【突き放す。】

この少年は事故で右手右足を失いました。

杖を突きながらぎこちない足取りでやってきて、初めて義足を履いた。

生きていくうえでは不便もあるだろう。人よりやりづらいこともあるだろう。

ちょっと暗い表情をしたこの少年は、義足を手に入れ、家族に何を話したのだろう。

これからが成長期。どんどん大きくなって、来年にはこの義足が履けなくなっているかもしれない。

そしたらその時また作ろう。

人によっては、この少年に対し必要以上に手を貸そうとする人もいる。

でもこういう時、私は放っておくことが多い。放っておいて、目の端っこで彼が困っていること、できないことを見つけ、適当に手を貸せばいいと思っている。

日本にいると、健常者と障害者の壁のようなものを感じ、過干渉になるか、あるいは徹底的に無視をしている場面に出くわすことがある。そのどちらもなんだか嫌な光景だ。

適当な距離を保ちつつ、補い合えればそれで良いと思うので、これからも私と障害者の距離は一定を保っていると思う。

願わくば、次にこの少年に会った時、もう少し明るい表情をしていてくれると嬉しい。