あの白くておっきいの、何？

シャドゥ・シアターは、スクリーンに身体の影を映して物語を演じます。

でも、保育園や幼稚園には、影を映すようなスクリーンはありません。

だから私達は毎回真っ白い大きなスクリーンを、お遊技場に設置することからはじめます。

すると…
「あれ…なんだろう？」
「何してるの…？」
と決まって可愛い声が聞こえてきます。

子ども達からすれば、いつも遊んでいる場所に、大きなスクリーンが立つわけですから気になって仕方がありません。
開演時間が近づくにつれて、わくわく、そわそわ、期待感が高まっていくのを感じます。
そしてそれは私達も同じなんです。
今日はどんな反応をしてくれるだろう？どんな風に楽しんでくれるだろう？とドキドキしながら本番を迎えます。

スクリーンを隔てて、子ども達と私達は出会います。
スクリーンの裏で演じながら、直接はみえないけれど子ども達がきゃっきゃと楽しみながら、もっともっと！と、どんどんスクリーンに近づいてきているのがわかります。
私達にとって、とてもしあわせな瞬間です。

目の前のスクリーンをみながら、子ども達の想像力はそこに留まりません。
もっともっと広い世界を冒険してくれたんだなぁと、シャドゥ・シアターを終わったあとの子ども達の瞳をみていつもそう感じます。
ここが楽しかった！これが出てきた！と一生懸命お話してくれるのを聞いていると、ああ、今日この場所で出会えて本当によかったなぁと思います。

表情もなく、台詞もなく、影と光の世界。
小説を読む時に、頭の中で聞こえてくる登場人物の声が、読む人によって違うように、
シャドゥ・シアターを観ることで心の中に生まれる世界も一人一人絶対に違うんです。
それってとても素敵なことだと、誇らしく思います。

大谷由梨佳