東京バレエ団｜コロナ禍を生き延び、ピンチをチャンスに変えるために

2月26日のクラウドファンディング開始より11日目にして、第一目標の1,000万円を達成することができました。

本当に信じられない思いですが、ご支援の金額だけでなく、皆様が綴ってくださる応援コメントにも、関係者一同、励まされております。

たくさんのご支援に、心より感謝申し上げます。

 

ネクストゴールとして1700万円をかかげ、再度頑張ってまいりますので、引き続き応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 

私たちからもメッセージをお届けしたい、ということで、毎週月曜に東京バレエ団ダンサーからの声を更新予定です。

初回は東京バレエ団ソリストの金子仁美が登場！

2020年はコロナ禍もありながら、『子どものための眠れる森の美女』主役のオーロラ姫、『M』では印象的な「海上の月」を演じ、『くるみ割り人形』でも初のマーシャ役での出演を果たした金子。

上り調子に見えますが、その裏では怪我の苦労もありました。

 

 

 

 

2020年、バレエ団は4月初旬から1か月半活動休止になりました。どのように過ごしていましたか？

ー今年で入団10年目ですが、これまでは朝起きて、ご飯を食べて、バレエ団に行ってレッスンして、リハーサルして……というルーティーンができていたのですが、それが急になくなりました。

どうやって1日を過ごしたらいいんだろう？という戸惑いが最初は大きかったです。

そこから少しずつ切り替えて、自宅の狭い空間でも身体をどうにか動かして過ごしていました。

 

体力は正直落ちましたが、それほどネガティブにはなりませんでした。

団員だけでなく世界中のダンサーと連絡をとって、普段は見られないクラスをオンラインで受けられたり、気持ちを共有しあえたりしたことも大きかったと思います。

ただ1か月半はやっぱり長かったです。

 

そこから6月にバレエ団が再開して、身体をとり戻すのにどれくらい時間がかかりましたか？

ー普段ですら2日休めば身体が重たくなるので、それが1か月半です……はっきりしたことは言えないのですが、1か月は確実にかかりました。

ですが、バレエ団の先生方も少しずつ大きい動きを入れるようにレッスンメニューを考えて組んでくださったので、段階を踏むことができました。

最初は『子ねむり』（『子どものためのバレエ　ねむれる森の美女』）のリハーサルからで、私はオーロラ姫役に向けて準備を重ねていきました。

 

そうして、少しずつ積み重ねて仕上げていって、いよいよ、といったところで公演が延期になり、バレエ団も急遽お休みになりました（注：スタジオを出入りする関係者に陽性者が出たため）。

誰も悪くないけれど、身体も気持ちも目指していたものが急になくなり、レッスンすらできなくなって……再開後、延期先の日程に向けて再調整に入りましたが、その時が一番しんどかったです。

でも今は無理をしなきゃいけない時期だ、と思って踊っていました。

 

そこから公演が続きました。

ー怒涛でしたね。ですが『子ねむり』の無理もあって、9月『ドン・キホーテ』前に怪我をしてしまい、舞台には立てませんでした。

このような状況の中でも舞台ができることはとても有難いことですが、怪我をしてしまうと立てない、それがとてもつらかったです。

 

10月の『M』では復活できて自分でももう大丈夫だろうと思っていましたが、治りきっていなかったようで。

『くるみ割り人形』はマーシャ（主役）初役でしたが、劇場入りしてから怪我が再発しました。

でもこの役を降板するわけにはいかない……とどうにかして踊れるように、いろんな方に協力してもらい、鍼や注射、テーピングをぐるぐるにして舞台に立ちました。

気持ちで踊り切ったけれど、力を出し切れなかったという、悔しい気持ちも残りました。

 

2021年1月の『ニューイヤーガラ』も完治はしていない中での舞台となりました。

 

 

 

大変でしたね…今はもう大丈夫なのでしょうか？そして怪我をするとより気を付けないといけないですよね。

ーもう違和感はなくなりましたが、怪我をしてしまうと3日に1回は必ず治療に通います。

特に今はマスクのせいで体内の酸素濃度が低くなり怪我の治りも悪くなるので、酸素カプセルも取り入れるようになりました。酸素カプセル、ダンサーやアスリートだけではなく、事務仕事で座りっぱなしでも受けたほうがいいと思います。次の日の目覚めの良さが全然違います！（笑）

 

普段からもいろいろと気を遣ってらっしゃいますよね。

ー何もなくとも月1回は必ず治療に行くようにしていますが、もっと必要だとも思います。

ちょっとでも違和感があったらすぐ見てくれる方がいると安心します。リハーサルは皆やっぱり無理をしてしまうので。

治療だけでなく、ピラティス等のトレーニングで身体を整えたり、自分の骨格や身体の癖を専門の先生に見てもらったりもします。

自分の骨格を知ることはとても大切だと思います。脚を上げづらい原因が、上げる側の脚ではなく反対側にあると教えてもらったり……若いうちからそういうケアを受けられるようになるといいですね。

 

今回のクラウドファンディングでは、コロナ禍での運営費だけでなく、ダンサーの身体的サポートも含まれています。クラウドファンディングを実際にスタートしてどうですか？

ー今はどこも苦しい状態だし、芸術は二の次という空気もある中で、支援してくれる方がいらっしゃるのかな……と不安でしたが、たくさんの方が支援してくださることに驚きと感動でいっぱいでした。

『くるみ』の時は客席が満席に近い日もあって、劇場が空っぽで舞台がなくなって悲しいのは、私たちだけじゃなくてお客様も一緒だったんだなと。

なかなか直接お話できる機会も今は作れないけれど、こんなにたくさんの方に応援いただいているのだから、もっと頑張らないと、と思います。

 

クラウドファンディングの応援コメントでも『ジゼル』の感想を多数いただいています。1日目と3日目にペザントの踊り、2日目にドゥ・ウィリを踊られました。

ー6年前の『ジゼル』ではまだ新人だったので、大先輩が踊っていた役。憧れの役だったので嬉しかったです。

2幕のドゥ・ウィリは個性を出しながら幽霊として踊ること、「どういう女性だったか」ということを表現することを考えながら踊っていました。

 

コールドも24人揃って踊らないといけないですが、1人1人にそれぞれの物語があります。どういう性格だったのか、どんな死に方をしたのか……。

コールドを踊る上では先輩からのアドバイスが大きいですね。

日本一、世界一という伝統を受け継いでいかないといけないのはプレッシャーですが、この東京バレエ団の誇りでもあると思います

。その伝統をより発展させていけるようにしないと、と思っています。

 

先ほど話も出た1月の『ニューイヤーガラ』は「（コロナ禍という）不安な時代にエールを贈る」と銘打たれた公演で、セレナーデを踊られました。どのような気持ちを込めて踊っていたのでしょうか？

ー昨年は大変だったけれど、その中でもありがたいことに舞台に立つ機会も多くありました。

2021年はここからより良い年にしよう、という気持ちが大きかったです。

そしてそれは私たちだけではなく、見に来てくださるお客様にとっても良い一年になりますように、という祈りも込めて。

演目もお正月にぴったりで、2021年はいいスタートを切れたと思います。

 

 

最後に今後の抱負をお願いします。

ーまずは何より怪我無く過ごせるように。そして実はラスト20代、節目の年です。

　良い1年にできるように頑張ります！

 

金子仁美（東京バレエ団ソリスト）

雑誌「hanako」連載中！