僕は小学校に上がる前は病弱で、入退院を繰り返していたと母から聞きました。入院している最中に病気をもらって、退院が長引くということが一度や二度ではなかったと聞いています。


今ではすっかりと元気になり小学校以来、大きな病気や入院することはありませんでしたが、入院していた頃の記憶はうっすらと残っています。その記憶は何もすることが無くてぼぉっと天井を眺めている風景です。窓がある部屋はまだ空を眺める事が出来るのですが、窓が無くて白い天井を眺めている方が自分の記憶に残っています。


大人になり、自分が芸術やランドスケープデザインに携わるようになってからこうした病院での記憶というのは自分の中でずっと忘れ去られていました。2007年頃より大阪市立大学の山口先生からのお誘いを受けて病院内で色々と活動をするようになりましたが、入院患者さんの話を聞いているとその頃の記憶も蘇ってきたのを覚えています。

 

2010年に「霧はれて光きたる春」を大阪市立大学医学部付属病院で行って以来、大阪赤十字病院での取り組みを経て次回は大阪府下で3回目の取り組みになりますが、毎回人々が空を見上げている風景には僕自身が胸を打たれます。演出もタイミングや仕掛けも全て僕自身が取り組んでいるにも関わらず、始まって人々が窓辺にやって来て一緒に眺めているのを見ると、僕はこの風景に対して何も特権的な立場ではないのだといつも思います。僕自身もこれを眺めている多くの患者さんやお医者さんと何も変わらず、観客としてこの風景の前にたたずむ一人の人になっていることを感じます。


院内で辛い思い出過ごす患者さんや、毎日厳しい現実と向き合うお医者さんや看護師さんと僕が同じ目線になれるはずはありません。でも、このひとときだけは同じ目線で空を見上げていることを心からいつも感謝しています。

 

今回の取り組みでは社会化することをテーマにしています。いくつかのメディアの方々もプロセスをご一緒していますが、この取り組みを実現して行く所からこうして皆さまにご協力頂いていることを本当に感謝致します。皆さまの想いを受け止めて実現に向けて一つずつ進めて行きたいと思います。

一般社団法人 ブリコラージュ・ファウンデーション
代表理事 ハナムラチカヒロ

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