プロジェクト終了のご報告
【ご支援ありがとうございました】
昨年は「クラウドファンディングによる横浜市民ギャラリー収蔵作品修復プロジェクト」にご支援いただき、誠にありがとうございました。改めまして目標の140万円を超えるご支援を賜わり、対象作品2点について当初の予定以上の処置を施すことができたこと、御礼申し上げます。
【対象作品2点の修復を実施しました】
対象作品2点は、当初の予定以上の十分な修復を施すことができました。
また、美術品輸送車を用いて安全に当館と修復工房の間を輸送することができました。
・三橋兄弟治《教会の見える風景》1939年/水彩、紙/74.0×57.0㎝
修復前の調査では、本紙の折れ・波打ちや破れ、裏面のフォクシング(褐色の斑点)、絵具の剥落などが見られたほか、不要な紙片などの付着物がありました。また、赤外線撮影により下書きの線が明らかになりました。
絵具はデリケートなため、汚れの除去は柔らかい刷毛や繊維の細かいクロスを用いておこないました。破けた箇所の接着、欠損部の補填、亀裂が生じている絵具層の固着強化、折れた部分のフラットニング(伸展)処置、付着物の除去などの処置をおこない、新しく作成した中性紙のマットに固定、額をクリーニングして再額装しました。
・柴田善登《山下公園の五月》1969年/油彩、キャンバス/60.0×80.0㎝
修復前の調査・赤外線撮影で、以前は縦長に木の枝のようなものが描かれていたことがわかりました。そのほか、絵具層の亀裂・浮き上がりやはく落、画布(キャンバス)の汚れやシミなどが見られました。また、画布の木枠への張り込みが緩んで画面に凸凹の変形があったほか、固定の鉄釘の錆びなど、額装状態にも問題がありました。
作品は額から出し、クリーニングや絵具層の接着などをおこなった後、画布を木枠から外してストレッチとホットテーブルでの接着強化で変形を修正し、堅牢になりました。絵具層が厚く重いので、今後の画布の変形を防ぐため、新しい木枠に合成繊維のキャンバスを貼り、その上に絵画を張り重ねました。再額装時には額の傷や汚れなども処置し、額装も改善して裏板を取りつけました。
【収支報告】
〈収入〉
171万円(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団への直接寄附を含む)
READYFOR 153万5千円
直接寄附 17万5千円
〈支出〉
作品修復費 97万2千円
作品輸送費 22万5千円
広告宣伝費 18万4千円
ギフト・報告書作成費用 3万4千円
システム利用料 28万7千円
雑費 3千円
消耗品費、その他 5千円
( 合計171万円)
【作品の展示】
「横浜市民ギャラリーコレクション展2023 描きたい風景」(2023年2月24日~3月12日)会場内にて、修復後の作品を展示、お披露目しました。同会場内にて、修復報告パネルおよび報告動画(後述)を掲出・上映しました。
【ギフトの送付・お知らせ、イベントの実施】
2023年3月16日に、ギフトの「対象作品のクリアファイル」の発送、および実施報告書のお知らせをしました。
・対象作品クリアファイル
修復後の三橋兄弟治《教会の見える風景》の写真を用いて作成しました。
・実施報告書
A4版12ページ。横浜市民ギャラリーホームページ内のプロジェクトアーカイブページでも公開しています。
https://ycag.yafjp.org/events/r4cf/
・ギフトイベントの実施
対象者のうちご希望の方に向けて、以下のイベントを開催しました。
「支援者向けコレクション展作品鑑賞ツアー」2023年3月5日(日)14:00~14:40
「支援者向け横浜市民ギャラリーバックヤードツアー」2023年3月5日(日)14:45~15:20
・ご芳名の掲載
本報告書、および「横浜市民ギャラリーコレクション展2023 描きたい風景」(2023年2月24日~3月12日)会場内パネルに、ご希望の方のお名前を掲載しました。なお、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団のホームページに掲載する、令和4年度事業報告書および寄附者のご芳名一覧(共に2023年6月末以降掲載予定)にもご希望の方のお名前を掲載の予定です。
【修復報告動画】
修復の報告動画を制作・公開しました。どうぞご覧ください。
【今後の取組】
横浜市民ギャラリーは今後も継続して収蔵作品の調査・保存・活用に努めてまいります。引続き、当館収蔵作品を温かく見守っていただければ幸いです。
横浜市民ギャラリー