コスマス年代記 プラハ教会・聖堂参事会長によるチェコ人たちの年代記

コスマス年代記 プラハ教会・聖堂参事会長によるチェコ人たちの年代記

支援総額

141,400

目標金額 100,000円

支援者
47人
募集終了日
2023年7月31日

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プロジェクト本文

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▼自己紹介

 

 このプロジェクトの実行者の浦井康男は北海道大学文学研究科でスラヴ語学を研究し、ロシア語とチェコ語を教えていました。

 2011年に退官しその同じ年に、すでに部分的に訳していたアロイス・イラーセクの『チェコの伝説と歴史』を完訳して北大出版会から出版しましたが、幸いにもこの本は日本翻訳家協会による第48回日本翻訳文化賞を受賞しました。

 その後2016年に同じイラーセクの『暗黒ー18世紀、イエズス会とチェコ・バロックの世界』をREADYFORのクラウドファンディングの助けを借りて成文社から出版しました。

 2018年には本来の専門である語学の分野で、『露語からチェコ語へーロシア語学習者のためのチェコ語入門、文法編・講読編』を、外研刊行会から電子出版の形で出しました(現在はstoresで公開中)。

 2023年の8月に、チェコの歴史と文学で古典中の古典と言われる『コスマス年代記』を、成文社から出版する予定です。

 

 

▼プロジェクトを立ち上げたきっかけ

 

 2016年に『暗黒』の出版のためにクラウドファンディングを企画し、皆様の力をお借りして無事に出版できましたが、その際にリターンに出版予定の本を当てると、予約購読の形が取れることが分かりました。もちろんREADYFORに手数料を支払わねばなりませんが、素人にはとても無理なクレジット決済のことを考えれば、とてもありがたく思いました。

 

 今回の『コスマス年代記』は多少事情が違います。年金暮らしが10年以上続いて、出版費用の捻出も厳しいですが、これは私の最後のまとまった仕事だと考えて出版を決意しました。出版社から初版印税分としてもらう献本の内の45冊をクラウドファンディングでの予約購読に回し、得た資金を出版の際のこちらの持ち出し費用の補填に充てる予定です。

 出版社では本書の予価を3000円(本体)としていますが、クラウドファンディングの予約購読では、税+郵送料込みで2500円を設定しています。  

 

▼プロジェクトの内容

 

『コスマス年代記 - プラハ教会・聖堂参事会長によるチェコ人たちの年代記』の概要:

 

 ラテン語で書かれた本書の著者コスマス(1045~1125年)については、この年代記の中で彼が自身について述べたこと以外はほとんど不明。本書はチェコの伝説時代から彼が亡くなる1125年までを記したチェコ最古の年代記で(執筆時期は 1119?~1125年)、チェコにおけるプシェミスル家のチェコ統一の正統性と、民族国家の形成を精神的に支えるものとされている。

 

 本書の持つ意義は、「現存するチェコ中世の年代記はすべて本書を出発点にしている」と言われ、チェコ最古の歴史書であると共に、「チェコの地で書かれた最も重要な中世文学作品の一つとなっている」ことである。従って本書は、チェコの歴史と文学における古典中の古典と言えるが、この年代記(chronicle)という形式には、歴史的な事件の記述だけではなく、教訓や奇跡や軍記物や歴史的逸話など、数多くの雑多なものが含まれ「ごった煮」の状態である

 

 歴史を前面に出してのこの年代記の翻訳となると、むしろ専門家の方がおいそれとは手を出さないが、本書は単に歴史学の文献という枠を超えて、読み物としても面白いので、歴史が素人の訳者は、もちろん専門家に多くの助言を求めたが、この年代記を昔人(むかしびと)の知恵の結晶と考えて訳している。

 

 この年代記のコスマスの自筆本は現存せず、写本が西欧各地で十五本確認されている。1923年にブレトルツがこれら写本の系統を定め、異同を比較したテキスト校訂版を作りこれが定本となった。諸写本の中で興味深いのは、「悪魔の聖書」と呼ばれる中世最大のギガス写本(縦88×横48×厚22㎝)で、その中にウルガータ聖書などと共にこの年代記もある。この巨大な写本は13世紀にチェコで作られ、後にルドルフ2世のコレクションに加えられたが、1648年のスウェーデン軍のプラハ侵攻の際に略奪され、2007年までスウェーデンの王立図書館で保存されていた。

 

 ブレトルツの定本に基づいた年代記のチェコ語訳は、フルヂナによって早くも6年後の1929年に出たが、一部が検閲で削除され、完全な形は1947年に出た。700年前の古典が検閲に引っ掛かったのは、第二部にある女伯マティルダとインポテンツのシュヴァーベン公爵の結婚話の部分ではないかと思われる。フルヂナのチェコ語訳はその後何度か改訂され、一番安定したものとなっているので、この年代記の日本語訳もこれらチェコ語訳に基づいている。

 

 この全三部から成る年代記は、歴史的にはプシェミスル家の代々の公の治世と内紛が述べられているが、各部の特徴は以下のようである。先ず第一部は、チェコの建国についての伝承とチェコの初期の記述だが、他の西欧の年代記から取られた記事もあり、当時の史料的制限からかコスマスの誤りも散見される。またチェコの公座をめぐってチェコ公の息子たちとポーランド公が争い、そこに神聖ローマ皇帝も絡んだ複雑な状況が描かれている。また中世西欧では命を奪わずとも視力を奪えば、その人間を無力化できるので、これ以降の内紛でも何人かのチェコ公が眼を潰されている。

 

