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「防衛技術博物館を創る会」のマンスリーサポーターを募集します!
靖国神社「遊就館」で戦車ジャッキの計測作業を実施しました
さて、本日の活動報告は、日本陸軍の戦車用10トンジャッキについてです。
戦後モノ不足であえぐ我が国では、トラックジャッキとしての実用性と、文字通り「金目のモノ」として鉄くず回収業者が大喜びする大きさだったこともあり、本当に現存が確認されない装備品の一つです。
一昨年イギリスより里帰りを果した九五式軽戦車の搭載ジャッキも同形状の戦後製がトラックジャッキが搭載されております。こちらも数年間掛けて、英国人先オーナーのオリバー氏が文字通り世界中を探したのですが見つかりませんでした。当方が日本国内を探し回ったのは言うまでもありませんが、出てくるのは戦後製造の類似品ばかりで、オリジナルには辿り着けておりません。
そこで、自分の知る限り唯一のオリジナル現存品を所有する靖国神社「遊就館」様にお願いして複製品製造のために三次元レーザー計測を実施しました。計測作業は平成の大改修を実施された永遠ボディ様のご紹介で、神奈川県の日の本工業株式会社様にお願いしました。
このジャッキはサイパンから帰還した戦車第九連隊第五中隊所属の「みたて」号に搭載されていたものではありません。戦闘による損傷と、戦後の土中投棄されていた関係で、社外装備品はフェンダーごと失われていたからです。
では、このジャッキはどこから来たのか?と言えば、結論は「良く判らない」ということになります。昭和五〇年にサイパンから下田四郎氏の手により靖国神社に帰還を果した「みたて」号はしばらくは屋外展示されていましたが、遊就館の内部展示となる際に戦車保存会(陸軍戦車OB有志の会)により外観の修復工事が行われました(昭和60年の大改修)。この際に、戦車保存会メンバーの誰かが、このジャッキを寄贈されたようなのです。伝聞形で恐縮ですが、メンバーが既に鬼籍に入られご遺族や遊就館関係者からの聞き取りですので真偽のほどを確かめる方法もございません。
とはいえ、自分が見聞きした限り、当時モノのジャッキは靖国神社「遊就館」のこの一個のみと思われます。そうした理由で、今回も無理をお願いして現物の三次元計測を実施した次第です。将来博物館展示の際に「九五式軽戦車4335号車」の搭載ジャッキが、今回計測したデータから複製された実物と寸分変わらない搭載品であれば、より当時の雰囲気を感じて頂けると考えております。
もちろん、里帰りが想定される「九七式中戦車」に搭載することも踏まえて、形状だけでも正確な複製品を量産して、将来に備えたいと考えています。こんな地道な活動が出来るのも、マンスリーサポーター様のご支援のお陰であります。
現在支援募集中の九五式軽戦車改造ブルドーザーへのご支援も重ねてお願い致します。
実行者:小林 雅彦