森の宝「ヤマネ」を守る。いきもの達が棲む豊かな未来をみんなで作ろう

こんにちは、皆さん！

 

ヤマネ・いきもの研究所の進めるSDGs教育プログラムでは、研究者、教育者、行政が共に取り組んでいます。

ヤマネと共に未来を築く：SDGs教育プログラムの取り組み

今回は、国土交通省紀勢国道事務所・二村直司先生（前尾鷲教育長・地学専門家）と連携し、和歌山県の新宮高校生徒に実施した「ヤマネ保護×道路開発×防災×教育」の活動を紹介します。

 

三重県の尾鷲市は、風光明媚な反面、南海トラフによる地震・津波に見舞われてきました。そのため、山手に造る自動車専用道路（高速道路）は、市民の避難場所であり、災害時に物資を搬入したり、ケガ人を運ぶ「命の道」です。

 

しかし、道路計画地の森に天然記念物ヤマネが生息していました。開発による森の伐採は、ヤマネたちの生息地を奪い、生活を困難にします。道路による森の分断は、ヤマネたちの餌や異性との出会い、営巣場所の確保を妨げるため、深刻な問題となっていきます。それで国交省紀勢国道事務所と私たちは「開発」と「ヤマネ保護」、「防災」、「教育」を組み合わせる活動を尾鷲小学校とも連携し展開しました。

 

工事用道路もヤマネの棲む森を分断します。それで調査等で調べた尾鷲の森でヤマネの餌とする苗木を植えて、将来、それらが成長させてヤマネたちの通り道とすることにしました。そして、樹林が回復するまでの間、動物たちが利用できる歩道橋を創ることしました。その歩道橋の下は車が通ることはないので、歩道橋は、朽ちて、自然に還る材料（蒸篭とロープ）で創ることにしました。それで材料を丸い蒸篭とし、内部に小部屋を創り、小動物の隠れ場所としました。蒸篭と蒸篭との間は、フクロウの翼の長さより短い距離で設置しました。それは、フクロウが獲物を捕まえるとき、羽根を広げながら足を突き出して捕まえます。それで、蒸篭間の距離を翼長よりも短くすることで、フクロウからの攻撃を困難としてるのです。

 

その設計考案は、アニマルパスウェイを2004年から共に開発・普及してくれてきた岩本和明氏（アニマルパスウェイと野生生物の会、元清水建設）によるものです。

 

さらに、その苗の一部を尾鷲小学校の2年生の児童が6年になるまで5年間、育て、それが植栽されました。ヤマネやヒメネズミなどが利用しました。児童たちは、5年間、ヤマネのこと、ヤマネの棲む森のこと、アニマルパスウェイのこと、尾鷲の津波のこと、津波がきた場合の高速道路への避難方法の実体験、トンネル工事現場体験、アニマルパスウェイ建設現場体験などを体験しました。

 

＝自動車専用道路の建設現場でのアニマルパスウェイ建設の様子を見学＝

 

＝工事中のトンネルも見た子どもたち＝

 

2024年3月、みんなは尾鷲中学校を卒業しました。卒業記念に私たち関係者から卒業するかれらに「尾鷲に生きる天然記念物ヤマネとその保全と学び」をまとめを報告するパンフレット(饗場さん編集）を記念として贈ったところです。

 

これらの活動概要は、イギリスの霊長類学会で論文『Mitigating the effects of road construction on arboreal Japanese mammals: benefits for both wildlife and people』の中に含めています。この論文では栃木のアニマルパスウェイを天皇ご一家が見学されたことも記しています。

 

リンク

▷　和文概要：『イギリスの霊長類学会に2022『イギリスの霊長類学会に2022年８月に掲載された論文の要約と概要』年８月に掲載された論文の要約と概要』

▷　英文論文（道路開発と自然との共生を目指す日本での技術の歩み）：『Mitigating the effects of road construction on arboreal Japanese mammals: benefits for both wildlife and people』

 

 

開発とヤマネ保護の共生を図る取り組み

三重のわアニマルパスウェイ

2021年に国土交通省が設置した「三重のわアニマルパスウェイ」は、9年間の饗場・湊らのヤマネの学術調査をもとに開発されました。国交省によりこのパスウェイには「三重のわアニマルパスウェイ」と命名されました。それは

