支援総額
目標金額 1,200,000円
- 支援者
- 152人
- 募集終了日
- 2015年12月8日
【福島沿岸部の記憶4】4歳の目に映る震災(2015.10.26.)
土埃を上げて、大型トラックがひっきりなしに行き交う場所。
海の方に目をやると、震災復興の護岸工事が、4年後のいま、急速に進んでいることが分かります。
津波に見舞われる以前、ここには家々が立ち並び、田畑が広がり、
道端で近所の人が挨拶を交わしているような
のどかな町の風景があったのでしょう。
いまは水平線まで見通せるようになった平地に、風が吹きぬけます。
そんな場所が、いつものお散歩コースになっている
福島県南相馬市に暮らす上野倖吏生(うえの・さりい)ちゃん4歳。
この日も、ご機嫌で歌ったり、踊ったり、
元気に歩きます。
この地に刻まれた「悲しみの記憶」とは、無関係にー。
全ては、倖吏生ちゃんが生まれる前に起こった出来事です。
< 2015年10月3日 福島県南相馬市での取材より>
10月3日。
「ちぃちゃん。きょうは運動会、見にきてくれて、ありがとね。」
お散歩中の倖吏生ちゃんが、急に私に向かって言いました。
大人になったんだなあと、なんだかしみじみ。
倖吏生ちゃんと、私が初めて会ったのは
震災から丸2年が過ぎた、2013年3月。
上野さん一家が、被災した自宅の隣に新しい家を建て、
引っ越しして来た時のことです。
震災後の悲しみの中、2011年9月に生まれた倖吏生ちゃん。
本当は、お姉ちゃんとお兄ちゃんがいました。
津波によって亡くなった姉・永吏可ちゃん(当時8歳)と行方不明の兄・倖太郎くん(当時3歳)です。
父・敬幸さんと母・貴保さんとで考えた妹の名前が「倖吏生」。
お兄ちゃんの「倖」とお姉ちゃんの「吏」を取って「生」という字を添えました。
「二人の分まで、という訳ではないけれど、倖吏生には、ただ生きて欲しい。とにかく、生きてさえいてくれればいい。」
— 父・敬幸さんの想いです。
当時、まだ1歳だった倖吏生ちゃんは4歳になり、
この春からは幼稚園に通い始めました。
この日のお散歩前には、朝から幼稚園の運動会がありました。
父・上野敬幸さんが代表を務める「福興浜団」のお手伝いに、毎週末やってくるボランティアの皆さんが、倖吏生ちゃんの応援団。
運動会を、みんなで見に行っていました。私も、その一人。
わがままだけど、底抜けに明るく、無邪気に笑う倖吏生ちゃん。その成長する姿は、家族を亡くした悲しみを背負い、笑うことが出来なかった父・敬幸さんが笑顔を取り戻していく過程で、とても大きな存在だったように感じます。
亡くなった2人の子ども達のことを想いながら、一方で成長していく倖吏生ちゃんがいることを、複雑な想いで見守ってきたと、上野さんは、度々カメラに向かって話してくれました。
それでも、倖吏生ちゃんと、永吏可ちゃんと、倖太郎くん。震災後の3人の歩みは、いつも一緒だったように見えます。
去年4月には、小学校入学を迎えるはずだった倖太郎くんのために、ランドセルと遺影を持って、記念写真を撮りました。
今年3月には、小学校卒業を迎えるはずだった永吏可ちゃんのために、小学校に卒業証書を貰いにいきました。
ー そこには、いつも倖吏生ちゃんの笑顔がありました。
「パパは、亡くなった二人の方が可愛いと思ってる。倖吏生よりも。
その事を、倖吏生が分かる歳になったら、どう思うのかなー。」
— 母・貴保(きほ)さんの想いです。
「帰ってこーい。帰ってこーい。帰ってこーい!!」
行方不明の兄・倖太郎くんの、遺骨の入っていない骨壷。その包みを撫でながら、倖吏生ちゃんが呼びかけます。
骨壷を抱くのは、貴保さんです。
震災当時は、倖吏生ちゃんを妊娠中だった貴保さん。
原発事故が起きた時、放射能の恐れから「赤ちゃんを守るために」と、一度は南相馬市を離れました。その間に、遺体が見つかった長女・永吏可ちゃんの火葬が行われ、その場に立ち会うことが出来ませんでした。
当時は、ガソリンが手に入らず、茨城から南相馬まで車でわずか4時間ほどの距離を戻ることが出来なかったのです。
しばらくして南相馬に戻り、9月には倖吏生ちゃんを出産。その後は、倖吏生ちゃんの子育てに追われてきました。
実は震災前、赤ちゃんが生まれることを知り、「女の子だったらいいな。」と、誰よりも楽しみにしていたのは、長女・永吏可ちゃんだったといいます。
4歳になる倖吏生ちゃんに向き合う役目は、夫・敬幸さんの分まで、貴保さんが担ってきました。
そして、去年。
倖吏生ちゃんは、震災当時3歳だった兄・倖太郎くんの年齢を超えました。
入園間際に行方不明になったため、お兄ちゃんは通うことが出来なかった幼稚園に、いま通っています。その肩には、お兄ちゃんのバッグをかけてー。
そして4年半後には、今度は、お姉ちゃんを追い越す時がやってきます。
当の、倖吏生ちゃん本人は、どう思っているのでしょう?
