お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。
今回は、当館が昨年実行した【第4弾】プロジェクトの進捗につきまして、大きな成果をご報告致します。

 

昨日、松竹大谷図書館が所蔵するGHQ検閲台本を検索・閲覧できる《松竹大谷図書館所蔵・GHQ検閲台本検索閲覧システム》を公開しました!

 

この検索・閲覧システムは【第4弾】プロジェクトのご支援で、GHQ検閲歌舞伎台本のデジタル撮影及びデータベース化を行ったもので、松竹大谷図書館が所蔵するGHQ検閲台本のうち、著作権保護期間が終了した歌舞伎台本約350冊を検索し、全ページ閲覧できるようにしたものです。

システムの開発及び公開は、松竹大谷図書館と立命館大学アート・リサーチセンターとの間で結ばれた協定に基づき、アート・リサーチセンターが行っています。当館HPトップページの【利用案内】「「貴重書」検索・閲覧サービス」にもリンクが貼られております。詳しい利用法についてはご利用ガイドをご覧ください。

 

ご利用ガイド(PDF)

 

これまでは、当館の閲覧室で原資料を閲覧するしか術がなかったGHQ検閲歌舞伎台本ですが、今回《松竹大谷図書館所蔵・GHQ検閲台本検索閲覧システム》の公開によって、ネット環境があれば、どこでも検索しデジタル画像を閲覧する事ができるようになりました。また、使用するたびに紙が破損するなど、非常に状態が悪かったGHQ検閲歌舞伎台本ですが、【第4弾】プロジェクトの支援金により、立命館大学アート・リサーチセンターで補修を終え、今後はデジタル画像を使用する事で、原資料はこれ以上劣化しないように書庫で保存できるようになりました。

 

それでは《松竹大谷図書館所蔵・GHQ検閲台本検索閲覧システム》をご紹介いたします!


今回は『夏祭浪花鑑』を検索して、画像を見ることにしましょう。【第4弾】プロジェクトページの(外表紙の端が破損した状態のGHQ検閲台本)という写真で、一番上に写っていた、あのボロボロの台本です。

 

補修以前の外表紙の端が破損した状態のGHQ検閲台本


 【検索閲覧システムトップページ】 


この《松竹大谷図書館所蔵・GHQ検閲台本検索閲覧システム》のトップページの[資料名]の項目に「夏祭浪花鑑」と入力して検索します。

 

【検索結果一覧】 
2件ヒットしました。上部にヒットした台本が表示されています。1947(昭和22)年の台本ですね。

 

【検索結果一覧】[拡大] 


1件目の[小画像]をクリックしてみますと…

 

【サムネイル画像一覧】 
『夏祭浪花鑑』の台本全ページのサムネイル画像の一覧が表示されます。外表紙もきれいに修復されて撮影されているのが分かります。各サムネイル画像をクリックすると、閲覧モードに移ります。一番上、左から2番目の画像をクリックしてみます。

 

【閲覧モード】 
閲覧用の大きな画面が開きます。画面右側、台本の表紙全体に薄っすらと赤鉛筆で英字が書かれているのが見えるでしょうか?墨で書かれたタイトルや幕名と重なっていて、見えにくい部分もありますが、「Shochiku」「Tokyo Theatre」「Natsumatsuri naniwa kagami」「Kabuki play」「from july 5,1947」「Kichiemon Tokizo Troupe」など、台本の上演に関する情報が記されています。


左上部には「<戻る」「進む>」「≪最初へ」「最後へ≫」のアイコンがあり、ページの移動ができます。その下には当館の請求記号とタイトル、幕数、原作者などが表示されています。そしてその下に「詳細書誌」というアイコンがあります。こちらをクリックすると、書誌の詳細な情報が表示されます。

 

【詳細書誌情報】 
[書誌解題]の項目に「昭和22年7月東京劇場上演か?」とありますね。この[書誌解題]に入力されている上演年や劇場等のデータから検索することもできます。当館で所蔵しているプログラムを確認すると、このときの公演では、初代中村吉右衛門が団七、六代目中村芝翫(後の六代目中村歌右衛門)がお梶、二代目中村又五郎が傾城琴浦、初代中村吉之丞が義平次を演じています。

 

ふたたび、先ほどの【閲覧モード】の画像に戻ります。この【閲覧モード】で画像をクリックすると、もうひとつ画面が開き、「+」のポインタとなりますので、この「+」を拡大したい箇所でクリックすると、拡大されます。


【閲覧モード】[拡大]


 こちらが表紙を拡大した画像の一部分です。右下部分には、「CP」(Censorship Passed 検閲通過)印が押されています。内容がチェックされ上演許可がおりた台本に押される印です。その左隣には、「削除20頁」とあります。どうやら、20頁目に検閲により削除された箇所があるようです。【サムネイル画像一覧】で台本の20頁(実際には20丁)を選択し、表示してみます。

 

【閲覧モード】[台本20丁]


 右のページの、のど際に「20」と丁数があり、「住吉髪結床の場」で、出牢したばかりの団七が、武士の佐賀右衛門にせまられていた傾城琴浦を救う場面の台詞が書かれています。団七の台詞「イヤ邪魔は致しませぬ。斯う見た処がお侍ひの分として女を捕へて見苦しいチトおたしなみなされませ。」の「お侍ひ」が赤で四角く囲われ、右に「削除」と書かれています。この行の上部欄外にも、「検 カット」と赤字で記されています。「お侍ひ」の部分が削除の対象になったことがわかります。

 

この「お侍ひ」の台詞、たとえば最近の公演では、平成26年7月歌舞伎座、市川海老蔵さんの団七での上演台本を見てみますと、「斯う見た処がお侍の女子を捕えて…」とあり、現在では何事もなく舞台上で使われています。女に無体をしかける侍を制する台詞なのですが、当時のGHQ検閲は、台本による事前検閲なので、どうやら「侍」という言葉に過敏に反応して削除対象としたようです。侍に倫理観を求める台詞ととらえたのでしょうか。しかし、何よりこうして実際に検閲された台本を見ますと、この「お侍ひ」を削除した後、舞台上ではどう台詞が言われたのだろうか…と、気になってきませんか?

 

この《松竹大谷図書館所蔵・GHQ検閲台本検索閲覧システム》の公開により、【第4弾】プロジェクトは全てのプロジェクトが完了致します。この成果は、【第4弾】のプロジェクトでご支援・ご協力下さった皆様のお力添えの賜物です。スタッフ一同、心より感謝申し上げます。そして、この検索システムが、日本の演劇研究や検閲史研究に役立つことをひとえに願っております。

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