「図書館×遠隔地サービス」     
下吹越 かおる

 

「ぼくのブックウーマン」という1冊の絵本がある。2010年4月初版された本である。さ・え・ら書房から発行されている本でヘザー・ヘンソンというアメリカの作家の作品である。

 

内容はこうだ。 1930年代の米国に実在した「行動する女性図書館員」をモデルにした物語で時の大統領ルーズベルトは雇用促進計画の一環として、学校も図書館もない遠隔地に本を届ける「荷馬図書館計画」を始めたのである。馬やラバに乗って2週間ごと、ブックウーマンたちは雨の日も雪の日も険しい山道を登って本を届けた。

 

読み書きを知らなかった少年は、山の民ですら一歩も外に出られない吹雪の中をやって来た女性の後姿に突き動かされて、生まれて初めて本を手にする。人里離れた所に住む子どもたちに本を届けるブックウーマンが本を届け続けることにより、本に興味がなかった子どもも次第に興味を持ち読書を始める。

 

雨や雪の日も信念を持って、馬に乗って、山を登って、本を届ける女性の話である。

 

平成17年、わたしたちのまちから移動図書館号が姿を消した。今から12年前のことである。平成17年以降に生まれた子どもたちが12歳。小学校6年生になろうとする時の流れがそこにあった。この子たちには、移動図書館車の恩恵は受けられていない。

 

私たちが図書館を委託して10年。ここに手つかずだったことへの悔いは大きい。何もしてこなかったわけではない。

 

でも結果、移動図書館号がまちに繰り出されて行かなかったことは何もしなかったとと同じことだと思っている。

 

指定管理者とはいえ私はこのまちの図書館の長である。このことは慚愧の念に堪えない。

 

移動図書館号の古い歴史は1948年7月に高知県立図書館に始まり、翌年1949年3月に鹿児島県立図書館がジープ型トラックを購入し、運営を開始したとある。

 

当時の鹿児島県立図書館の館長は久保田彦穂氏(椋鳩十氏)で、1955年には、移動図書館車は「すばる」と命名され鹿児島県内を巡回した。そんな当時のビデオも何度も観せていただいた。

 

1949年9月には、千葉県立図書館の「ひかり号」が巡回を始め移動図書館ブームの先駆的な事例になった。「ひかり号」は占領軍から払い下げられたトラックの改造車だったという。

 

当時の職員は当時の館長から次のような言葉を伝えられている。

 

「君 図書館の新しい仕事を手伝ってくれないか。(略)千葉市に県立図書館はあるけれども、君達が利用するには千葉市までわざわざ出掛けてこなければならない。同じ税金を納めていながら誠に不都合だ。千葉県のどんな辺鄙な処に住んでいても千葉市民と同じように図書が利用できる様、自動車で運んで行く計画だ。これを文化の水平運動とゆうんだよ。どうかね、移動図書館の運営に君の運転免許が役に立たないか。」と。

 

当時の移動図書館号は、それまで閲覧や保存中心だった公共図書館の姿勢を公開貸出という形に初めて替えた。その後1965年には東京都の日野市立図書館が「ひまわり号」を排出し、そのブームは全国を駆けぬけた。しかし近年は分館の新設や財政上の都合などから全国的に縮小・廃止の傾向にある。

 

1995年に2,264館あった公共図書館数が20年後の2015年には3,241館あり、約1.43倍の増加である。ある程度の図書館が建てられると対象となる巡回ステーションが減少し、貸出冊数は低下した。そして排気ガス規制の変更や財政改革の煽りを受けた。

 

それに伴い移動図書館車は最も多かった1997年には697台あった台数が2015年には545台となっている。

 

「文化の朝は移動図書館ひかりから」の著者はこのことについてこう述べている。

 

「移動図書館の役割は、固定館がある程度建設されたのち、それでも残る空白地域のサービスに並んで、社会的、環境的に不利益を被っていて、図書館利用から疎外されている人々のところへ出かけて行く活動(アウトリーチサービス)することにあるのではないか。不利益を被っていて図書館利用から疎外されている人々のところに出向く活動は、誰にでも図書館利用の機会を保障するという公共図書館の根本の在り方につながっており、移動図書館がアウトリーチ・サービスに取り組むことは、非常に重要である。(中略)第三の場、サードプレイスとしての存在である」と。

 

私は今、今一度、このまちに移動図書館車を走らせようとしている。それは空白の12年間に対しての猛省からである。

 

テーマは「指宿から全国へ!本のある空間を届けるブックカフェプロジェクト」。

 

https://readyfor.jp/projects/ibusuki-bookcafe

 

平成29年6月7日現在、240人の支援者から3,025,000円という金額を託されている。このプロジェクトはAll or nothing形式で、4月19日から開始し7月18日(火)午後11:00までに、7,500,000円以上集まった場合に成立となる。もし1円でも不足するならこれまで集まった金額はすべて託してくださった方々の元へ返る仕組みである。

 

残り日数は40日である。一世一代の大博打である。

 

5月半ば、誠にお天気の良き春の日、私は、カメラマンに同行してもらい、ブックトラック(移動式本棚)を自家用車に積み込み池田保育園と言って図書館から遠い地域の子ども達へ本を届けた。車から本を下ろし、空のブックトラックを押し出し園庭に入った。子ども達が一人二人、三人四人と近づいてきてアッと言う間にブックトラックごと囲まれた。


先生方が敷いてくれたブルーシートが1枚では足りず、二枚になった。それでも足りず、三枚になった。あちこちで一人読みを始める姿、年長さんが自分より年下の子どもに読んでいる姿。先生たちの膝に抱かれ耳元で声が流れてくる至福に酔いしれている子どもと、園庭が読書会一色になった。それは感動する場面だった。帰り際、先生や子どもたちが。


「必ずブックカフェ号でここに帰ってきてくださいね」と言ってくれた。

 

私は、このまちのブックウーマンになれないかなぁ・・・と今思っている。
鹿児島県の隅々にまで文化の風を吹きわたらせたいと・・・。きっと待っている人がいる。子どもがいる。

 

 

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「MM小学校教師用ニュースマガジン」(2223)に寄稿した文章から抜粋しました。

 

長文ですがお読みいただけると嬉しいです。

 

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目標金額750万円を目指してクラウドファンディングに挑戦中です。ご支援、シェアのご協力をいただけたら幸いです。
「指宿から全国へ!すべての人に本のある空間を届けるブックカフェプロジェクト」
https://readyfor.jp/projects/ibusuki-bookcafe