イタリアの救急車派遣団体アーカイブズ

　イタリアのフィレンツェには、民間の救急車派遣団体があります。「La Venerabile Arciconfraternita della Misericordia di Firenze」（長いので略してミゼリコルディア。「哀れみ・同情」という意味）というのだそうで、少し調べてみると、1244年に創設された古い団体で、ペストが流行した時代に病人を助けたり、貧しい死者を無料で埋葬するなどの活動に取り組み、現在も続いている病人搬送の慈善団体の中では最も古い団体だとか…。
　このミゼリコルディアのアーカイブズ施設を、「トスカーナ州文書・図書保護局」の副局長さんのご案内で視察に訪れたことがあります。
　アーカイブズ施設といっても決して大きなものではなく、１階で作業着のお兄さんたちが救急車出動の準備であわただしく動いている建物の２階にある小さな空間でした。四方を書棚が取り囲んでいて、冊子型のアーカイブズがびっしりと並べられています。ちらりと横に目をやると、17世紀の記録が置かれていました（イタリア語なので、16XXという数字しか読めませんでしたが…）。
　ここのアーキビストは２名の女性。このうちの１人が説明をしてくれたのですが、ミゼリコルディアの来歴から始まり、この団体の記録を守っているんだという自信に満ちあふれた表情で、熱っぽく、しかも延々と、さらに延々と、アーカイブズの話をしてくれます。視察は予定時間をはるかに超えて、周囲が薄暗くなるまで続きました。
　イタリア国内には、このような大小さまざまなアーカイブズ施設があり、民間が所有するアーカイブズに対しても、各州に設置された国立機関である「文書・図書保護局」によって、適切に目配りが行われているようでした。
　カレッジ短期コースの「民間アーカイブズ・コントロール論」の講義では、こうした海外での民間アーカイブズ保護の実例についても、お話しできればと考えています。