平山素子さんより応援メッセージ

 

鈴木竜です。クラウドファンディングを開始してから今日まで、多くの方より暖かい応援をいただき目標金額の半分まで到達することができました。本当にありがとうございます!

 

前回の夏木マリさんとのインタビューに引き続き、今回はコンテンポラリーダンサー/振付家の平山素子さんから応援の言葉をいただきました。同じ業界でずっと第一線を走り続けていらっしゃる大先輩との出会いは、僕のダンサー人生に大きな影響を与えています。対談形式のインタビューを通して、コンテンポラリーダンスのこと、少しでもみなさんにその世界を覗いていただければ幸いです。

 

 

 

平山さんとの出会いがターニングポイントに

 

鈴木:突然ですが、僕、平山さんとの出会いがダンサー人生のターニングポイントなんですよ。

 

平山:え、そうなの?

 

鈴木:イギリスのダンス留学から帰ってきたばかりの2013年、原宿のスターバックスにいたら電話がかかってきたんです。「2週間後の平山さんの舞台に出ませんか?」と。

 

平山:私のオープンクラスに突然、坊主頭の男の人(竜)が参加して、その時は少し話しただけでしたがよく踊るので印象的でした。しばらくして新国立劇場での新作『Trip trptych』のリハーサル中にダンサーの一人がケガをしてしまい、代役が必要となり急に竜くんのことを思い出しました。「今すぐ劇場に来てください」って電話したんですよ。タイミングを逃さずチャンスに変えることって大事。

 

鈴木:「え、今からですか!?」と驚きましたよ。

 

平山:代わりとはいえ誰でもいい訳じゃない。他のメンバーも「お!」と緊張感を持って欲しい。竜くんは、活動意欲にあふれていて新鮮なものを運んできてくれる予感がしたんです。

 

鈴木:僕にとっては、日本に帰ってから最初に出た舞台になりました。もともとジャズダンサーだった僕は、イギリスにいる間にコンテンポラリーダンサーになったので、帰国しても業界にまったく知り合いがいなかった。それが平山さんの舞台に出ることで、日本のダンス界隈の人に「なんか知らない坊主頭が踊ってるぞ」と目にしていただけたのはすごくラッキーでした。それから何度も作品に呼んでいただき、今月も「NHKバレエの饗宴」で新作『Chimaira/キマイラ』に参加させていただきましたね。

 

平山:出演してくれた小㞍健太くんも竜くんも単なるイエスマンではなく、身体を使ってアイデアを出し一緒に創造の渦を生み出すことができる。今回はこれにイスラエルから帰国したばかりの堀田千晶さんがフレッシュな風を加えてくれました。

 

鈴木:いつもお声がけくださりありがとうございます。

 

平山:でも、今回のNHKみたいにしっかりと企画制作されているものばかりではないから声かけづらいんですよ。腕がいいダンサーはたくさんいるけれど、作品を生み出すリハーサル環境は十分じゃない。ギャランティが最初の段階で明確ではないこともあるし、稽古場を借りるにもお金や労力がかかる。今回の竜くんのクラウドファンディングにも関係するけれど、力のあるダンサーがもっと自由にのびのびと作品を創ることに没頭できる制度は必要ですね。

 

 

 

 

「ダンスで食べていこう」と思ったことのないまま

多くの賞を受賞し、オリンピックの演技指導まで

 

鈴木:僕にとってダンスってもはや生活の一部なんですけど、素子さんはどうしてダンスを作っているんですか?

 

平山:自分に向いているからかな。面白いと感じたことを形にした時に一番しっくりくるのがダンス。文章や絵を描いてみても、歌ってみても、感じたことと違うものが出来あがっちゃうんです。

 

鈴木:いつ「ダンスで食べていこう」と思ったんですか?