①自然との共生の「和（わ）」

②自然に帰る循環の「環（わ）」

③わっぱの「輪（わ）」の

３つの意味が込められました。

 

紀勢国道（自動車専用道路）の工事で伐採された所では、ヤマネのために植林が進められ、樹林が成長するまでの間、朽ちても良いアニマルパスウェイを設置してヤマネの移動を助けています。

 

 

 

 

 

ヤマネトンネル

自動車専用道路のトンネルを造る際、樹木を伐った後のトンネル坑口に尾鷲のヤマネの餌となるヒサカキ、ツバキなどの苗を植栽しています。それらに苗の一部は尾鷲小学校の児童が育てたものです。それらの樹が成長すればツバキの蜜や花粉をヤマネが食べるだけでなく、多くの昆虫・クモ、メジロなどの野鳥も食べにきます。それによりトンネル坑口は生物多様性の場となり、ヤマネなどの樹上動物の移動できる場ともなります。このような場は、OECMの場ともなっていきます。

 

自動車専用道路開発が、住民の利便性と防災からの安全性と経済効果を高めると共に、ヤマネをはじめとする野生生物の保護の場にもなればと願って、私たちは活動しています。

 

 

そのような三重県のSDGsの場を新宮高校1年生200人が学びにきたのです。

 

生徒たちの学びの場＝エコツアーともなる

2023年11月の高速道路がメンテナンスで一般車が通らない日、200名の新宮高校の生徒たちは、一生の中で2度とないだろう高速道路を歩きながら、「三重のわアニマルパスウェイ」と「ヤマネトンネル」を見学しました。

 

関連記事：

▷　新聞記事・紀伊民報： 『ヤマネ保護の取り組み見学』

▷　Webニュース・NEWSPICKS：『ヤマネの｢歩道橋｣､開発と自然保護を両立 和歌山の新宮高生､三重県の高速道路整備地で見学』

▷　Webニュース・紀伊民報：ヤマネの｢歩道橋｣､開発と自ヤマネの｢歩道橋｣､開発と自然保護を両立　和歌山の新宮高生､三重県の高速道路整備地で見学然保護を両立　和歌山の新宮高生､三重県の高速道路整備地で見学

▷　国土交通省中部地方整備局・プレスリリース　小学生への環境学習会を開催！ ～ヤマネの生育環境と道路整備と防災を学ぶ～

見学会の成果

参加した生徒の一人は、「ヤマネを守るための様々な工夫を知り、開発と自然保護の両立が可能であることを学ぶことができた。小学生が参画したことに驚いた」と感想を述べています。

 

この見学会を通じて、生徒たちは生物多様性の重要性と自然との共生の必要性を深く理解しました。さらに、森林保護とインフラ開発の調和、地震や津波といった自然災害の影響についても学びました。これにより、SDGsの目標達成に向けた生物多様性の保持の必要性についても理解を深めました。2024年の秋もこの新宮高校の体験学習を準備中です。

 

食性解明から保護へ

ヤマネの保護には、基礎研究が欠かせません。今回のクラウドファンディングの主な目的であるヤマネの糞の調査研究もその一環です。糞などの調査でヤマネの食性を知ることができれば、上記のようにアニマルパスウェイやヤマネトンネルの場所にその地域の餌植物を植え、ヤマネや野生生物への開発からの影響を緩和したり、保護に繋がるのです。そのために各地での糞による食性解明が

大事なのです。

 

また、環境教育を通じて地域の方の参画で、地域の生態系を保全に寄与し、持続可能な未来を街を築くことを目指しています。

ヤマネと「ふつうのいきもの」

わたしたしは、ヤマネのような希少種と同時に、「ふつうのいきもの」も大切にしています。彼らは地域の生態系を支える重要な存在であり、油断するとメダカのように絶滅危惧種になり得るため、注意が必要です。知らないと守ることはできません。それで、山梨県北杜市の里山の水路や田んぼやため池の野鳥や生きものを毎月1回調べてきました。今、4年目です。

 

＝冬にやってくるツグミ。田んぼで＝

 

＝ため池のマガモ＝

ご支援と応援のお願い

ヤマネの保護とそのための生態研究を続けるためには、皆さまのご支援が欠かせません。

クラウドファンディングにご協力いただき、ヤマネを守るお手伝いをしていただけませんか？

皆さまのご支援と応援を心よりお待ちしております。