子ども達の健康な未来を支えるラオ・フレンズ小児病院の専門外来継続を

ラオ・フレンズ小児病院（LFHC）の専門外来は現時点で5つあります。

サラセミア、障がい児、骨疾患、腎疾患、そして、てんかんです。どれもラオスでは、頻繁にみられ、また管理が難しい疾患です。今日は、この5つのクリニックの「障がい児」と「てんかん」の2つを担当しているマイロー医師について、ご紹介したいと思います。

彼は、2013年に中国の医学大学を卒業し、ラオスへ帰国後は医師としての職場が見つからず中国の企業で通訳をしていたそうです。その後、すでにLFHCで働いていたトンハー医師から誘われ、当院で働くようになったのが、2015年11月でした。彼のまじめでしっかりと患者さんと向き合う姿勢は当初から高く評価されていました。そして、2020年から首都のビエンチャンへ小児専門医のための研修医コースに参加し、2023年11月にLFHCへ戻ってきてすぐに「障がい児クリニック」と「てんかんクリニック」の担当となりました。

この専門外来の担当に興味を持ったのには、彼のお父さんの病気がきっかけだったそうです。1年半ほど前に、彼のお父さんは、神経嚢虫症 (Neurocysticercosis)という病気であることが分かりました。この病気は、寄生虫が脳へ寄生し、てんかん発作などを起こす病気です。てんかん発作はだいぶ落ち着いたとはいえ、身体の障がいがあり、自分では生活ができない状態だそうです。つらい経験ではありますが、こうしたことが彼にてんかんの機序や管理について色々考えることにつながっていると話してくれました。

マイロー医師が専門外来で患者さんを診る中で感じているのが、早期発見早期介入ということだそうです。痙攣があり、すぐにクリニックで定期的に診療をしながら障がい児クリニックで成長、発達の経過を観察することで、弊害を最小限に抑えることを可能とします。しかし、何度もてんかん発作を繰り返すことを大きくなるまで放置しておくことで、すでに身体や脳への影響が大きく、生活への支障も大きくなります。

マイロー医師はモン族です。ラオスの中には50種類ほどの少数民族があり、モン族はその一つです。【The Spirit Catches You and You Fall Down　（精霊に捕まって倒れる-医療者とモン族の患者、二つの文化の衝突）】という本がありますが、これは、モン族がてんかんのことを表現した言葉だそうです。マイロー医師は、この表現のように、てんかん発作に対して人々は精霊が悪さをしていると信じ、祈祷師にお祈りをしてもらうことを繰り返している人がたくさんいるので、地道に説明をして信じてもらえるようにするしかないと言っていました。

違う文化において信じることが違うことは当然あります。そして、それを尊重しながらも、西洋の医療からの理解、治療、経過についてもあきらめずに伝え、実際に回復することを経験することで人々の行動も変わるのではないかと思います。そうした意味でも、この専門外来はとても大きな意義があると実感しました。