【第11弾】蘇る六代目の舞台、小津安二郎『鏡獅子』を次世代へ。

お早うございます。松竹大谷図書館の武藤祥子です。

プロジェクト開始16日目となりました。おかげ様で連休中もご支援を頂き、もうすぐ目標額の50％に届きそうです！ご支援とともに皆様よりいただいた4Kデジタル修復チャレンジへの温かい励ましのお言葉に、スタッフ一同喜んでおります。また、過去に『鏡獅子』をご覧になったことがある方の映画への思いや、４Kデジタル修復後の映像をぜひご覧になりたいという皆さまの思いがこもった応援コメントやメッセージも大変嬉しく読ませて頂いております！

これからも『鏡獅子』4Kデジタル修復へ向けて頑張って参りますので、ご協力・応援をどうぞよろしくお願い致します！

さて今回の新着情報では、ご支援いただきました方への成立後のお礼についてご紹介いたします。

５千円以上のご支援を下さった方へは、『鏡獅子』４Ｋデジタル修復プロジェクトへのご支援の記念になるように、そして当館の所蔵資料がいつも支援者の皆様のおそばにあるように、という思いを込め、当館所蔵の『鏡獅子』完成台本の表紙をデザインに使用したオリジナルの文庫本カバーをお礼としてお送り致します。

文庫本カバー見本

  
完成台本の表紙　タイトルの下に「全三巻」とあるのはフィルムの巻数

「完成台本」とは、制作段階で作られる準備稿や改定稿、決定稿や撮影稿などとは異なり、タイトルバックから、音楽・効果音まで完成した映画の通りに記録された台本を言います。この台本は、当館が所蔵している『鏡獅子』の完成台本で、映画の映像・音声と同じ内容になっています。

表紙の「鏡獅子」のタイトルの右側には「昭和十年撮影　昭和廿五年十一月廿七日審査」と、日付が入っています。また、ナレーションの最初に「六代目尾上菊五郎は申す迄もなく歌舞伎界に於ける近年の名人でありました」とあり、続いて六代目の業績を紹介する部分が加えてある事から、この映画が、六代目尾上菊五郎が昭和24[1949]年に亡くなった後、再編集され昭和25[1950]年に11月27日に映倫審査の試写を行ったものである事が分かります。

第三期歌舞伎座の外観と客席

映画の冒頭には、当時の歌舞伎座の正面玄関、客席、舞台や花道など場内が映され、昭和20[1945]年に戦災で焼失してしまった第三期歌舞伎座を知る上でも貴重な映像となっています。

『鏡獅子』の舞踊部分の撮影は昭和10［1935］年6月、歌舞伎興行中の歌舞伎座で、25日の終演後から翌日の10時まで夜を徹して行われました。また、舞踊の前に挿入されている楽屋での六代目菊五郎の姿は、翌昭和11［1936］年5月14日、歌舞伎座で『春興鏡獅子』が上演された折に撮影された事が、『キネマ旬報』昭和11年5月21号に書いてあります。この楽屋の映像には、化粧前(鏡台)の六代目菊五郎の右側に後シテの獅子の振り毛が、また左側に手獅子が置かれているのが映っています。

完成台本は、台詞、ト書き、効果音、音楽まで完成した映画の内容と一致しているので、字幕制作の作業などにも利用されます。今回のプロジェクト成功の暁には、日本語版と英語版の字幕も作っていただく予定ですが、その際にもこの完成台本が重要な参考資料となります。

松竹映画の完成台本は定型のデザインなのでシンプルな表紙ですが、映画製作に関連した大変貴重な資料です。この完成台本の表紙のデザインの文庫本カバーを、プロジェクト成立後のご支援のお礼にお贈り致します。