今日も海に潜るオジィ達！海人の伝統マスク・旭面を復刻したい！

 

この旭面を復刻製作するに当たって、図面が無いことから現物部品の寸法を測って、そこから新しい部品を起こしていくしかない訳ですが、採寸する元が使い古してボロボロになったものよりは、やはり新品のものから採寸を起こした方がより正確なのは当然です・・・。

 

それは既に分かっていたことなので、この日本のどこかに新品はないものかと同時に探してはいたのですが、やはりそんな古いものの新品は存在していませんでした・・・。

 

ところが、金型の最後の所有者であった会社をようやく見つけて、先方の会社で法的にも正式な譲渡契約をさせて頂いていたとき、当時娘時分だった頃にこの旭面の組み立てを、パートでしていたという現在は年配のご婦人に偶然お会いすることが出来たのです・・・！

 

その方は当時旭面を作っていた大元の製造会社で、戦後であった十代の頃からそこで働いて旭面の組み立てを行っていたそうです。

そしてその会社の社長がこの旭面を世の中に作り出した浅利氏のパートナーに当る方で、浅利氏が考案した旭面を販売する会社として起こした方だったそうです。

 

今はその元の会社自体は存在しておらず、現在の別の会社に吸収合併されたという形で、残された金型や社員さんなども現在の会社に引き取られたという形だったのです。

 

不思議だったのは、そのご婦人に今回のプロジェクトの経緯と意向をお話していると、「実は私し、新品の最後のマスクを持っているんです・・・」と、突然打ち明けてくれたのです・・・。

 

それは、元の会社の社長が亡くなられた時、社員の方たちで自宅の遺品整理に借り出されたとき、押入れの中からその化粧箱に入った新品のマスクを見つけたそうです。

奥様は引き取ってくださいと言うので、そのご婦人が他の社員には内緒でこっそり持ち帰ってきていて、会社のロッカーの中に隠していたそうなんです・・・。

 

それが今私の手元にある、日本最後の・・・いや世界最後の新品の旭面なのです・・・。

 

本文でも説明していますが、旭面というのは沖縄に渡ってきてから、こちらでいつしか勝手にそう呼ばれ根付いてしまった呼び名で、本来は考案された浅利熊記氏の名前から取って、本土各地では当時からアサリ式マスクというのが正式の名前として使われていました。

 

しかし、その後会社の吸収や合併や譲渡など、法的にややこしい手続きなどもあったのかもしれません・・・、その最後のマスクは結果的に買い取るという形で私が引き取ったのですが、その会社からの領収書の名目には「並型マスク」という商品名での商品代となっていました・・・。

 

その会社は最後生産をやめる直前まで旭面(アサリ式マスク)を販売していたはずなのに、アサリ式とは呼ばず並型マスクとして販売していたようでした・・・。

 

そこには大人の事情などがあったのかもしれません・・・。

 

しかし、そのご婦人が故社長の自宅から遺品整理で見つけ持ち帰ってきて、そして結果的に私が買い取ったその旭面の化粧箱の裏には、なんと「アサリ式」という直筆でのメモが走り書きされていたのです・・・。

 

元々旭面を考案した浅利氏と一緒にこの潜水マスクを作って販売して、戦前戦後と激動の時代を走ってきた故社長は、時代と事情が変わって表向きには並型マスクと呼ばざるを得なかったのかもしれませんが、自宅に持って帰ってきていた最後のそれには、隅っこにひっそりと「アサリ式」と書き残していた事実に、私はその心情が大いに理解できるだけに胸が熱くなりました・・・。

 

実はこんな隠れたエピソードもあり、私が旭面の復刻製作を改めて誓う経緯の一つでもあったのです・・・。