パン屋をやりたいと漠然と思い始めたのは、私たち夫婦が北海道に住んでいた時でした。

小さくても美味しいと評判のお店には、片道6時間かけても見に行きました。

自然豊かな場所にある店、繁華街のビルの1階にある店、昔ながらの商店街の中にある店・・・どのお店にも個性があって、その地に根付いていて、地域の人たちに愛されていました。

最初は、自然豊かな広い土地でやりたいと考えていましたが、色々見て回った中でもとくに印象深かったお店は、住宅街の中にありました。

まわりの家々と変わらない大きさで、住宅と店舗が一緒になっていて、店舗の奥からお子さんの声が聞こえてきて、家族だけで切り盛りしている・・・。

近所の人も買いに来るけど、遠くからもドライブがてら買いに来る人も多く、とても人気のパン屋さんでした。

小さいお店ですから、売り切れてしまう日もあったようですが、それはそれ。

また次の日には美味しいパンが焼けるのを、みんなが知っているのです。

そのお店に私たちがお邪魔したのは、もう12年も前のことですが、今でも変わらずその場所に在ります。それだけで、今は遠く離れていますし、そのパン屋さんは私たちのことを知りませんが、力になるのです。

まったくお客様が来ないとき、場所のせいにしたくなる時があります。

1時間に一人、犬の散歩の人が通るくらいの場所です。こんな所じゃやっていけないと。

でも、そのたびに私たちは北海道のあのお店を思い出します。

そして、あの震災の日。

多くの方がパンを求めて来られ、こんな大変な中で焼いてくれてありがとう、ここにパン屋があってよかった、と言ってくださいました。

どんな状況でもパンが焼けて、お客様に提供できる小さくても強い店を作ることが、目標となったのです。

 

このことに気づかせてくれたお客様と、実現に力を貸してくださっている皆様に、改めて感謝いたします。

そして、北海道のあの小さなパン屋さんにも。

遠かったので3回ほどしか買いに行けず、話しかけることもなくすぐに帰ってしまいましたが、これからもともに頑張りましょう、と勝手に思っています。

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