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発災から1ヵ月。被災地のいまを現地からレポート
4月3日、マグニチュード7.2の大規模地震に見舞われた台湾花蓮市。その後も余震は続き、23日にはマグニチュード6を超える余震が連続的に発生し、被害は拡大しています。いま、台湾の被災地はどのような状況なのか。発災から1ヵ月、現地入りしたカメラマンの映像とともに、ピースウィンズの支援と被災地のいまをお伝えします。
余震を受け「入り混じる」支援のレベル、私たちにできることは?
「コウさん(通訳)!この道って前に休憩で寄ったお店のあるところだよね!?」
封鎖された道を覆う瓦礫の山と大きな工事車両。スタッフの視線の先には、倒壊した建物の解体作業が行われていました。4月3日の発災直後から現地入りしているスタッフは、およそ1カ月前の活動中にこの通りのあるお店で小籠包を食べたそうで、被害のあった建物が余震によりさらに倒壊。今では、繁華街の一角が完全に通行できない状態になっていました。
余震の影響だけとは断言できないものの、以前のデータと比較して、「赤判定(構造上危険なため立ち退きが必要)」や「黄色判定(被害はあるが構造上問題はないため居住可能)」の建物は明らかに増えています。
仮に黄色判定でも、余震を恐れて家を離れる人も大勢います。政府が管理する避難所は、発災から数日で早々に閉鎖され、立ち退いた避難者は今どこにいるのか、地元の人ですら分からないそうです。
賃貸を借りてすでに引っ越していたり、親族・友人宅に身を寄せているとのことですが、避難者とそうでない人の区別はしにくく、支援が必要な人々が非常に見えづらい状況が続いています。
「被災者は長期的に避難できる場所に移って、むしろ支援物資を取りに来る人は増えてきている」
そう語るのは、花蓮市で物資が集積されている倉庫を管理する男性。これまでの仮住まいとは違い、料理できる環境や物資を置いておける場所に落ち着いた避難者は、お米や調理油のような食料、介護用オムツなどの日常的な消耗品を求めるようになってきたと教えてくれました。
一方で、今回の余震で建物に住めなくなり、立ち退きを強いられた被災者は、発災直後と同じような生活の支えが必要な場合もあります。発災から1カ月が経ち、第二波ともいえるまた別のニーズの波がきているとスタッフはいいます。
ニーズが混在しているからこそ、支援者側が決め打ちで大規模に物資を入れるのではなく、被災者が自由に必要なものを選べるような支援を考えていかなければなりません。より状況を細かく的確に把握し、その仕組みを考えていくことが今後の支援のポイントになりそうです。
「ありがとう」日本語の飛び交う被災建物でお弁当がつなぐ “元”お隣さんの絆
台湾地震で最も大きな被害を受けた花蓮市。130世帯が住んでいたという集合住宅の壁面は大きくひび割れ、風の強かった4月30日には現地視察中に外壁の一部が落ちてくるなど危険な状態です。
この日、ニーズ調査を行った住宅は一見住めないようにも見えますが、建物判定は”黄色”。すなわち“構造上は問題ないため被害はあるものの居住可能”という判定です。しかし、水道管は一部損傷しており、エレベーターも故障。さらには23日の大きな余震もあり、今も住んでいるのはわずか3世帯のみとのお話でした。
ピースウィンズは、この建物の住民や、周辺に避難している被災者を対象にお弁当の支援を続けています。
このお弁当支援は、ただの食料配布ではありません。
観光都市として栄えた花蓮市ですが、連休前に発生したこの震災を受けて観光客は激減。現在多くの人々が収入減少に喘いでいます。その業界のひとつが “お弁当屋さん”です。
花蓮が誇る台湾随一の景勝地 “太魯閣(タロコ)峡谷” に店を構えるあるお店では「太魯閣の観光関係者は、全員失業したようなものだ」と嘆いていました。そこで、地元の弁当業者に被災者用のお弁当を発注、避難先で料理のできない被災者などに提供することで、食事に困っている被災者と同時に地元業者も応援することがこの支援の狙いです。
「私も被災者のために毎回メニューを変えたりして工夫していますよ。それぞれができることをしないとね」と、弁当配達にきた店員は、少しはにかみながらそう話してくれました。
また、今回、お弁当を受け取りにきた被災者にお話を聞くと、少しずつ二次避難先の目処がついたり政府による補助金や仮設住宅の計画が進んでいることなどが判明。そして、こうした情報を被災者同士で共有する場としても、お弁当支援が役立っていると教えてくれました。
現在、住民たちは散り散りになって避難しています。元々お隣同士だった同じ集合住宅の住民たちは、このお弁当支援をきっかけに再度集まり、これからの生活や支援の受け方について情報をやりとりし、生活を立て直す話し合いを進めているそうです。
安定した二次避難先が見つかり、当面の避難生活の目処が立てば、いつまでも弁当支援に頼る必要はなくなるかもしれません。それでも震災で離れ離れになってしまった住民同士が集まって未来に向けた話し合いをする場がつくれるのであれば、限定的なお弁当支援は今後も意味があるかもしれないと、私たちは考えています。
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