紛争や政情不安…困難に直面する人々に未来を変える学びの力を届けたい
寄付総額
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- 2022年10月31日
1980年代~・JVCの「学び」の活動の歴史・源流をたどって
こんにちは。クラウドファンディングチームです。今回は、JVCの元代表理事で現顧問の熊岡路矢さんからいただいた応援のコメントをご紹介します。1980年代、JVCがタイで発足した当初からの歴史を知る熊岡さんの貴重なメッセージです。
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私が長期に活動してきた、タイ、カンボジア、ベトナム、ラオス、また短期集中・訪問型で働いた、西アジア(=中東)、エチオピア、ソマリア、南アフリカなどは、年代は異なりますが、長期の戦争や紛争、独裁などの問題があり、並行して自然災害も多い地域でした。
今回のクラウドファンディングのテーマである「学び」。「学ぶ」ということは、一部の人にとって知的な営為だと思います。他方、多くの人にとっては、結果的には様々な意味と効果があるにしても、自分の経験からも直接的には、働くこと=稼ぐこと=個人であれ家庭であれ、生活を保つというギリギリの部分に繋がり、その目的・意図のために学ぶ、ということになるのだろうと思います。
■1980年代初期
1980年代初期、JVCはタイ政府とUNHCR管理下の難民キャンプで、非常に初歩的な技能訓練(バイク修理、エンジン修理、その他)を教えていました。
国連各機関は、「より少ない基金で、より多くの受益者」が生まれるようなプログラムを主導します。また難民を受け入れている国の政府(例:タイ政府)も、「自国民をさておいて」他国から逃避してきた外国人(難民)に、資金や技術・教育活動等が集中・優先することは認めませんでした。
はじめは不合理だと思っていましたが、実際に複数の難民キャンプ(ラオス難民、カンボジア難民、山岳民族の難民、合計5のキャンプ)で技術訓練の活動を行う中で、国連諸機関の援助方針も、また政府の、難民キャンプでの活動と同じ位、地域の地元民への支援を篤くしてほしいという意図と理由を理解するようになりました。
1981年、カオ・イ・ダン(カンボジア)難民キャンプで、近隣の森林で集めた竹や萱などで、カンボジア人と共に建設するところから始めた「JVC”平和“技術学校」は、スタッフとして集まった難民の熱意とともに創造的な技術訓練の一例でした。
教員の一部は日本人とタイ人スタッフでしたが、カンボジアの教員・技術員が若い学生に教え、彼らが、また次世代の青少年に教えるというサイクルも印象深いものでした。またカンボジアの農民は、なんでもできるという意味で、「お百姓さん」でした。
農業はもとより、家を建て、機械を修理し、手工芸も行いました。この活動は、カンボジアの総選挙準備のためにキャンプが終止する1991年まで続きました。
1983年、私が初めて訪れたカンボジアでは、自動車メカニックたちが、壊れたトラックなど大型車両を、屋根も床もない原っぱ状態の青天井の場所で、岩や石をジャッキ、「馬」代わりにして車体を上げてその下で修理の活動をしていました。命がけの作業です。当時はまだカンボジアは内戦中(1979年~1991年)だったので、修理した大型車両を、港町=シハヌークビルなどに運ぶ数百キロの旅程で、銃撃を受けて怪我をしたり、爆弾で道路が破壊され、殺傷され、あるいは予定通りに往復が出来なかった事件も度々ありました。
1985年、まだ世界から孤立していたカンボジア政府と「技術学校」開設の契約を交わしましたが、「技術習得」以前の、命や身体の安全が危うい状態はまだ続いていました。晴れれば炎天下、35度以上になる気温と日光にさらされ、また雨季には、大雨、スコールにさらされる状況も変わっていませんでした。
そんな中で、外国からの資材輸入や、徐々に改善されるしごと環境の中で、より安全に、より効果的に働けるようになったメカニックの人々(技術教員、研修学生、技術労働者)は、同時に安定した給与が獲得できることを喜んでいました。しごとの安全と、生活の安定は一般人にはとても大事なものです。
はじめの約10年(80年代半ばから90年代半ば位まで)は、JVCなど外部からの支援が大きかったとは思いますが、運営、技術の実質ふくめ当然にも主体は100%カンボジア人側に移り、現在も技術・職業訓練大学校として、1987年以来、今日2022年、35年の自立の歴史を自ら更に伸ばしています。
一般的に、日本政府や国連等が行う大型援助案件などでは、「援助」が終わってしばらくすると、運営・維持など、あるいは研修・訓練的な事業が崩れてなくなってしまうことがあります。政府の偉い人によって、土地、建物、機材が売り飛ばされることもあります。
