【マスーディ館長とカブール博物館のスタッフ・2002年撮影】

 

     【カーシャパ兄弟の仏礼拝図・ショトラク出土・3世紀頃】

 

 バーミヤンの大仏爆破や天井壁画の破壊は衝撃でしたが、長く続いた内戦の中で、それ以外にもアフガニスタンの文化財は、さまざまな悲劇に見舞われています。
 ソ連軍撤退の後、アフガニスタン人同士の内戦が始まった1992年から、重要な文化遺産を収蔵する国立カブール博物館周辺は、激戦場になります。1993年5月にはロケット弾が博物館の屋根を直撃、多くの作品が破壊されました。そして、93年・94年・95年と略奪が相次ぎます。

 マスーディ館長以下博物館のスタッフは、所蔵品を護ろうと奔走しますが、砲撃による破壊と略奪で、70%が失われたともいいます。
 その時に盗まれた国宝級の文化財の一つが、写真の「カーシャパ兄弟の仏礼拝図」です。侵入者は夜トラックでやってきて、この片岩で出来た重い作品を留め金から外し、マットレスに包んで引きずっていったそうです。
 略奪された「カーシャパ兄弟の仏礼拝図」は、その後、どうやって国外に持ち出され、どんな経路を辿ったのか定かではありませんが、遠く海を渡って、日本に持ち込まれ、文化財難民として保護されたのです。

 この「カーシャパ兄弟の仏礼拝図」をはじめ、苦難の日々を経験してきた102点のアフガニスタン流出文化財は、2016年4月、藝大美術館(陳列館)と東京国立博物館で展示され、この展覧会を最後にアフガニスタン政府に返還されます。その後、アフガニスタン文化遺産のすばらしさとその保護の重要性を訴えて、世界各地で開かれる展覧会を巡回して、アフガニスタンに平和が戻ったとき、カブール博物館に還る予定になっています。

 カブール博物館を襲った数々の悲劇と、それを目の当たりにした博物館のスタッフたちの身を切られるような哀しみ・・・。

 アフガニスタン文化財の流転の日々を重ねながら、これらの作品を見ていただければ、また違った感慨が湧いてくるのではないでしょうか?

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