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jean1949paul

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2021年04月23日 08:00

(上)の抜粋。その38。「行方不明」

 メールが来ないのは携帯が砂まみれになったから。

    パソコンが銃弾で打ち抜かれたから。

    一〇日が経っても最初の近況報告以降の手紙が来ないのは手紙を送れない情況が続いていることになる。

    わたしはザワつき始めた。背筋がザワついている。

 胸の奥深い処に塊が。

    落ち着かない。

 思い余って支社長にニックの東京の連絡先を尋ねた。

 わたしの深刻な表情を見つめて「どうしたんだ」と支社長。

 恥ずかしかったけれどニックからの手紙を差し出した。

 乳飲み子と幼児二人と母を守り、引き連れてトルコ国境までの逃避行。地図を調べるとマンビシ村からトルコ国境までは約百キロ。大人だと三日の距離。四人の家族には果てしなく遠い。幼児の歩きは一日五キロが限界。彼は自分のリュックを前に吊るし、歩き疲れた子供を代わる代わる背負っての歩き。片手には母の大きなバッグ。母はリュックを背負い乳飲み子を胸に吊り下げ、子供の手を引いている。国境に着いたとしてトルコ国内に入れるかは分からない。

 彼が手紙を投函してから二週間が経った。この間にゲリラに襲われたり、戦闘に巻き込まれないとの保障はない。子供達が何時も元気とは限らない。今までの逃避行で四人とも相当参っている。特に乳飲み子の命は危い。何かしらの異変が起こっても不思議ではない。何もなく、順調に国境を越えられると考える方が不思議。

 シリアは暑い。砂地からの照り返しが強い。 

 支社長から教えられたのはカメラマンの東京の住所と固定電話とFax番号。思った通りの独り暮らし。支社長は東京本社にも問い合わせてくれた。ニックを紹介してくれた出版社が判明。駄目元で自宅と出版社に問い合わせた。   

 駄目元はやはりダメ。自宅からは何ら応答なし。出版社からは「もう一ケ月前にシリアに行くと言ったきり。沢田氏の所在が分かりましたら教えて欲しい」と言われる始末。                                        

 予測通りの手掛かり無し。それでも思案を続けているとトルコの日本大使館に紹介を思いついた。入国しているなら何らかの情報が大使館に寄せられる。早速、大使館に紹介メールを送った。しかし返答が来ない。こうしている間に一週間が過ぎた。消息を知らせる手紙が届いてから十六日目の朝。待ちに待った大使館からの返答。

 

ー紹介を求められた沢田研一氏がトルコに入国したとの記録はありません。当大使館の調べではマンビシ村からの避難民は現在、キリスのキャンプに滞在しています。此処でトルコ政府による難民認定を受けています。認定を受けなければトルコに入国できません。避難民の中に日本国のパスポートを所持して日本人が居るならばその者は入国できます。そして当大使館に連絡が入ります。避難民の数が多くトルコ政府も難民認定に苦慮しています。テロ組織の者たちが紛れ込んでいる可能性があるので…。当大使館が沢田研一氏の所在を把握した際には連絡させて頂きますー

 

 わたしは御礼の返信を送るのがやっと。

 わたしは待つ他ない。ただ待っているのは辛い。わたしの願いはひとつだけ。全員無事にシリアから脱出して欲しい。

    ニックが遠のいてゆく。何らかの手掛かりが欲しい。二十一世紀になっても連絡が付かない、所在を掴めない処が地球上に在る。その多くは戦闘地域。彼と再会できたなら彼のスマートフォンのGPSを作動させてわたしに繋げてもらう。それから携帯を落とさぬよう強力なストラップを首に付ける。シリア行きの手紙が届いてから既に四週間。どう、あがいても、これ以上の情報は得られない。残されているのは、ニックの写真を携え、トルコのキリスのキャンプに出かけて探す。これは幾ら何でも無茶で無謀。周囲の人達に限りない心配と迷惑をかけてしまう。探しに行くとしてもトルコとシリアの国境沿いは危険。

日本人はゲリラの格好な標的。

 わたしは辛さと祈りを胸の奥底に仕舞い込んで何時もと同じように仕事に励んでいる。でも支社長は気づいている。わたしの胸の裡を。                       

 ひと月が経った。

 トルコの日本大使館からメールが寄せられた。

 

ー沢田研一氏は今日までトルコに入国しておりません。難民認定を受けトルコに入国したマンビシ村からの避難民の人からの情報では四人の家族は認定を受けられなかったようです。日本人と家族は「アララハから船に乗る」と言っていました。これは一昨日にもたらされた未確認情報ですが連絡致しましたー

 

 トルコの日本大使館は避難民の中に日本人が居ると聞いて情報収集に力を注いだ。それが痛いほど分かる内容だった。直ぐさま『引き続きお願いします』のメールを返信。

    アララハから船に乗るとはエーゲ海を渡りギリシャに向かう。ギリシャが駄目ならイタリア。彼はサバイバル術を知っている。大丈夫。生きている。家族は大丈夫とは云えない。幾度も迎えたに違いない家族の生存の危機的情況が今も続いている。

 難民が乗る船は船らしい船では無い。船外機付きの大型のゴムボートとか、朽ちかけた漁船の類。よもや海賊が現れるとは思えないけれどエーゲ海を渡れる船なのだろうか。海が荒れるとひとたまりもない船のような気がする。船ではなく舟かも。船でも舟でも陸地に辿り着くと海に追い返されない。人道上の理由で一時保護される。陸地に上がったなら連絡が来る。こう思えたのが唯一の朗報。

 支社長に大使館からのメールを伝えた。

「生きていると互いに信じて待ちましょう」

 

 

 

 

 

(上)の抜粋。その37。「シリアからの手紙」(上)の抜粋。その39。「行方不明のまま」
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