All inclusive？問いかけつづける、新ブランド始動。

 

障害の有無、体型、文化的背景……あらゆるものを受け入れて、人も、動物も、自然も、どれも取り残さない。そんな「オール・インクルーシブ」なファッションのあり方を目指すこと。

 

それが、私たちSOLITの使命です。

 

2020年に立ち上がったばかりの私たちは、ファッションデザイナー、作業療法士、理学療法士、医師、鍼灸師、マーケター、ライター……それぞれの専門領域を背景に、「すべてを受け入れる」ファッションの形を皆で模索しています。

 

そして現在SOLITでは、第一弾サービスの立ち上げに向けてクラウドファンディングに挑戦中です。

https://readyfor.jp/projects/solit

 

多くの方にプロジェクトをご覧いただくなかで聞こえてきたのが、「オール・インクルーシブ」というテーマの「より具体的な中身」が知りたいという声でした。

 

特に多かったのが、
「障害を持つ人にとってのファッションの悩みって、例えばどんなこと？」
「SOLITは、それをどんなふうに解決していこうとしているの？」

 

「体型」や「社会通念」に縛られて自由なファッションが楽しめないというのは、多くの人にとって実体験のあることかもしれませんが、「障害を持つ方のファッションの課題」は、身近に当事者がいないと見えてきづらいものかもしれません。

 

そこで今回、SOLITで開発・研究に携わる専門家チームのメンバーと、その良き相談役となってくださっている障害当事者の方にインタビュー。

 

「ファッションを選ぶとき、どんなことが課題になるのか？」「どんなファッションのあり方が理想なのか？」詳しく伺いました。

 

聞き手：廣安ゆきみ（READYFOR）

 

 

 

「着たい」より「着やすそう」で決めるから、ボタンの服は選べない。

 

ーー今日はよろしくお願いします！みなさんは、それぞれご自身の立場を生かして、SOLITの「専門家チーム」に所属されていますが、もともとのモチベーションは？

 

しんさん：

僕はリハビリテーション科の専門医ですが、大きな目標として「障害と向き合って生きる人すべての人生を豊かにしたい」という思いがあります。でもそれは病院の中では完結できないこと。

 

入院している期間はせいぜい半年くらい、そのあと外来で定期的に会うことはあっても、それだけでは「豊かにする」には不充分だと思いました。

 

病院外での活動も深めていきたいと思っている中で、SOLITの構想を知り、二つ返事で参加しました。

 

ゆりかさん：

私も、作業療法士として普段病院で働く中で、医療従事者の職域を広げたい、という思いが強くありました。

 

病院に勤めているだけでは、他業界・業種の方と協業してプロジェクトに携わるという機会はあまりないので、SOLITに関わって視野が広がっている気がします。

ーーしょうこさんは、SOLITで障害を持つ当事者としてアイデアや意見を伝えているとのことですが、もしよければ、現在の障害について教えていただけますか？

 

しょうこさん：

高校3年生のとき、車で事故に遭いました。首の骨が折れて、頸髄を損傷し、今は鎖骨から下が麻痺している状態です。

 

私の場合は、足は全く動かなくて、暑いとか痛いとかの感覚もありません。腕は、ちょっとは曲げられるものの、曲がる範囲は限られていて、握力はゼロ。他にも排泄障害や自律神経の機能不全、血圧コントロールが難しいなどの症状もあります。

 

でも車椅子生活も9年になり、今では自分の生活スタイルもだんだん確立されてきました。

 

YouTubeでは、車をひとりで運転される様子などもアップされている。

ーーファッションについてもお伺いさせてください。しょうこさんは普段どのように服を選んでいらっしゃいますか？

 

しょうこさん：
結構普通だと思いますよ。オンラインでも、リアルなお店でも、どこでも買います。
特に行きつけのお店があるわけでもなく。ただ、自分が「着たい」と思う気持ちよりも、機能性重視で選んでいますね。ショップでも、「これ着やすそうだな」という目線で商品を眺めてしまうというか。

 

ゆりかさん：
私も、作業療法士として服のアドバイスをするとき、どうしても「着やすい服」を提案しがちだという自覚があります。

 

しんさん：
医者は、着衣について直接アドバイスする場面はほとんどないのですが、とはいえ患者さんにとって服選びに課題があることは痛感しています。

 

