こどもと世の中を繋ぐ『リエゾン精神学』

 

リエゾンとはフランス語で「連携」

 

『リエゾン精神学』というものがあります。リエゾンとはフランス語で「連携」といいます。子どもの身体医療の場で精神医学的な問題に対応することがコンサルテーション・リエゾンであり、まだまだ小児医療においては発展途上の領域です。しかしながらそのニーズは確実に存在することが研究されており、私たちはそれらを、小児がんのこどもたちにも実践しています。

 

診療科と診療科をつなぐ、というだけでなく、子どもを中心としてご家族、主治医、コメディカル・各専門職・ご家族・地域とつなぐ、という機能も果たすことを目標としています。

 

子どもたちの中には、治療の前後で不安が強くて夜眠れない、やる気がおきなくなって気持ちが沈んでいる、など情緒的な困難さや、状況を十分に理解できずに治療への抵抗や、衝動的に自分を責めてしまうなどの行動上の困難さなどを、療養中の悩みとして抱えておられることがあります。

 

また、何か問題が生じると「その子に問題が有る」と思われがちで、子どももご家族もそしてスタッフも疲弊してしまうこともあり、その子自身も「こんなはずじゃないのに」というストレスから治療などに対して拒否的になることもあります。そういう時に、“病気なのだから治療を受けるのは当然”、“自分のことなのにどうしてできないのか”、という視点ではなく、「何故、この子にこういう行動が出ているのだろう?」という視点で生物学的(病気そのものや治療による副作用など)・心理的(不安が強い、抑うつ的になっていないか)・社会的(ご家族のことや仲間関係など)にアセスメントをして、子ども自身の本来持つ自律性を生かしたケアの方法を医療チームに伝えて方針を共に考えていく――という役割になります。

 

本人がバイオロジカル(生物学的に)な病気の治療だけでなくて、心理・社会的にもちゃんとケアされて、療養生活をすごせるように支えています。

 

普段、医師から「(成人と違って)こどもは成長する存在だ」とよく聴きます。実際、世代・年齢によって、抱えるこころの問題やケアは違いますか?

 

こころの診療部 児童・思春期リエゾン診療科 田中 恭子医長

 

その通りで、やはり年齢によって違います。対象年齢は、赤ちゃんから思春期まで幅広く、万遍無く関わっています。

 

成人と異なるのは、こどもは成長・発達しているという視点が重要で、アセスメントと支援には欠かせない部分です。こどももご家族も年代・年齢によって大きく変わっていくため、関わり方もそれらに応じて変えていく必要があります。その見立ての際に基準とするのは、ピアジェの発達理論と、エリクソンの発達段階説です。関わっていく上では、こうした理論をベースとして念頭に置きつつアセスメント(患者さんの取り巻く状況を理論的に心理社会的に分析・評価すること)していきます。

 

幼少期ですと、家族からの分離不安、病気は自分の罰ととらえるなどの疾病受容の困難さ、発達上の心配などがありますが、その子に合った療養環境の提供や、限られた療養環境においても可能な限りの発達支援や育児支援の場を提供したり。大切なのが病院の中だけでなく、病院の外に向けて退院した後も地域で見守ってもらえるように繋げていくことです。

 

思春期の時期は、疾病や治療に伴う自身の変化により敏感となり不安になったり、心の疲れ(抑うつ)や自分や他者を責めたりするなど情緒や行動面でストレスを表出することがあります。とくに、抑うつが強いと判断されるときなどは、慎重に精神的ケアに専念することをすすめ、重要な意思決定少し先延ばしにしていただくことを提案したりなど、ケースバイケースで対応を考えていきます。

 

特に、小児医療の現場で気を付けているポイントは何ですか?

