいですね。
 

岸田 大事、すごく大事。僕は聞いた話なんですけど、がんの領域はそれが一番進んでいるって言われていて。他の領域ではまだ「患者中心医療」って言ってる学会とかもまだあるんですけど、がんの領域では、今は患者さんも一つの輪。
 

 

 

荘子 患者さん一人を他の人たちが取り巻くんじゃなくて、病気とか課題とかが中心にあって、『患者さんも課題解決に取り組むチームの一員なんですよ』ってことですね。

 

岸田 そうそう。「患者中心医療」だと患者中心ってみんなで考えてるにもかかわらず、真ん中で患者さんが孤立しちゃってたから。

 

荘子 今まで医療者だと必ずしも思われてこなかったけれども、例えばデザイナーとか音楽家とか、世の中の色んな領域の人がこの輪の中に入ってくると思うんですね。だって患者さんの課題っていうのは生活そのものなので、生活に関わるあらゆるものが繋がってきますね。

 

後編につづきます

 

一回検査したから終わり、はダメ。「毎年うんち」を実行しよう

 

*プロフィール*
岸田 徹・きしだ とおる(NPO法人 がんノート代表理事)
1987年大阪府生まれ。立命館大学政策科学部卒業。社会人2年目の25歳で全身がん宣告を受け闘病。その後27歳で再発、29歳現在は経過観察中。
【現在】NPO法人がんノート代表理事、国立がん研究センター広報、若年性がん患者会STAND UP!!渉外役、ブロガー。
【メディア掲載】朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、みんなのニュース、週刊ニュース深読み、NEWS ZEROなど他多数。

 

荘子 万能・そうし まの(大阪医科大学医学部)
1992年京都府生まれ。医大に在学しながら「学びながら社会貢献」をキーワードに、医学生だからこそ社会に提供できる価値を模索し、活動中。日本医学会総会2015関西学生フォーラム実行委員。第46・47・48回日本医学教育学会医学教育学生シンポジウム担当。Choosing Wisely Japan発起人。予防医療普及協会。「学生と読むTomorrow's Doctors」主宰。医療問題を語るポッドキャスト「徳田闘魂道場にようこそ」にてMCを務める。

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