ーー具体的には、どんなことが課題になるのでしょうか？

 

しょうこさん：
あくまで私の場合はですが、車椅子を使っていて基本の姿勢が座位なので、裾が長すぎたり、座ったときに邪魔になるようなボトムスはNG。スカートも、ひらひら引っかかって移乗（車椅子から別の場所に移ること）しにくいのでだめですね。同じく移乗のとき不便なので、袖が長くてだぼっとしているトップスも着づらいです。

 

私の場合は握力がないので、ボタンは自分でつけられないから、そもそもボタンの服は選択肢に入らない。排泄障害のこともあって、脱ぎ着しにくいワンピースもほとんど着ません。

 

ゆりかさん：
ボタンは大きな課題だよね。あとは、腕が上がりづらい人にとっては、トップスも腕が通しやすいかどうか、かぶりやすいかどうかも重要。

 

しょうこさん：
現実的な着やすさの問題とあわせて、心理的なハードルもあって。本当は、ハイウエストのデニムにTシャツをインして……みたいな流行りの格好もしてみたいですが、車椅子に乗っている状態でそんな服を着ても「ださいだろうな」と。

結果的に、普段はズボンにパーカー、というような格好に落ち着いてしまいますね。

 

しんさん：
排泄障害がある男性だと、導尿の収納バッグを身につけている必要があります。足に巻きつけている方が多いのですが、インナーに収納できるような服があったらいいよねという話をしたりもしますね。

 

ただ、障害って本当に人それぞれ違うので、一言でファッションにまつわるニーズといっても千差万別なのですが。

 

ファッションにまつわる悩みも多様。SOLITの試作品もさまざまなパターンが。

 

 

「障害のあり方は多様ですね」で、済ませないために

 

ーー今回、みなさんがが「SOLIT」に参加することを決めたのはなぜですか？

 

しょうこさん：
私は車椅子歴9年になるので、ファッションについても自分なりのノウハウはたまってきています。ぱっと見れば、この服は着れそうだな、って判断できるようになったので、服選びに「困っている」というわけではないんです。

 

でも逆に言えば、「着たい」という気持ちは、諦めるのが自然になってしまっていた。

SOLITはそこに正面から向き合おうという会社。すごく希望を感じました。

 

ゆりかさん：
「着たい服」を実現しようというサービスが、これまでまったく存在しなかったわけではありません。

 

ただ、完全オーダーメイドだと、どうしても一着数万円ほどの高価なものになってしまいます。また、大手ブランドがインクルーシブファッションのラインを打ち出すこともあって、それは嬉しいことなので、SOLITはそれが当たり前になるような社会を作っています！

 

しんさん：
だからこそ、僕たちの専門家チームでは、多種多様な障害の種類と、服を着る過程で必要な動作を結びつけてマッピング・分析することを進めています。

 

障害は本当に多様なのですが、「多様ですね」で済ませてしまうと、結局服も完全オーダーメイドでなければいけなくなってしまう。できるだけ類型化をすることで、価格帯を抑えたセミオーダーで提供できるように……というのがSOLITの目指しているところです。

 

なんでこんな商品が今までなかったんだろう。

 

ーーSOLITは、そこに風穴をあけようとしているわけですね。そしていままさにリリース第一弾のプロダクトを開発中だとか……？

 

ゆりかさん：
はい、まずはベーシックスタンダードな、お仕事でもお休みの日でも着たくなるシャツ2種類と、ジャケット・パンツのセットアップを開発中です。

 

しょうこさん：
私もプロトタイプを試着したんですが、すごくかっこいいのに着やすくてびっくりしました。なんでこんな商品が今までなかったんだろう、と思ったくらい。

ーー感動が伝わってきます！　いちばん嬉しかったのは、どんなところですか？

 

しょうこさん：
まず、ボタンがついているシャツがとても着やすかったこと！ボタンは無理だと自分の中で諦めているところがあったから……。

 

実は裏が磁石みたいになっていて、力を入れなくても一瞬で留められるようになっているんですが、見た目は完全におしゃれなボタン。素材もやわらかくて伸びやすいので、腕が上げやすい。でもてろっとしすぎていなくて、きちっと感がある。丈の長さも、車椅子に乗るのにもちょうどよかったですね。

 