 

こころの診療部 児童・思春期リエゾン診療科 鶴丸 靖子フェロー

 

どんなに年齢が小さかったとしても、患者である本人がどう理解して受容していっているのか、それを見ているご家族もどのように受け入れているのか、というプロセスを大切にしています。

 

子どもは人権を持つひとりの存在でありそれが第一に守れられることがとても大事ですが、小さければ小さいほど、経済的にも物理的にも精神的にも他者から守られることが必要です。

 

そこで、どんなに小さい患者さんであっても、子ども自身としっかり面談を行い、お子様の発達や情緒面をアセスメントさせて頂くこと、それを通し、その子なりの自律を考えた支援を行い、病気に支配されない本来もつ子どもの力をを促していくように心掛けています。

 

ご家族との関わり方はどのようなものですか?

 

お子さんにもご家族にも可能な限りの支援が大切

 

一方で、子どもが病気になるということは、親御さんにとってこの上ない苦しみです。「(我が子が病気になったことを)自分が悪かったからではないか」という自責の念に駆られることがしばしばあります。親御さんが悲しんでおられることは、子どもにとっても悲しいことです。ですから、お子さんにもご家族にも可能な限りの支援が大切だと考えます。

 

医療をうける主体であるのは子どもであり、共に考えて生活をしていくのはご家族なので、子どもとご家族のご意向を尊重することも大切だと思います。支援者として、子どもとご家族 影に立って支えさせていただけるよう努めています。

 

精神的なサポートのゴールは、一体どのようなものなんでしょうか?

 

「こうしていきたい」「こうしていくことができる」という気持ちや希望につながるような支援を

 

ゴールは明確ではありません。こういった病院に来た、その経験をされたことから、ご家族の今後の人生で「こうしていきたい」「こうしていくことができる」という気持ちや希望につながるような支援ができればと考えています。

子ども自身、そしてご家族が本来もっておられる“力”を保障し、その内なる力を治療にも無理なく生かしていけるような機会を一緒に創ることを目標にしています。

 

このようなエンパワメントを中心とした、心理的サポート、心理教育(わくわく広場の開催、こころのスキルアップ講座など)を心がけています。

 

そして、退院した後、ご家族が自律して主体的に自分たちの力で共に人生を歩んでいかなければなりません。多くのご家族は、力を合わせながら、退院後の生活を切り開いていかれています。そのステップの厳しさを少しでも和らげられるよう、皆でできることはないかを考え、サポートするようにしています。

 

その人の人生の中で黒子になる。黒子で、後ろでそっと支えて、その人たちが主役になって自分たちの人生を歩んでいく、ということを目標としています。

 

どのような無菌室であって欲しいですか?

 

「子どもに関わるあらゆる事象において、子どもの意見を聴くこと」​

 

子どもの権利条約に書かれている「子どもに関わるあらゆる事象において、子どもの意見を聴くこと」という、子ども自身が何をどうしてほしいのか、どうあって欲しいのか、というところを丁寧に聴き取って、それが反映されるような環境が実現できることが大事と思います。子どもからの意見がどのように反映されたのかに関しても、子どもたちに対してわかりやすい方法で説明するというように、丁寧に約束を守っていくことが重要です。

 

子どもの権利に配慮すること自体、精神的・社会的QOLを良くする、という報告もあります。まずは子どもの声を聴く、そこを踏まえていきたいと考えています。

 

その上で、同世代の子どもたちとの学び・遊び、たとえ無菌室であってもリアルタイムで大切な仲間と話せるようなテレビ電話のシステムや窓、ご家族の付き添いスペースや少しでもリラックスできる空間などの整備があると良いと思います。

 

どんな世代の子どもであっても、自分は孤立していない、自分のリソースを知りそれを必要に応じて活用できる、という気持ちをキープできる場所であってほしいと思っています。

 

無菌室をつくろう

クラウドファンディグでのプロジェクト期間は終了いたしましたが、まだまだご理解・ご支援の輪の広がりを感じております。そして、一人でも多くの方々の願いのとどく企画にできればと思っております。 小児がんと戦うみんなの願いである「無菌室」の新設に、引き続き力をお貸しください。

▼お申し込みはこちら ※今年度中、もしくは資金調達の目途が立ち次第、募集は終了致します

 

今後とも、国立成育医療研究センターを何卒よろしくお願いいたします。

 

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