支援総額
目標金額 3,000,000円
- 支援者
- 286人
- 募集終了日
- 2024年10月23日
北條秀司スクラップブックご紹介 その3『王将』
北條秀司の数ある作品の中でも『王将』をご存じの方は多いのではないでしょうか。明治から昭和初期に大阪で活躍した将棋棋士坂田三吉の波乱に富んだ人生を描いた『王将』は、昭和22(1947)年6月の有楽座、新国劇公演のために書き下ろされた作品です。


この年は新国劇にとって創立三十年で、北條秀司は記念の年に相応しい企画を練っていました。
なかなかいい企画が思い浮かばなかった北條は、大映から依頼され中断していた映画のシナリオの執筆を促され、京都に滞在していました。
そこへ新国劇の辰巳柳太郎から電話があり、坂田三吉の企画を提案され非常に興味を持った北條は、坂田三吉の資料を集めにかかります。大映は北條が戯曲の執筆に戻る事を快諾し、映画化の際は大映に、と話がつきます。これが後に昭和23(1948)年の伊藤大輔監督・脚本、阪東妻三郎主演のヒット作『王将』へとつながります。
坂田三吉は昭和21(1946)年7月に亡くなっていましたが、北條は坂田を知るあらゆる人に会い、談話を集めました。「北條秀司スクラップブック」には、「王将 阪田翁資料」と書かれたスクラップブックがあります。そのスクラップブックには、取材で集めた談話やメモ、将棋に関する新聞記事などが貼ってあります。


また、北條は、坂田が過ごした大阪の地をめぐり、苦節時代を過ごした長屋で、線路の脇越しに明かりをつけた通天閣が見えたのを、背景に使うことを思いつきます。以来通天閣は「王将劇」の象徴となったのでした。
『王将』初演の内容は、明治末期、通天閣の見える裏長屋で妻子を顧みず将棋の修行に明け暮れる無名の棋士時代から、大正10年頃名人とうたわれる全盛時代を迎える中、電話で女房小春の死を知るまでを描いています。
舞台稽古では演出を務める北條と辰巳が終始ぶつかり合い、殴り合いにまで発展するのではないかと周囲をハラハラさせましたが、初日が開くと辰巳の演技は坂田三吉がのり移ったのではないかと錯覚を起こさせるような出来栄えで、観客を感動させます。大詰の幕切れでは観客はもちろんのこと、登場している俳優まで全員顔が上げられない程泣いてしまったということが、新国劇内で後の語り草にまでなった芝居でした。
『王将』の大当たりを受け、続編を、という声が上がりますが、取材した材料を初篇で惜しげもなく使い、坂田三吉の人生で一番劇的な部分を一作品に詰め込んでしまったこと、特に「小春を大詰で死なせてしまった」ことを後悔し「こんなことならもっと生かせておくんだった」と自書『演劇太平記』で北條は述べています。
その後苦労して取材を再開し書きあげられた「続王将」は、昭和25(1950)年1月に大阪歌舞伎座で初演されます。
「続王将」は初篇後の大正13年に後援者に押し切られ関西名人を名乗ることとなった坂田三吉が、関東の将棋連盟から長期間に渡って追放され孤立した時期を経て、昭和11年、和解後の南禅寺での木村八段との対局、そして天龍寺での花田八段との対局までを描いています。
第三部の「王将 終篇」は昭和25(1950)年11月京都南座で初演されました。
前作の最後で東京の高段者との対局に惨敗を喫し侘び暮らしを続ける坂田が、愛弟子が勝ち続けるのを見届けながらも、自分の中の将棋への情熱が再燃するのを感じ、愛弟子と娘が婚約した喜びのなか昭和21年77歳の生涯を閉じるまでを描いています。

この『王将・終篇』で、北條秀司は昭和26(1951)年度の毎日演劇賞を受賞します。

昭和36(1961)年2月には、明治座で『王将』『続王将』『王将・終篇』をまとめた『王将一代』が上演されました。37歳から77歳までの坂田三吉の人生を7幕にわたって上演し、初日から数日は上演時間が5時間かかったと当時の新聞にあります。
映画では、阪東妻三郎の主演の大映作品に続いて、昭和30年辰巳柳太郎主演の『王将一代』(新東宝)、昭和37(1962)年、昭和38(1963)年に三国連太郎主演で『王将』『続王将』(東映)、昭和48(1963)年に勝新太郎主演で『王将』(東宝)が制作され、いずれも大ヒットとなりました。



『王将』は、将棋界にも影響を与え、坂田の死去から9年後の昭和30(1955)年10月、日本将棋連盟は、坂田に名人位と王将位を追贈します。また、翌年には大阪府豊中市の服部霊園に日本将棋連盟が墓を建立します。


また北條秀司には、昭和32(1957)年日本将棋連盟からアマチュア三段が与えられ、のちに村田英雄の『王将』のヒットにより四段が与えられました。
芝居に映画、歌にドラマと、多くの作品が作られた『王将』は、一つの道を究めるために突き進む坂田三吉の執念ともいえる人生を描き、人々を魅了してきました。最近では、令和3(2021)年KAAT神奈川芸術劇場で『王将』三部作が、長塚圭史芸術監督のもと上演されたのが記憶に新しいですね。
北條秀司スクラップブックには『王将』関連のスクラップブックが34冊あります。
今回のプロジェクトのご支援で、アーカイバル容器(保存箱)を制作し、保存環境を整えることで、今後もより良い状態で永く保存し、活用することができるようにしたいと考えております。
おかげ様で、現在目標額の74%に到達しております。引き続き皆様の応援をよろしくお願いいたします。
リターン
3,000円+システム利用料

A|【税控除対象】お気持ち応援コース(3千円)
■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2025年4月末に送信予定)
■寄付受領書・控除証明書(2025年1月末に発送予定)
- 申込数
- 80
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年4月
5,000円+システム利用料

B|北條秀司作品台本デザインオリジナル文庫本カバー
北條秀司作品『井伊大老』『浮舟』の台本の表紙をデザインに使用したオリジナル文庫本カバー(非売品) をお届けいたします。
■サンクスメール
■松竹大谷図書館HPへのお名前掲載(ご希望の方のみ)
■報告書(2025年4月末に送信予定)
■北條秀司作品台本デザインオリジナル文庫本カバー
-----
※ 本コースへのご支援は税控除の対象となりませんのでご注意ください
- 申込数
- 55
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2025年4月
3,000円+システム利用料

A|【税控除対象】お気持ち応援コース(3千円)
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- 80
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5,000円+システム利用料

B|北條秀司作品台本デザインオリジナル文庫本カバー
北條秀司作品『井伊大老』『浮舟』の台本の表紙をデザインに使用したオリジナル文庫本カバー(非売品) をお届けいたします。
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■報告書(2025年4月末に送信予定)
■北條秀司作品台本デザインオリジナル文庫本カバー
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※ 本コースへのご支援は税控除の対象となりませんのでご注意ください
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