隈研究室・平野さんのにもあったように、廃校リノベーションの対象となる施設を選定する際には、現在その施設を地元の人がどのように活用しているのかを参考にしました。今回選ばれた3つの建物は、保育園、小学校としての役割を終えても、地元の人に愛され、地域の人が集まる場所として活用されてきました。 

そこには、それぞれ「この場所をこのまま廃れさせなくない」との思いで動いてきた方々がいます。

 

江田島市の沖保育園の場合は、ここで保育士として働いてきた沖本さんがその一人です。

 

沖保育園の歴史は古く、今も園の玄関前に吊るされている鐘がそれを物語っており、第一回卒業生から送られた鐘に記された年号は「昭和29年」。

現在の園舎は昭和48年に建築され、多い時は120人もの園児が通っていたそうです。

 

  

その後、子どもの減少とともに、平成18年の沖保育園をはじめ、中学校、小学校が次々と閉園・閉校に。

「閉園後まもなくから、島の子どもたちの思い出が詰まったこの場所をこのまま終わりにさせたくないと思って、私と別の保育士や地域の女性が立ち上がり『園舎を使わせて欲しい』と役場に掛け合いました。最初はいろいろ難しかったのですが、粘り強く交渉して、いくつかの条件のもとで使わせていただけるようになりました」

 

こうして園は、再びママと子どもたちの笑い声が響く場所に。

季節行事などを楽しむ「星の家(おうち)」(2月15日の記事で紹介)のほか、ママたちのフラダンスや、島に縁のある楽器「ライアー」の教室の場所にも使われるようになりました。

 
 

島で手作りされたライアーを見せてくれた久保本さん。「島に嫁いだ時は知り合いもいなくて不安でしたが、この場所などであたたかい島の人達と出会えて、すっかり馴染みました」

 

「ここはもともと保育園なので、子どもたち室内や園庭で安全に楽しむことができます。その間、ママたちも気兼ねなく習い事や、情報交換のおしゃべりなどが楽しめるのがいいんです。

一時は子どもが極端に減りましたが、最近はまた若い世帯のターンなどで子どもが増えてきました。ここは自由に集える場所にしているので、今では島じゅうからママと子どもたちが集まってきて、親子の友達づくりの場所として役に立っています」と沖本さん。

 

最後にリノベーションへの期待を聞きました。

「老朽化が気になっていたので、子どもとママたちがより安全で快適に過ごせる場所になったらうれしいです。また私たち以外にもここを使いたいという人や、島以外からもここを訪れてくれる人も増えるかもしれません。そうした方々との交流や今後のより良い運営方法も模索しながら、ここがより長く愛される場所として残ることを願っています」

 

沖本さん(前列左から2番目)と島の女性たち。前列左端の今井さんはここの卒園児。後列中央の女の子は現在5年生で、幼稚園児の歳から星の家で遊んできた一人。