ゆりかさん：
ジャケットは、いかに肩や腕が入りやすくするかが大事です。縫い目の工夫次第で全然違うので、デザイナーチームが細かい調整を重ねています。

 

あと、下半身に麻痺があると胸のあたりに筋肉がつきやすい人もいるので、どんな体型の人でも着やすい形にするにはどうしたらいいかということも、考えています。

 

色味もシンプルで、ユニセックスで使えるように工夫されている。

 

ゆりかさん：
パンツは、ウエストの部分をどうするかが重要です。今までだとゴム素材にしちゃうのが定番だったのですが、それではかっちり感が出ないからどうするか……と。ウエストの留め具の作り方については、試着時にしょうこちゃんにアドバイスをもらったね。

 

しょうこさん：
ここまで、私だけでなく多くの当事者の方の声を受け止めて反映されてきたからこそのクオリティだなと。

 

ゆりかさん：
試着会の現場でも、フィードバックを受けて、デザインチームが即座に「こう修正したらどうだろう」と動いてくれて。小回りの良さや、みんなの真摯さが本当に心強い。SOLITの魅力は、そんな「チーム力」にもあると思います。

 

ジャケットも試着！

 

 

SOLITのアンバサダーを全国に

 

ーー医療従事者と障害当事者とデザイナーと経営サイドと……さまざまな立場の方がフラットに混ざっているのが、SOLITの強みですね。

 

ゆりかさん：
他業種の方と関わることで、10年の現場経験の中でかたまってしまっていた価値観がほぐれて、初心に戻ったような気持ちです。これまでは「こんなのあったらいいな」と心の中だけで思っていたものを、メンバーに伝えたらすぐ実現できることもやりがいにつながっています。

 

しんさん：
「すべてを受け入れ、取り残さない社会をつくる」というSOLITの理念のもとにこれだけさまざまな人が集まっている状況は本当に新鮮で、すべてが面白くて刺激的ですね。

 

ーー最後に、これからのSOLITに期待することを教えてください。

 

しょうこさん：
車椅子ユーザーにとっては、試着が一番の課題だなと思っています。特にボトムスは、お店で気軽に試着できないので。だから、どんな人でも気軽に試着できる環境ができたらいいなあと。

 

ゆりかさん：
（SOLIT代表の）田中美咲さんとは、リハビリ職の中でSOLITのアンバサダーがどんどん増えたら嬉しいよね、という話もしています。

 

しょうこさん：
確かに。いまでこそ、私も自分で服を選んでいますけど、当初は生活のいろんなことを療法士の方々に頼っていました。作業療法士さんから「SOLITってブランドがあるよ」「着てみる？」と提案してもらえれば、選択肢があることも喜びになるし、リハビリのときなどに試着させてもらってそのまま購入……ということもできそうですね。

 

ゆりかさん：
全国のリハビリ職に、SOLITのことが広まったら良いよね。それで、こういうふうにファッションを楽しめるんだという価値観がもっと広がったら嬉しいです。

 

しょうこさん：
とにかく、SOLITには期待しかしていないので！　今後の展開も、楽しみですね。

 

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■インタビューを終えて

 

「ファッション誌を見て、『こんなロングコートかっこいいなあ』って、思うことはあるんですけどね」

 

しょうこさんのそんな言葉が印象に残っています。

 

衣食住の「衣」をこえた「ファッション」の原点は、「これ素敵だなあ」という素朴な胸の高鳴りにあるはず。私でも着れるとか使いやすそうとか、そんな判断に阻まれる手前で、もっとシンプルに、ファッションを楽しむ気持ちをすべての人に。それが、SOLITの目指すものなのだと思います。

 

逆に言えば、だからこそ「着れる」をストイックに追求する。機能のことを、誰も気にしなくて良いように。

 

きっとそれが、 #着たいも着れるも実現したい というテーマの真意です。

 

SOLITの描く未来、私もとても楽しみです。

 

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SOLITでは現在、クラウドファンディングに挑戦中！

期限は12月25日（金）23:00。
400万円の目標を達成できなければ全額返金となるAll-or-Nothing方式です。

 

SOLITの活動に賛同いただけた方は、ぜひご支援をお願いいたします。

https://readyfor.jp/projects/solit

 

ハッシュタグ「#着たいも着れるも実現したい」をつけて、ファッションに関するお困りごとをつぶやくSNSキャンペーンも実施中！

 

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