 

平山:私は普通に大学と大学院に進学してダンス部で踊っていただけでした。ダンサーにも振付家も目指していなかった。在学中に友達に誘われて観に行った公演が見たことない魅力的な内容であったのでアンケートに「出てみたい」って書いたところ、のちに本当に連絡が来て出演しました。これが、H・アール・カオスというグループで刺激的で面白くてダンスを続けてしまった。最初はギャラも無く、そもそもダンスで生計を立てている人を間近で見たことがありせんでした。「ダンスで食べていこう」って決断した時期はあったかな?

 

鈴木:意外でした。ずっとトップを歩んできた人生かと思っていました。

 

平山:全然そんなことないです。自分の人生を振り返ると笑っちゃうこともあります。名古屋から東京に出てきた時には家もお金もなくて、長い間友達の家を間借りしたり、稽古場にボストンバックひとつ置いてサウナに泊まったりしてました。竜くんの年齢の時は、ただただ踊っていただけでした。

 

  鈴木:それがなぜ振付家に?

 

平山:自分の活動もしておきたいなと決心してエントリーした国際コンクールで新作が必要でしたが、振付家に頼むお金がなく、自分で振り付けたんです。舞台装置のイスはリサイクルショップで3千円くらいで買い、自分で色を塗ったものでした。それが結局1位&ニジンスキー賞を受賞してしまい、急にいろんな出演依頼をいただくようになりました。バレエフェスティバルでも踊り、その際にボリジョイ・バレエ団(世界三大バレエ団のひとつ)のプリンシパル、スヴェトラーナ・ザハロワさんが「自分が踊りたい」と買ってくれたのが大きな進歩でした。私の最初の振付作品です。彼女は今でも私の『Revelation』を踊り続けてくれています。その後、大きな仕事をいただくようになり、振付の奥深さに目覚めていったって感じです。

 

鈴木:人生って不思議ですね。そう考えると僕の人生も、ジャズダンスをして、イギリスに行って、コンテンポラリーダンスに出会って……這いずり回っていたらいつの間にか、世界で活躍するバレエダンサーたちと名前が並んでる。

 

平山:そうやってうまく流れに引き寄せられればいい。竜くんは自分にできることを最大限にすればいいと思う。エリートはエリートゆえにできないことが絶対にあるから、自分のルーツを否定することは無いと思う。強くあれ!って感じでしょうか。

 

鈴木:そう言ってもらえると、少し自信が出て来ました。

 

 

今回のプロジェクトで、一皮剥けたい

 

平山:竜くんは、今すでに日本のダンス業界ではすごく踊れるダンサーの分類に入ると思うけれど、自分ではチャレンジしていない表現性という意味でのポテンシャルがもっとあります。最近竜くんはカンパニーを立ち上げているけど、自分自身のために作品を創るのもいい事だと思う。

 

鈴木:はい。素子さんからはよく「なんで先に考えてそこでやめちゃうの?」って言われますね……

 

平山:きっと竜くんは、自分の中の怪獣をまだ見たことが無いんですよ。もっとなんでも餌にして成長し続けるエネルギーそのものになれたらいいのに。

 

鈴木:とりあえず今の自分は与えられたものの中で、さあ何が出来るか、というところです。100%でやるしかない。そしたら巡ってくる環境がだんだんレベルアップしていくんじゃないかな。

 

平山:絶対そう。ひとつひとつ一生懸命やるだけ。今回も賞を受賞して、海外に滞在して作品づくりに没頭できるチャンスを手に入れたじゃない?素晴らしいこと。

 

鈴木:この海外制作は「30歳節目のビッグチャレンジ」だと思ってるんです。でも、30歳ってダンサーにとってどんな時期なんでしょう?

 

平山:とにかく夢中になって踊った方がいい。30歳を過ぎると環境や立ち位置が整ってきて、あいまいだったことが明確になってくるから、これからどんどん自分のやりたいことを突き進んでいけばいい。

 

  鈴木:海外には行ったほうがいいと思います?