また現地でのニーズが本当にはなかったり、また援助する側の思いや意図が先行し、「援助を受ける側」の主体性がなかったりする場合も多いわけです。JVCカンボジア「技術学校」の事例は、少ない事例かも知れません。
■自分自身のこと
私自身は、1970年、大学を自主卒業し(退学し)、自動車整備士/修理工の見習いとなりました。技術を身に着けようと学び働きました。先輩には、航空機を操縦する方ではなく修理する方にまわったので、結果的に命が助かった特攻隊志願者(茨城県霞ヶ浦海軍航空隊所属)や戦争体験者もいました。日本も、戦争と戦後直後の苦難がまだ残っている時でした。これらの世代の職人さんは、拳骨やハンマーで殴られながら、技術を覚えたということでした。
これらの親方、諸大先輩は、一般的な意味での「勉強」は苦手で、戦後の技術技能制度の資格はとれず、腕(=技術・技能)はお粗末な私たちの方が資格はとれてしまうという馬鹿馬鹿しい逆転現象もありましたが、実際の技術ではまったくかないませんでした。エンジン、ミッション(変換器)その他を稼働させ、すこし音を聞いただけで、微細な故障個所が分かり、的確に直す場面に出会うというのはその後もそうそうない貴重な経験でした。
■酷熱のスーダン、南スーダンにて
今回のクラウドファンディングの焦点のひとつであるスーダンには、調査・計画段階で、一度行きました。2005年11月、ジュネーブで、国連、UNHCRの職員・友人から、「ダルフールでの紛争が非常にこじれ、2003年のイラク同様、国連各機関からの職員撤退もありうる」などの内部情報をもらいました。当時、独裁色の強いオマル・アル=バシール政権下の首都「酷熱の」ハルツームに到着し、担当スタッフの岩間邦夫さんと合流しました。
ダルフール(その時点で、「21世紀、最悪の人道危機」の地域)ではアラブ系、非アラブ系の対立が激化し、特にアラブ系民兵組織「ジャンジャウィード」による暴力が激しい時期でしたが、治安の理由でダルフール行きは許可が出ず、南部訪問に切り替えました。(当時南部スーダンは、スーダンの一部。2011年、独立)
南部に行く前に、UNHCRスーダンを訪問しました。タイ/インドシナで一緒に働いたことのある人が代表でした。UNHCR南スーダンに繋いでもらい、長時間のフライトで、南の中心地ジュバ(気温35度前後、雨量少な目)に到着し、住民組織、自治政府機関、国連「人道支援」各組織を訪問しました。
宿舎は長屋形式、国連PKO部隊と一緒のところで、バングラデシュの兵士とお隣でした。当時、スーダン中央との緊張関係のほかに、南部スーダン自体も、農業系民族と遊牧系民族の対立があり、また隣国ウガンダの「神の抵抗軍」の暴力から逃れてきた人々も数万人単位でいました。白ナイル川河畔に、難民キャンプが出来ていました。
現地調査では、自動車や機械修理を行っている、民間、半民間の工場、訓練所を3-4か所訪れて、聞き取りを行いました。1980年代の「ポル・ポト時代」直後のカンボジアほどではありませんでしたが、設備は悪く、多くは、土の上での修理・整備作業でした。働く人も複数の副業をしなければ食べていけないような状況でした。現地では、紛争の激化の先が読めないという難しさはありましたが、地元のメカニック希望者の熱意や可能性は感じ取ることが出来ました。
最終的に、自治政府およびUNHCR支部とつめて協議し、地元から要請のあった、技術訓練・職業訓練を実施する方向で、関係者との賛同が得られました。JVC活動のスーダン、南スーダンでの始まりの一場面だったと記憶します。
80年代、90年代、そして以後も、カンボジアはじめ東南アジア、パレスチナはじめ西アジア、ソマリア、エチオピア、南アフリカ、スーダンなどでの青少年の教育、技術訓練、広い意味での「学び」に応援して下さったことに心より感謝しつつ、どうぞ今回も、JVCの新しい挑戦にご支援を頂けるよう心からお願いいたします。
熊岡路矢(JVC顧問)
1947年生まれ。1980年、インドシナ難民救援活動を始め、JVC創設に参加。カンボジア代表、ベトナム代表、代表理事などをつとめる。東南アジアでの難民・緊急支援・開発活動、南アフリカ、エチオピア、パレスチナなどでの短期の人道支援にも従事。東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」客員教授、UNHCR駐日事務所アドバイザー、朝日新聞紙面審議委員などを歴任。『カンボジア最前線』(1993 岩波新書)、『戦争の現場で考えた空爆、占領、難民―カンボジア、ベトナムからイラクまで』(2014 彩流社)など著書多数。
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偉大な先輩方の活動の歴史に触れるたびに、背筋が伸びる思いです。引き続き、クラウドファンディングの応援どうぞよろしくお願いいたします。
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