東日本大震災12年、被災者100人で創るミュージカルを石巻圏で！

ミュージカルの出演者で、石巻日日新聞にミュージカルのことなどをコラムとして掲載してくださっている「小野　眞理」さんの記事をご紹介いたします。

この記事は、令和５年３月１１日に掲載されたものです。

今回が潮音最終号です。

※石巻日日新聞社さんには、掲載の許可を得ております。

　我が家に午後２時４６分で止まったまんまの時計があります。針の動かない時計は私に震災当時を思い出させ「物の備えを怠るな、常に覚悟してなさい」と注意を喚起します。

　震災の年「想定外」や「余儀なくされる」の言葉が世間にあふれる中、「１００通りのありがとうミュージカル」の練習は始まりました。東京銀座での公演を終えてからも「ぜってい負げね合唱団」と称し、復興関連のイベント、植樹祭などに参加しながら、仲間同士の親睦を深めてまいりました。

　東京公演のDVD上映会を期に「１００☆百☆飛躍プロジェクト」を立ち上げパワーアップ。４年前には旧野蒜駅で行われた、当時皇后陛下であらせられた美智子姫殿下の歌碑の除幕式で、プラットホームを舞台にミニ・ミュージカルを披露しました。ニューヨーク９・１１風の環（わ）コンサートに招かれ、遠征した仲間もいます。

　いつも不思議に思うのですが、その都度、メンバーの中に新しい人が増えています。寺本監督から紹介された新人さんは多生の縁？すぐになじんでそこにいます。被災の状況は様々でも、震災時の支援に感謝している私達だからなせる業でしょうか。誰かを招き入れる力に満ちあふれています。

　行事の途中で仲間の想像を絶するような被災体験を聞くことがあります。かける言葉に何度も詰まりながら一緒に泣いてしまいます。その方々の震災と向き合う姿には、教わることがたくさんあって、私の人生訓です。お互いの喜怒哀楽を一緒に感じて、いま自分が持てる力を大いに発揮する。これがこのミュージカルの真骨頂！生きる推進力なのだと私は思っています。とても誇らしいです！

　今回、東松島市での公演ということで、私には「観客の皆さんを当時の辛い記憶のまま帰したくない、尊い命の力をしっかりと感じてほしい」、そんな思い込みが強くありました。なのに本番が近づくほど、セリフやもろもろの決め事ばかりが気になって、「もう情けないったらありゃしない！」

　じだんだを踏みたい気持ちで舞台に立ったのですが・・・びっくり！歌の歌詞がガンガン私の胸に響いてきたのです。仲間の語るセリフが、その人の言葉として心に入ってきたのです。本当にここにいる！涙でぐしゃぐしゃの困惑した表情も、全てがその人で代役者じゃない！当たり前ですごい！これこそ、寺本監督が言っていた「ホンモノ」か？

　それからの私は無我夢中、自分の中に湧きあがる感情のまま喋り、歌い、踊っていました。２回の公演はほぼ満席、「涙をいっぱい流したけれど、力強い歌声に元気になれって励まされた！ありがとう」の感想はうれしかったです。

　公演を終え、多くの方々のご支援と応援があってできたミュージカルだったと恐縮致したします。ご尽力くださった皆様、足を運んでくださった皆様に心から感謝申し上げます。舞台からいった「ありがとう」だけでは、まだぜんぜん足りていません！どうしましょう！「ありがとう」を伝えたい人がどんどん増えていきます。

　ホンモノの舞台をさらに届けたく、寺本監督率いる素人役者集団は、石巻での公演を６月２５日に予定しております。お越し頂ければ幸甚です。

　それではこれにて！「潮音」で頂いたご縁に感謝し連載を終わります。誠にありがとうございました。