ご寄付いただいたみなさまへ感謝と報告書【新潟大学 山崎将紀】
みなさまご機嫌いかがでしょうか?2024年の6〜8月にイネの高温対策のクラウドファンディングに挑戦し、多くの皆様からのご支援と応援をいただきました。
まずは新潟市における2024年と、異常気象であった2023年の夏場の気候を振り返ってみましょう。
(1)気温について:2024年8月の平均気温は、新潟市が28.0℃(平年26.5℃で+1.5℃)であり、2023年が30.6℃(平年比+4.1℃)でした。その一方で、9月まで残暑が厳しく2024年9月の平均気温は25.0℃(平年22.5℃で+2.5℃)であり、2023年が25.8℃(平年比+3.3℃)でした。一般に平年並みは、平年値の±0.5℃とされているので、2024年も暑かったといえます。
(2)降水量について:2024年8月の降水量は42.0mm(平年163.4mmで26%)、2023年が2.0mm(平年比1%)でした。2024年8月新潟市はある程度の降雨はありました。
(3)日射量について:2024年8月の日照時間は197.1時間(平年205.2時間で96%)、2023年が326.1時間(平年比159%)でした。2024年8月新潟市の日照は平年並といえます。
(4)海水温について:2024年8月の新潟市を臨む下越沿岸の海水温の平均は28.7℃(平年26.5℃で+2.2℃)、2023年が30.0℃(平年比+3.5℃)でした。2024年の海水温も高かったといえます。
(5)異常高温とフェーン現象など:2024年8/22-23にかなりの高温が観測されました。新潟市の最高気温は36℃を超え、38.6℃を観測した地点がありました。2024年台風は新潟県には接近せず、フェーン現象は観測されませんでした。その一方で、2023年は8月と9月で計4回フェーン現象が新潟県で観測されました。
8月の末に新潟県のいくつかの地域で大雨が降り、そのために各地で「コシヒカリ」の倒伏が観測されました、そのため収量の低下が各地で報告されています(後述あり)。
以上の気象状況のことや生産者の努力や対策もあり、新潟県産米の一等米比率は77.9%(2023年は14.0%)、「コシヒカリ」は74.1%(2023年は4.3%)に大幅に回復しました(農林水産省2025年4月30日速報値)。しかし、2024年の新潟県の作況指数が98で「やや不良」で、2023年の作況指数は95で「やや不良」となります(農林水産省2025年3月速報値)。
これからも夏場の高温は続くと予想されるので、高温対策として2つの研究を進めており、新品種開発と肥料による栽培対策の確立を目標としています。
- 新品種RILXの開発と調査
前回高温に強い系統として、発見できたRILXを調査しました。2024年の新潟大学農場でも整粒率(きれいな玄米である整粒の割合で、品質の指標の1つ)は「コシヒカリ」よりも高い値でした(表1と図1)。他の高温試験でもRILXは整粒率は高く、高温に強いことが確実になりました。高温に強い要因を調べている最中ですが、その一つに植物体の緑の度合いが濃く光合成活性が高いかも、という結果が得られました。そのほかにも玄米が長いこともわかり、「コシヒカリ」との収量はほぼ同じでした。ご寄付者も参加した、食味試験も実施して、高評価が得られたことはとても嬉しかったです。
その他にも高温に強い系統が選抜できてきました。引き続き、RILXもあわせて研究を続けていきます。

- 肥料の追加による栽培対策
2023年の異常気象に対しての対策の1つに肥料を追加すること(穂肥(ほごえ)と言われています)が挙げられています。2023年の酒米品種「越淡麗」に対して、良質な酒米を生産するために穂肥を追加して1等米の評価が得られました(表2)。この実績より、穂肥の追加を積極的に行うことにしました。2024年はドローンを活用して肥料を追加しました(図2)。新潟県内でもイネの高温対策としてオプションとして勧められています(図3)。2024年の結果として、全て1等米を得ることができました。その一方で、2024年の収量は低下し、その要因としてこの年の初期生育不良と考えられています。収量性の要因は複雑なため、現在考慮中です。

ご寄付者との交流や活動報告、広報活動ができたことは楽しかったです。そのうち、NHK新潟WEBのサイトを紹介いたします。https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20250302/1030032387.html
ご寄付いただいた、総計522.5万円の使途について
・今回のクラウドファンディング研究のために3人の人件費 1,138,387円
・返礼としての講演会のための旅費 153,090円
・クラウドファンディングの手数料など 804,650円
・残金 3,128,873円 この寄付金は引き続き、クラウドファンディング研究のための人件費等に活用していきます。
ひとまず報告書は書き終えますが、新品種や栽培方法の改善については引き続き研究していく必要があります。美味しいお米を生産し、イネ生産者を支えていきたいです。2023年と2024年の日本各地での高温のため、コメの品質低下と収量性低下が顕著となり、最近の米価高騰を引き起こしていると考えられます。私どもの研究が諸問題を克服できるように頑張っていきます。
みなさまの引き続きの応援どうかお願いします!
新潟大学農学部 山崎将紀




