 これに対して1034年からの第二部はチェコの統治が比較的安定した中で、同時代の出来事に対して、コスマスが見た事や目撃者から聞いた話などが詳細に記され、また当時の西欧に大きな影響与えた叙任権闘争にも言及されている。その中でチェコ公は一貫して皇帝側に付き、一代ではあったが王位も得ている。1092年からの第三部も彼と同時代の出来事であるが、ここでの内紛にはモラヴィアの分家の息子たちも加わり、非常に複雑な経過をたどり、残虐な描写もある。 また歴史的評価が確定していない人物をどう記述するかという、現代(同時代)史の持つ課題もコスマスは述べている。 

 

 この年代記には同名の人物が多いので、この翻訳ではプシェミスル家の公や東フランク・神聖ローマ皇帝に人物同定番号を付けた系図を作成し、この番号を翻訳文中でも示して、誰と誰が関わっているか等の人物関係を明示している。

 

⬤ リターンについて

 READYFORでは2022年3月より、「支援者システム利用料(220円)」が設定されました。これはプロジェクトの実行者から徴収する手数料(本件では12%)とは別に、支援者からも頂き、金銭を扱うプラットフォームとしての整備や、支援者向けのシステム開発・改善などに充てるそうです。やむを得ないので、予定していた支援金額を気持ちだけ下げました。

 

リターンは3種類予定しています。

 a) 出版の応援(800円)

 b) コスマス年代記の予約購読(2500円)・・・ 42部

 c) コスマス年代記と『暗黒』の上・下巻 (10,000円)・・・ 3部

 

 a) については、お礼の気持ちも込めて、現在空いた時間に訳しているランゲル(Fr. Langer)の『プラハ伝説』の内の、ヴルタヴァ(モルダウ)川に住む3匹の河童の話の試訳を、添付ファイルで送ることを考えています。プラハ各所(ヴィシェフラト、カレル橋、ナ・フランチシュク)についての、コテコテのうんちくを傾けた話で、注訳が大変です。

 b) については、このプロジェクトの中核です。

 c) 以前クラウドファンディングで出版した『暗黒』が、手元に3部残っていましたので、この形を組みました。『暗黒』の詳細は、「readyfor 浦井康男」で検索すれば当時のデータが出て来ると思います。

 

 ▼プロジェクトの展望・ビジョン

 

 日本におけるチェコ文学の翻訳は、著名な現代の作家、例えばチャペク、クンデラ、フラバルやハヴェルなどの翻訳に集中し、チェコの古典作品の翻訳は非常に限定されています。しかしこれらの古典は、チェコ文化の背景について、より広い歴史的な認識を提供すると考えます。

 

 そのため私はこれまでに、イラーセクの上述2作品を翻訳し出版しましたが、この度はいささか身の丈を越える、ラテン語が原文で内容も一般受けでないこの年代記を訳しました。ただ日本で本書に関心を持つ読者はさほど多くないと考えられるので、出版部数は300部です。その内の45部をクラウドファンディングに回しますが、もしこの部数が完売すれば、後は出版を予定している成文社からのご購入をお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

プロジェクト実行責任者:
浦井康男
プロジェクト実施完了日:
2023年9月1日

プロジェクト概要と集めた資金の使途

コスマス年代記の予約購読に応じた支援者に、出版できた本を郵送します。8月中に出版予定ですが、遅れることも考えて9月に設定しました。

リスク&チャレンジ

プロジェクトに必要な金額と目標金額の差額について
出版費用は70万円でとりあえず自己資金で払いますが、出版社から印税分としてもらう献本の内の45冊を、予約購読の形でクラウドファンディングで募り、こちらの持ち出し費用の補填に充てようと考えています。

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プロフィール

訳者は北海道大学文学研究科でロシア語とチェコ語を教えていました。2011年にアロイス・イラーセクの『チェコの伝説と歴史』の翻訳で、日本翻訳文化賞を受賞。2016年に同じ作家の『暗黒ー18世紀、イエズス会とチェコ・バロックの世界』をREADYFORのクラウド・ファンディンクの支援で出版。2018年に『ロシア語学習者のためのチェコ語入門(文法編・読本)』を電子出版しました。

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リターン

800+システム利用料


出版の応援

出版の応援

ランゲル(Fr. Langer)の『プラハ伝説』の内の、ヴルタヴァ(モルダウ)川に住む3匹の河童の話の試訳を、電子メールの添付ファイルで送ります。

支援者
8人
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2023年9月

2,500+システム利用料


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コスマス年代記(予約購読)

本プロジェクトの中核で、8月に出版予定の「コスマス年代記」を1部お送りします(まだ作成中なので画像はありません)。なお2500円は税+郵送料込みの金額です

支援者
42人
在庫数
完売
発送完了予定月
2023年9月

10,000+システム利用料


コスマス年代記 + 暗黒(上・下)

コスマス年代記 + 暗黒(上・下)

上記のコスマス年代記と、以前に出版した『暗黒(上下巻、本体1万円)』を、各1部合わせたもので、税+郵送料込みの金額です。

支援者
3人
在庫数
完売
発送完了予定月
2023年9月

プロフィール

訳者は北海道大学文学研究科でロシア語とチェコ語を教えていました。2011年にアロイス・イラーセクの『チェコの伝説と歴史』の翻訳で、日本翻訳文化賞を受賞。2016年に同じ作家の『暗黒ー18世紀、イエズス会とチェコ・バロックの世界』をREADYFORのクラウド・ファンディンクの支援で出版。2018年に『ロシア語学習者のためのチェコ語入門(文法編・読本)』を電子出版しました。

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