10年ほど前、友人家族とホタルを見に行く時に兄を誘ったことがある。 

残念ながら数匹のホタルとしか会えなかったが、山奥に流れる真っ暗な河原に寝転がるとそこには満天の星空が広がっていた。みんなでその美しい星空を見ては星や星座の話をして盛り上がっている時、兄は突然全く関係のない?話をし始めた。 
 
兄とは初対面だった友人らもきょとんとしその場には微妙な空気も流れる。私は兄の話を遮るように、この人マイペースだからごめんねー、とか何とか言ってその場を取り繕った覚えがある。 

彼の発言はいつも何かの本の誰かのフレーズを突然説明もなく語り始めたような感じだった。それは幾重にも張り巡らされた考えの中の途中や、出口にある感情から浮かんできた言葉だったのかもしれない。しかし途中経過を聞かされていない私にはちんぷんかんぷんだ。時々、会話のやり取りが変だったし共感する力が欠けているのかなと思っていた。しかしそれは単なる私の思い違いだったことに亡くなってから気がついた。 

 

病で歩けなくなった兄は横浜から引き上げたたくさんのダンボールを結局1箱しか整理できず残りは実家の二階に積み上げられていた。彼の死後、滝尾さんを始めメンバーの皆さんによって開けられた箱の中身を見て驚いた(もちろん生前に兄から許可をもらっていたようだ)。本はもちろんのこと、数十冊にもわたるスケッチブックや日記帳、そして整えられた資料の数々。兄の書き残した言葉の数々やスケッチを見て、あの突拍子も無い言葉の数々はこれらの下地に支えられていたものだと確信した。 

そう、あの星空から一番たくさんのメッセージを受け取っていたのは彼だったのかもしれない。 

このプロジェクトを通じて、あの時遮ってしまった話の続きを聞けるのではないかと密かに思っている。 

最後に、このプロジェクトに賛同して下さるすべての皆様に心から感謝しています。忙しい中作業を続けてくださっているメンバーの方々、本当にありがとうございます。 
 
そして「危口統之に関する本」を熱く語ってくれた岡村滝尾さんとの時間は忘れられません。 
 
皆様本当にありがとうございます。 

 

木口裕香
 

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