医学部入試における女性差別を認めない。弁護団活動にご支援を。

ご支援いただいた皆様へ

　既に報道でご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、2023（令和５）年５月３０日、東京高等裁判所第７１７号法廷において、対学校法人東京医科大学損害賠償請求訴訟の控訴審判決が言い渡されました。

　控訴審においては、弁護団が「最も重要な争点」であると考えていた「属性調整自体が不法行為にあたるか否か」につき、「平成18年度から平成30年度までの本件学科の一般入試及びセンター利用入試における入学者の選抜において、本件属性調整を行っていることを公表することなく学生を募集した上、本件属性調整を実施した被控訴人の行為は、本件属性調整により合否に影響を受けたか否かにかかわらず、本件学科の一般入試及びセンター利用入試を受験した控訴人らが自らの意思により受験校を選択する自由を侵害するものとして、控訴人らに対する不法行為に該当するとともに、本件属性調整がなければ合格と判定されていたにもかかわらず、本件属性調整の結果、不合格と判定された者との関係では、性別による不合理な差別的な取扱いとして不法行為に該当するものと認めるのが相当」という判断がなされました。

　原審は「本件属性調整を行っていることを公表することなく、原告らに・・・入試を受験させた被告の行為」を不法行為として認定していた（属性調整の実施には言及していなかった）ので、「本件属性調整を実施した」ことも不法行為にあたるという控訴審の判断を引出したことは、大きな成果と言えるでしょう。

　侵害された権利・利益についても、「自らの意思により受験校を選択する自由を侵害」という点は原審でも認められていましたが、控訴審はさらに、「本件属性調整がなければ合格と判定されていたにもかかわらず、本件属性調整の結果、不合格と判定された者」（いわゆる「意向確認対象者」に該当する者）との関係では、「性別による不合理な差別的な取扱いとして不法行為に該当する」として、属性調整が「性別による不合理な差別的な取扱い」であることを認めました。

　その結果、慰謝料については原審での１００万円／１５０万円という金額から、２００万円／３００万円と大幅な増額を勝ち取ることができました。

　もちろん、受験慰謝料については原審と同じ「２０万円」という認定であったこと、また、納付金差額（進学した他大学へ納付する金額と、東京医科大学へ納付する金額との差額）や逸失利益（医師になることが１年遅れることで失われた収入）については損害として認定されなかった等、控訴審の判断に納得がいかない点もあります。

　しかしながら、（判決の言回しには若干分かりにくいところがありますが）「本件属性調整を行っていることを公表することなく学生を募集した上、本件属性調整を実施した被控訴人の行為は・・・本件属性調整がなければ合格と判定されていたにもかかわらず、本件属性調整の結果、不合格と判定された者との関係では、性別による不合理な差別的な取扱いとして不法行為に該当するものと認めるのが相当」として、属性調整が「性別による不合理な差別的な取扱い」にあたるという控訴審の判断を引き出すことができた点については、勇気を出して本件訴訟を提起した原告（控訴人）の皆様とともに勝ち得た成果として、ともに喜びたいと思います。

　2019（平成３１）年３月の訴訟提起から、足掛け４年以上に渡った裁判をたたかうことができたのも、ひとえにクラウドファンディングで資金をご支援いただいた皆様のおかげであり、弁護団一同、心から感謝申し上げます。

　最高裁へと舞台を移すかどうかは、原告（控訴人）の皆様のご意向次第であり、現時点では未確定でありますが、方針が固まりましたら改めてお知らせしたいと存じます。

　引き続きあたたかく見守ってくださるよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。