活動期間終了のご報告
みなさま、こんにちは。
シェア=国際保健協力市民の会で在日外国人支援事業を担当しております、山本裕子です。
昨年は、8月27日からの45日間で実施しましたクラウドファンディング「【医療通訳の活用促進】外国人母子が保健サービスを利用しやすい社会へ」にご支援いただきましてありがとうございました。皆様のご支援のおかげで、1年間集中して活動に取り組むことができました。
シェアスタッフ一同、感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、早いもので、最初に活動期間として設定しておりました期間が8月31日に終了日を迎えました。
このタイミングで、簡単にではありますが、活動のご報告をさせていただきます。
本プロジェクトでは、主に、
①東京都内での母子保健分野の医療通訳体制整備
②外国人母子支援者のための医療通訳以外についての相談窓口をつくる
③相談者と保健医療機関との橋渡し
④女性保健ボランティア向けの勉強会を実施
の4点の活動について進めてまいりました。
① 東京都内での母子保健分野の医療通訳体制整備
この1年間、外国人母子・保健医療従事者・通訳者・シェアのそれぞれにとってWin-Winで、持続可能な“こころの通う”医療通訳(派遣を柱とした)体制づくりを目指して活動してきました。
最初に、医療通訳サービスの活用状況についてご報告します。
実施期間と設定していました2022年9月~2023年8月31日の1年間で、母子保健場面での医療通訳に125件対応することができました(母子保健通訳活用促進のための事業として、赤い羽根福祉基金の助成を受けて実施)。合計13言語で、一番多かったのがネパール語の48件(38%)でした。自治体の保健センターや産婦人科・小児科などの医療機関からの依頼以外に、発達支援や療育施設からの依頼が21件(24%)に及ぶなど、妊婦期から子どもの成長発達まで、幅広い場面での通訳ニーズがありました。
この活動を通して、母と子の健康を守るためには、母子保健の対象年齢である3歳までだけではなく、それより上の子どもたちの健康や成長発達に関連する様々な場面で通訳環境を整備していく必要があると、改めて実感することができました(医療通訳対応の概要は以下のグラフ参照)。
また、助成金などのご支援を得て実施している現在のシェアの医療通訳体制ではなく、持続可能な形で運営できるような体制を作るために、課題や実施すべきことを整理し、年間計画を立案しました。
現在は、それに基づいてさらに活動を進めているところですが、少し進捗をご報告いたします。
母子保健場面での様々な医療通訳ニーズに安定して対応できる体制を整えるため、現在対応できていないウルドゥー語や人員が不足してきているいくつかの言語について人員を増やせるよう、今年度中の選考会の実施に向けて準備を進めています。
また、江戸川区にある産科の病院や新たな自治体へ母子保健場面での通訳ニーズについてインタビューなども行いました。そして、医療通訳サービス活用のための予算確保を検討していただけそうな保健医療機関が増えるように、お話ができそうなところから情報交換や予算交渉なども行っています。
こちらの活動は、今後、より力を入れて行ってまいりますので、今後も進捗報告ができたらと考えております。
② 外国人母子支援者のための医療通訳以外についての相談窓口をつくる
11月1日付で、外国人母子支援の相談窓口を正式に開始し、ウェブサイトで公開することができました。詳細は、活動報告(2022年11月04日「ウェブサイト開設!正式に外国人母子支援の相談窓口を公開!」をご参照ください。
ウェブサイトを公開した2022年11月から2023年8月までの10か月、様々な保健医療に関する相談が寄せられる中、母子保健に関連する相談は12ケースに対し23回対応しました。国籍は、8カ国で多岐にわたりました。相談者は、自治体の保健センター等の保健師からの相談が約半数でした。妊産婦や子どもの在留資格がない、もしくは在留資格の種類の影響で国民健康保険の更新ができていないケースに関する相談や、出産費用、医療費等の相談が一番多く、対応方法などについて情報提供などを行いました。
外国人母子支援の場面では、医療通訳サービスや多言語資料、ツールの活用だけでなく、制度や法律を含め外国人支援の際に必要なノウハウが必要なため、多くの保健医療従事者にこの相談窓口を活用して情報提供を積極的に行っていきたいと考えています(相談内容は以下参照)。
③ 相談者と保健医療機関との橋渡し
この期間に、ネパール人女性保健ボランティアと共に、1回ネパール人産婦訪問を行いました。詳細は、活動報告「もうすぐ1歳!妊娠中からつながったケースへの産婦訪問」をご参照ください。今回の訪問では、保健医療機関への橋渡しは不要でしたが、女性保健ボランティアを通じてつながった別の相談の中で、1件保健センターに橋渡しを行いました(上記②の相談件数に含む)。
発達障がいを持つ子どもの母親からの相談で、お子さんの発達の検査のために、保健センター経由で病院を紹介してもらい受診したが、受診先で、お子さんが、日本語を話せないため検査ができない、と言われ返されたそうです。その後、そのまま受診・検査ができていない、ということでした。シェアが通訳をサポートすることで、検査ができないものか、保健センターに事情を伝え、相談しているところです。
④ 女性保健ボランティア(女性普及員)向けの勉強会を実施
女性保健ボランティアと共に、勉強会を2回開催しました。1回目は、活動報告「幼稚園に通う子どもたちの栄養バランスを良くしたい!」でご紹介していますのでぜひご覧ください。
2回目は、8月13日に行いました。保健ボランティアの2人は、子どもたちと関わる中で、発達障がいの基本的な知識を学びたいと思っており、今年の学ぶテーマとしました。ちょうど、今年の2月25日にシェアの医療通訳者対象に「小さな子どもの発達支援」についての研修を行いましたので、その録画映像を活かして、ネパール語で通訳をしてもらいながら録画をみる形での勉強会としました。
保健ボランティアの想いとしては、今後、子どもを育てるネパール人のお母さんたちに、発達障がいについて知ってほしいという想いも語ってくれており、一緒に情報を伝える機会を作っていこうと計画しています。
最後に
この1年間、他にもネクストゴールを達成したら実施したいと書かせていただいていた活動にも取り組んできました。
その中で、シェア独自、またはシェアと自治体が連携して製作した外国人母子支援で役立つ多言語資料2種の増刷や対応言語を追加するための翻訳・印刷についても行ってきました。
まず、「陣痛が来たときに、破水したときに、一人で病院へ連絡し、病院へ行くための連絡カード」については、区を超えて多くの方に配布できるように、ネパール語版、英語版、ベトナム語版の増刷を行うことができました。
シェアが製作した「母と子のチェックリスト~妊娠から育児まで~」という、母子保健サービスと必要な手続きについてまとめた3つ折りのカードについては、新たにベトナム語版の作成を進めているところであり、それに合わせてほかの2言語も一部修正をしているところです。
製作が終了しましたら、また活動報告でお伝えできたらと思っています。
最後に、皆様からご支援いただきました資金は、上記に書かせていただきました、「母と子のチェックリスト」のベトナム語版作成や英語・ネパール語版の修正・増刷のための資金約20万円を残し、『【医療通訳の活用促進】外国人母子が保健サービスを利用しやすい社会へ』で実施するとお伝えしておりました活動に全て活用させていただきました。
みなさまのご支援で、母子保健場面での医療通訳活用体制を目指した様々な活動を1年間実施してくることができました。
みなさま、本当にありがとうございました。
今後、さらに目指した社会を達成すべく、精一杯取り組んでまいりますので、今後とも応援ををよろしくお願いいたします。
(特活)シェア=国際保健協力市民の会
在日外国人支援事業担当
山本裕子