プロジェクト概要

歴史と文化史で空白になっている18世紀前半のチェコを描いた長編歴史小説を、日本の読者に紹介したい!

 

はじめまして、浦井康男と申します。私はスラヴ語学を研究し、ロシア語とチェコ語の教師を長年続けてきました。私は2011年に、チェコ歴史小説の第一人者アロイス・イラーセク(1851-1930)の古典『チェコの伝説と歴史』(原題は「チェコの古代伝説」1894年)を訳し、2011年に北海道大学出版会から出版しましたが、幸いにもこの本は、日本翻訳家協会主催の第48回日本翻訳文化賞を受賞しました。

 

現在この本に続く時代を扱った同じ作者の『暗黒 ― 18世紀、イエズス会とチェコ・バロックの世界』の翻訳を終え、出版も東欧・ロシア関係に定評のある成文社が引き受けてくれました。ただ本書のテーマは日本ではあまり馴染みがなく、しかも大部の作品なので、出版社も売れ行きを心配し、自己資金もかなり必要です。

 

そこで本書の出版費用の内の100万円分を、皆様のお力をお借りして集めて、自己資金を補うと共に、出資された皆様にリターンとして本書をお送りすれば、それが確実な予約購読となって、出版社の心配も軽減されると考えました。

 

(私が翻訳した『チェコの伝説と歴史』です)


 

出版を予定している本書はチェコやプラハに関心がある人はもちろん、東欧史、カトリックとプロテスタントの抗争や近世ヨーロッパの歴史に関心のある人にも、これまでとは違う視点を提供するものと確信しています。またこの作品を訳していく中で、宗教が人の存在をいかに大きく規定しているかという点でも、深い感銘を受けました。

 

 

ヨーロッパではイエズス会は対抗(反)宗教改革の尖兵であり、恐ろしいものという認識があります

 

ヤン・フス(没1415)に由来するチェコの宗教改革は紆余曲折を経た後、16世紀後半に民族文化の大輪を咲かせました。しかし17世紀後半にチェコは独立を失い、ハプスブルグ家の専制とイエズス会による再カトリック化が始まりました。日本ではフランシスコ・ザビエルに代表されるイエズス会は、ヨーロッパ文明の紹介者という理知的で明るいイメージがありますが、ヨーロッパでのイエズス会は対抗(反)宗教改革の尖兵であり、頑迷で陰険で恐ろしいものと見なされています。そして無学な大衆の改宗のために、「明快で分かりやすく、写実的で、情動的」なチェコ・バロックの特異な芸術が生まれました。今日のプラハにはカレル橋の像を始めとして、この時代の文化遺産が数多く残っています。

 

(写真は銀2トンを使って鋳造したネポムツキーの墓です)

 

 

チェコの18世紀は歴史的に負の時代のため、歴史と文化史で空白になっています。

 

この時代はチェコ人自身が、プロテスタントであるフス派の自民族とフスに由来する民族文化を弾圧した、言わば歴史的に負の時代でした。そのためこれまでチェコ本国でもほとんど関心を向けられず、20世紀末のビロード革命以降にやっと光が当たるようになった世界です。2006年にイエズス会がチェコに進出してから450年になるのを記念して、チェコで国際会議が開かれましたが、その報告書はこの間の空白を埋めるかのように、1500ページを超えるものとなりました(下の写真)。
 

(この厚さには腰が引けます)

 

このテーマで日本語で読めるものとしては、2015年の石川達夫氏の『プラハのバロック ―― 受難と復活のドラマ』(みすず書房)がありますが、これは主に美術的側面からのアプローチのため、残念ながらこの時代を俯瞰できるものではありません。

 

 

1720年代のチェコの宗教・文化・社会の渾然一体となった状況が、客観的かつ詳細に描かれています。

 

今回訳したこの作品の第一の特色は史実を基に創作され、各々の登場人物の立場を描き分けることで、1720年代のチェコの宗教・文化・社会の渾然一体となった状況が、客観的かつ詳細に示されていることです。具体的にはプロテスタントのフス派の秘密のミサや秘かに持ち込まれた禁書と、イエズス会宣教団の説教や焚書などの宗教的弾圧の具体的な描写、田舎暮らしの没落貴族の生活とビール醸造で財をなしたプラハ市民の富と文化、プラハでも広まったフリーメーソンの活動、当時のプラハのバロック音楽の世界や官公庁でのチェコ語の衰退の様子などです。

