2か月ぶりの再会

ずっと探していたのに見つからなかった物が思いがけない場所から出てきた、という経験をお持ちの方は多いのではないかと思います。最近、私も調査の時にそんな経験をしました。

小さくて軽く防水なので、カンムリウミスズメなどの洋上調査で愛用していた双眼鏡がありました。ところがこの双眼鏡が春ごろから見当たらなくなってしまい、家の中をあちこち探していました。調査に持っていくザックや旅行かばんの中、机の下や棚の後ろ、事務所の机の上や引き出しの中・・・・・・思いつくところはほぼすべて見たのですが、どうしても見つかりません。愛用していたので寂しく思いながらも、10年ほど使い続けてこのところ見えにくくなってきていたし、仕方ないからこの機会に買い替えるか、と思い始めたのが7月初めのことでした。

静岡県下田市の神子元（みこもと）島では、カンムリウミスズメの繁殖環境を改善するため、皆さんにご支援いただきながら人工巣を置いています。7月中旬、その結果確認と片付けのため、神子元島に上陸しました。当日は午前4時半に島に上陸し作業開始。快晴で気温も高く、暑さは厳しかったものの作業は順調に進みました。作業がひと段落して休憩しようと岩の上に座ったところ、隙間に何やら紐のようなものが見えました。少しでも海洋プラスチックを減らそうと思い、ついでに拾って帰って捨てようと手に取ったところ、思わず「ん？？」と声が出ました。紐には「Nikon」のロゴが付いているではありませんか。そうです、探していた私の双眼鏡だったのです！

神子元島には、4月末と5月の初めの2回、カンムリウミスズメの調査のために上陸しています。双眼鏡は5月にはすでになかったので、4月末から今までずっと、この隙間にあったのでしょう。5月の調査でもこの岩に座ったのに、気づかなかったなぁ・・・・・・。
2か月半ほど風雨にさらされた双眼鏡は砂にまみれてはいましたが、内部に水が入ることもなく普通に使え、おかげで洋上を飛んでいくアマサギを見つけることもできました。島に来るまでは買い替えようかと思っていましたが、せっかく帰ってきたことだし、もうしばらくは使おうと思います。
それよりなにより、海洋プラスチックを増やすことにならなくてよかった！というお話でした。島から帰る時には持ち物が全部あるかどうか、よりしっかり確認したいと思います。

（田尻浩伸／自然保護室室長）