ウイルス感染症の治療薬の素となる化合物を海洋生物から見つけたい

メインページでも少し触れましたが、今日は抗ウイルス薬の起源の話をします。あまりマニアックな話にならないように書いていきたいと思います。1950年に遡りますがイェール大学のバーグマン教授がフロリダの海岸で見つけたひとつの海綿に含まれていた物質が起源です。「乾燥させた海綿を有機溶媒のアセトンで抽出したところ美しい結晶が得られた」、と論文にはあります。

沖縄に生息する海綿の一種.　本記事にある化合物は入っていません.

この結晶がのちの抗ウイルス薬のおおもとなのです。構造決定を行うと、この物質は生物の設計図であるDNAの原料と似て非なる構造を持っていました。DNAは当時の科学界では最もアツい話題でした。ワトソン―クリックがDNAの2重らせん構造を見出したのとほぼ同時進行です。DNAの原料のニセモノが癌細胞やウイルスに作用する、と目を付けた科学者はすごいですね。がん細胞やウイルスはニセモノを取り込んで、「使えないDNA」を作っていしまい増殖できなくなります。この作用機構は今でも抗がん剤や抗ウイルス薬を作る際に使われているものです。天然物に教えてもらった創薬のヒントです。それから製薬会社は競うようにいろいろな化合物を合成し、核酸系抗ガン、抗ウイルス薬という大きなカテゴリーを作ってゆくまでになりました。

Science Shiftというホームページにサイエンスライターの佐藤健太郎さんが寄稿している大変おもしろい記事があります。創薬に興味のある方はご覧になってはいかがでしょうか。

https://scienceshift.jp/antiviral-drug-02/