エクソソームの発見

今回のプロジェクトのkeyでもあるエクソソームは、細胞から放出される小胞のひとつで、大きさは直径100ナノメートル、分かりやすく言うと髪の毛1本の80分の1の大きさです。この小さなカプセルの中に、もとの細胞に由来する遺伝情報（RNAやタンパク質）などを詰め込んで血液中に放出されます。その数は、血液1mlの中に50〜100億個と言われています。そしてエクソソームは、血液のみならず、尿や様々な体液、母乳にも含まれ、さらには人間にとどまらず植物も分泌することがわかっています。

エクソソームが「メッセージカプセル」であると初めて論文で報告されたのは2007年のことです。この重要な報告以降、エクソソームは大いに注目され様々な研究が進んでいます。

では、なぜこのカプセルの発見がそんなに重要だったのでしょうか？

人間の体はそれぞれの臓器が互いに連携してよりよい状態を保っています。例えばサウナや温泉で体が暑くなると、汗をかいて温度を調節しようとします。こうした連携は、これまではすべて脳を介して行われると考えられていました。しかし、脳を介さずとも細胞たちはエクソソームを使って直接コミュニケーションを取り、体を正常な状態に保っているのです。つまり、これまで私達が常識だと思っていた「体の司令系統の仕組み」の考え方を根本から覆したのです。

がん、動脈硬化、肺疾患、糖尿病、アルツハイマー病、老化（美容）など、多くの分野でエクソソームの研究が進んでいます。この小さなカプセルの役割を解明することで、病気に苦しむ多くの方々に希望が見いだせるよう、世界中の研究者が奮闘しています。