お散歩中、時々ふいに、お兄ちゃんとお姉ちゃんのことを話し始めます。
この日は、道路脇の側溝に向かって、突然身を乗り出したかと思うと、大声で呼びかけました。
「お水さーん!永吏可ちゃんと倖ちゃんは、いますかー?」
目の前には、流れる側溝の水。倖吏生ちゃんは続けます。
「ここが海なの。海のお水。」
(笠井 :「永吏可ちゃんと、倖ちゃんがいるのかな?」)
「うん。骨んなって、もっと下にいる。あそこへ行ったの。」
倖吏生ちゃんが指さす方向には、水平線が見えます。側溝の流れの先には、確かに海が広がっています。
その海岸から、こちらに向かって、ひっきりなしに出入りする大型トラックの列。私と倖吏生ちゃんの二人が歩く、すぐ真横をビュンビュンと走り去って行きます。
こうした護岸工事が進んだために、実は、海岸線で行方不明者の捜索をすることが出来なくなっていました。そんな事など、工事関係者の方達は知る由もないのだろうと思いながら、その様子を倖吏生ちゃんと一緒に眺めます。
ー どうして、自分の家の周りには他に家がないのか?
ー どうして毎日、こんなにトラックがたくさん走っているのか?
そんな風景を目にしながら育つ倖吏生ちゃんは、何を感じているのでしょうか。
そして、一度も出会うことなく、海に連れて行かれてしまったお兄ちゃんとお姉ちゃんを、4歳なりに想っているのです。
震災から4年半。
解体されずに残る、被災した上野さんの古い自宅の前で、いつものように小さな手を合わせます。お父さんやお母さんがやっているのを見ていて、自分一人でも出来るようになりました。
天国のお兄ちゃん、お姉ちゃんに、心の中で、何を語りかけているのかな?
「倖吏生ちゃん。また、今度お話ししてね!」
リターン
3,000円
【最新の取材情報お届けコース】
・お礼メール
・最新の福島取材と制作状況の情報提供
- 支援者
- 62人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2016年1月
10,000円
【上映会へご招待コース】
3000円の引換券に加え
・上映会へのペア招待状
・「福島の津波」を伝えるメッセージカード
- 支援者
- 50人
- 在庫数
- 12
- 発送完了予定月
- 2016年1月
30,000円
【DVDお届けコース】
10,000円の引換券に加え
・エンドロールへの名前掲載
・完成したドキュメンタリーDVD
・福島の復興支援団体「福興浜団」タオル
- 支援者
- 19人
- 在庫数
- -5
- 発送完了予定月
- 2016年5月
30,000円
【菜種油お届けコース】
1万円の引換券に加え
・エンドロールの名前掲載
・完成したドキュメンタリーDVD
・福島県南相馬の菜の花畑生まれ、菜種油『油菜ちゃん』270g
- 支援者
- 17人
- 在庫数
- 2
- 発送完了予定月
- 2016年5月
30,000円
【11月27日 追加コース!】
1万円の引換券に加え
・エンドロールの名前掲載
・完成したドキュメンタリーDVD
・福島県南相馬の菜の花畑生まれ、マヨネーズ『油菜ちゃんマヨ』170g入り、1個
- 支援者
- 1人
- 在庫数
- 19
- 発送完了予定月
- 2016年5月
100,000円
【あなたの街で上映会コース】
30,000円の引換券に加え
・完成したドキュメンタリーの上映会開催権
・福島の復興支援団体「福興浜団」Tシャツ
- 支援者
- 4人
- 在庫数
- 1
- 発送完了予定月
- 2016年5月