 

またネポムツキーのイエズス会による聖人への格上げと1729年の彼の列聖式は、対抗宗教改革の頂点をなすもので、詳細に記述されています。ちなみにプロジェクトのトップ画像はカレル橋にあるネポムツキー像です。

 

(カレル橋のたもとでの水上の音楽の様子)

              

作品中でのイエズス会士たちがフス派やルター派の異端を追い詰めていく過程は、推理小説並みの面白さがあり、弾圧する側のテクニックと、それを如何にくぐり抜けるかの方策も描かれています。また双方の教義の違いを元に、カトリックがプロテスタントを見破ろうとするくだりも興味深いものがあります。不幸なことにチェコ国民は20世紀になってもこのような弾圧を三度も、つまりナチス・ドイツによるチェコ併合の時代、第二次大戦後のスターリンによる共産化の時代、プラハの春以降の「正常化」の時代に受け、数多くの犠牲者を出しましたが、本書はその中で数多く読まれたと言われています。

 

(隠していた禁書が発見された!)

 

 

ネット検索を活用。作品に出てくる事物のイメージが膨らみ、読者が興味を維持できるよう工夫しました。

 

本書の第二の特色は読者のネット検索の活用の便宜を図ったことです。これまで翻訳文学というと、訳者が一方的に提供する情報(訳文と注釈)で読み進むのが当たり前で、何ら疑問は感じませんでした。しかしインターネットが拡充しその内容が確実で豊かなものになると、史実を背景とする歴史小説のような分野では、読者も積極的にその情報に関わり理解を深めることが出来るようになりました。

 

本書は1700年代の物語なのでもちろん限界はありますが、世界遺産のプラハを始めチェコ各地では、古いものが良く保存されています。ネット検索を利用することで、作品に出てくる事物のイメージや説明、地方都市や小さな村の位置、各都市やプラハ市街の鳥瞰図やstreet viewでの街路の風景、古い絵葉書によるプラハ市内の当時の建物や市門の姿、u-tubeの動画で教会の鐘の音や聖歌の旋律を聞き、民俗舞踊を見るなどの様々なことが可能になりました。

 

(キーワード「betlem」(キリスト降誕雛)の検索で得られた画像の一部)

 

また本書では、各節の始めにその節の内容を端的に示したA.カシュパルの挿絵を使い、内容の理解を助けるようにしています。

        

(ビール職人たちの大晦日の祝歌)

 

 

若手の研究者はまず手をつけない本格的な長編歴史小説、定年後、下読みと翻訳に4年を費やしました!

 

最近では日本でも現代チェコ文学の出版が比較的多く見られるようになりましたが、それらは洒落たテーマで、少しまとまった時間を作れば、読み切れる200~300ページのものが大半です。しかし本書は全く逆で、挿絵入りの原書は700ページの大きさがあります。これを日本語に訳した本書は、A5版の2段組みで全840ページ(上・下2巻)を予定した、本格的な長編歴史小説になり、これが本書の第三の特色です。時間と業績に追われる若手の研究者や翻訳家はまず手を出さない代物で、私も定年後始めた本書の下読みと翻訳に足掛け4年かってしまいました。

 

  (原書は厚さ5cm)

   

 

チェコの文化や歴史に興味がある方、東欧史、カトリックとプロテスタントの抗争や近世ヨーロッパの歴史に関心のある方も、どうかご支援よろしくお願いいたします。

 

書店での定価はかなり高額になりますので、本書に興味を持たれ購読を希望される方は、予価の2割引で提供するこの機会を利用して、ぜひ予約購読に御協力下さい。なお本書を読む時間は取れないが、チェコの文化や歴史に興味を持たれていて、この出版を応援したいとお考えの方も、チェコの文化に関する別のプレゼントを用意しましたので、ぜひご協力をお願いしたいと思っています。

 

 

◇◆◇リターンについて◇◆◇

 

・エルベン『花束』(私家本)の贈呈

(ドヴォルジャークの交響詩の原作が含まれていて、日本語で読める全訳は本書だけ)

 

・上記エルベン『花束』とムハ(ミュシャ)のスラヴ叙事詩の解説(CD版)贈呈

 

・『暗黒』の予約購読

 

・『暗黒』の予約購読と既刊の『チェコの伝説と歴史』を一部ずつ

 


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