 

平山:海外でも日本でもどっちでもいいとは思うけど……。ただ、海外の良さは、いろんな価値観の人たちの目に触れるのでキャリアアップのチャンスが広がること。それに日本の観客よりもフェアな目で素直に反応してくださるので、アーティストとしてはとても励まされることかな。

 

鈴木:ヨーロッパのお客さんは、有名な人の作品でもつまらなかったら途中で帰りますよね。だから最後まで観てくれると安心します。でも実際に海外で作品を上演するのはかなり大変ですね、金銭的なサポートはほぼないですし。

 

平山:そう。海外から招聘されても、滞在費のみで旅費やギャラは自腹の場合がほとんどですね。継続しづらい。

 

鈴木:10回、20回と上演し続けていく中で作品が育つことは絶対にあると思うんですけどね。今回も上演の機会は少ないけれど、せっかく制作のために三ヶ月の時間をいただけるから、なにかしら一皮剥けたい。三ヶ月、命かけないとな、と思っています。

 

NHKバレエの饗宴で上演された平山さん振付「Chimaira」の稽古より

 

コンテンポラリーダンスは「考える時間」

 

平山:海外と比較するのは悔しいけど、日本はもうちょっと表現の多様性が認められるといいと感じています。思いきりナンセンスなことをやってお客さんが途中で帰っちゃう公演があってもいいのに、日本でそれをやると確実に次の仕事がない。そうなるとどんどん「売れるものはなんだろう」と考え始めて、創りたいものより、注目を浴びる奇抜なものをやりはじめてしまったりする。

 

鈴木:そもそも日本にはコンテンポラリーダンスを観る人口が少ないですよね。

 

平山:30年以上使われている言葉なのにコンテンポラリーダンスをよく理解しようとしていないような。「難しい」と言ってしまってこちらの懐に切り込んでくる観客が少ない気がしますね。

 

鈴木:前に公演のアフタートークでお客さんから「作品について説明してください」と言われたこともありました。正解を教えてほしいんでしょうね。僕たちは学校でもテレビでも「正解はこれです」と提示され続けているし、ネットには情報が溢れていて自分で考える時間が無くなっている……。そんななか、明確な正解を提示しないコンテンポラリーダンスは「難しい」と思われるのかもしれません。

 

平山:コンテンポラリーダンスに興味がない人は、すでに評価された有名なものを観に行くことに慣れているんでしょう。安心できるものが価値あるものだって思いたいのかも。

 

鈴木:価値のあることをやってると思うんだけどな。

 

平山:やってる。ちゃんと評価してくれる人もいます。

 

鈴木:僕としてはコンテンポラリーダンスは「考える時間」になるといいなと思っているんです。作者が思う正解=作品を観て、「自分はこう思う」「それいいね」「いやよくない」と考えを深めたり、隣の席の人と対話ができたら面白いな。

 

平山:自分なりの答えを探すことって、楽しい。客席で「なんだこれ?」「お、今なんか綺麗だった」「失敗しちゃった?」と考えているうちに、あっという間に時間が過ぎていく。ダンスの意味が理解できるかどうかは面白さとは関係ないかな。創造に没頭しているときが至福の時で、ここには永遠がある。もっとたくさんの人が個人が発信しているものに興味を持って、それを自分がどう感じたかを楽しめるといいなあと思います。

 

 

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平山素子

愛知県出身。H・アール・カオスに参加し、99年世界バレエ&モダンダンスコンクールにて金メダルとニジンスキー賞をダブル受賞(モダンダンス部門)。01年文化庁派遣在外研修員としてベルギーへ留学。帰国後は、フリーランスで数多くのプロジェクト公演に参加。05年より本格的に振付家として活動開始。近年ではミュージカルの振付、シンクロナイズドスイミングやフィギュアスケートの日本代表選手の演技指導にも協力するなど各方面に活躍の場を広げている。

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