古代の裸麦に出会うまで③

 

 

平家祭りはちょうど麦をまく季節。帰ってからちょうど借りたばかりの畑にまきました。

 

 

 

わずかな量ですので一年目は種を増やす程度の量にしかなりません。

これでは１年何もできないので、最初の年は四国の改良品種であるマンネンボシという麦の種を購入してまくことにしました。

 

麦はすくすくと伸びていきました。しばらくして御礼の手紙を送ります。祭りの時はお礼どころか自己紹介すら満足にできなかったので、宮崎に来て農業をはじめるまでの経緯など…いろいろ書いたと思います。

 

 

 

すぐにおばあちゃんから届いた返信。そこには麦の話だけでなく、若い頃は出稼ぎに出ていたことなど、おばあちゃんの半生が綴ってありました。途中「麦はどうね」と電話をかけてくれたこともあり、気にかけてくださっていることがありがたかったです。

 

初夏の頃、麦の収穫を前にもう一度椎葉にお礼に行くことに。宮崎市から車で3時間以上かかる山奥です。

 

GoogleMapで住所を入力するのですが地図に表示されず・・・何度か電話をして道を聞きましたが「こんな山奥までこんでいいが」と何度も迷惑そうに言われました。

 

椎葉の役場があるところから道ゆく人に道を聞きながら、車でさらに山奥へ1時間ほど。不思議とおばあちゃんの名前を言うと誰もが道案内をしてくれます。3〜4人に道を聞いてようやくたどり着いたのは、もうGoogleMapに道が表示されていない林道の入り口のようなところ。

 

子犬が出迎えてくれました。ここ、かな・・？

「こんにちわ」と大声で何度か挨拶をすると、「きなすった？」とかすかな声が崖の上から聞こえて、おばあちゃんが降りてきました。

 

 

もってきたお礼を渡すと「こんな山奥までようきなすったなぁ、お茶ぐらい飲んでいきない」とおうちにあげていただきます。

 

電話で「もうこんでいい」と少し迷惑そうに言われていたので、早く帰ろうと思いながら…

 

お茶を飲んでいると「ウド食べるけ？」と山菜のウドの刺身を出してくださいました。それを食べ終わる頃にはよもぎ餅、またそれを食べ終わるころには猪肉・・・と、次から次へ出てきます。

 

おばあちゃん、用意してくれてたんだ・・・途中からは思いっきり甘えることにしました。おいしいおいしいと食べるのでこたつの向こうでおばあちゃんも嬉しそう。

 

途中、川から帰ってきたかっこいい旦那さん。椎葉の男は嫁をつかまえるのがうまい、というような笑い話をした記憶があります。楽しい再会のあと、写真を撮って宮崎に帰りました。

 

おばあちゃんの麦は四国の改良品種と比べると穂が小さくてバラバラ。工業製品のようにきれいに生えそろう大粒の改良品種とは対照的に、個性豊かな小さな麦です。

 

 

しっかり収穫できた貴重な麦は１年間大切に保存しておき、さらに一年後から本格的にとれるようになります。

 

 

今みなさんのもとにお届けしている麦も、おばあちゃんが最初にくれた一袋から生まれました。

 

長い年月、様々な人の手を伝いつながっている貴重なもの、私も絶やすことなく次の世代へ繋いでいければと思います。