PM2.5 に関する研究報告ならびに皆様への御礼
現段階までの研究におきまして、PM2.5 による眼障害についてつぎ 2 点の検討をいたしました。すなわち、(1) 培養角膜上皮細胞を用いた角膜へのPM2.5の影響の検討、ならびに、(2)PM2.5 による網膜への影響を培養細胞ならびにげっ歯類への点眼での検討です。そのために、(1)については、培養角膜上皮細胞に対して 2 種の PM2.5 を各種濃度で負荷し、細胞生存への影響、障害機序を検討しました。また、(2)については、培養網膜神経節細胞にP M2.5 を各種濃度で添加し、細胞生存率、形態変化を検討するとともに、幼若マウスに M2.5 溶解液を点眼、生食点眼をコントロールとして網膜障害を検討しました。これらの結果、(1)2 種の PM2.5 溶解液に対して培養角膜上皮細胞は濃度依存的に細胞死を生じました。なお、その機序はオートファジーによるものでした。なお、細胞死には複数のサイトカインが関与しており、とくにGM-CSF (granulocyte macrophage colony-stimulating factor) の関与が顕著でした。また、(2)PM2.5 により培養網膜神経節細胞が影響を受けることが明らかになりました。低濃度の負荷の場合は神経突起の抑制など機能低下を、また、高濃度の場合は細胞死を来しました。さらに、幼若マウスへの点眼により、網膜の発達が抑制されました。とくに障害は網膜神経性津細胞など網膜内層の細胞に顕著に認められました。
以上の成績のうち上記の(1)について「Effect and underlyning mechanisam of airborne particle matter 2.5 on cultured human corneal epithelial cells.」という題名の論文として Toxicology という雑誌に投稿しており、現在、小幅の修正を求められていますが、近々に採用される見通しです。また、上記の(2)の成績についても別の雑誌に投稿を予定しております。
ご支援をいただいた皆様方のお陰で、上記のように研究を進めることができました。しかしながら、これまでの研究は、山梨県外(北京ならびにゴビ砂漠)で採取された PM2.5 を用いた研究でした。これまでの研究を、山梨で採取した PM2.5 を用いて行うことを予定しております。現在は、そのために、皆様からのご支援の一部を活用させていただき、山梨大学医学部キャンパスで、連日、PM2.5 を採取しております。本年の後半には、山梨で採取した PM2.5 を用いた研究が展開できるものと考えております。
その研究が進行した際には、改めて皆様に研究進捗状況をご報告申し上げます。また、そうした一連の研究成果の報告会を来年の春には開催する予定です。この報告会には皆様にご参加いただけるように準備いたしますが、具体的な期日や会場等につきましては、改めてご連絡申し上げます。
末筆ながら、この度の皆様のご支援に心から感謝申し上げます。