レーダー ～ Kさん

 

「新たなねこが出てきたよ」

 

誰も気づかないような高架橋の下、掻いても掻いても土が見えないような、

往年の枯葉が50センチ以上もたまったような場所に捨てられたねこに、

何故気づいたのだろう。

 

「別の黒いねこが現れたよ」

捕獲しようとしたねこを諦めた途端に、

なぜ新たなねこにまたしても出くわすのだろう。

 

いつも想定しない場所で、想定しないタイミングで、

何かが起こる。

 

今回のことばかりではない。

 

 

ある時は、ねこがマンションから落ちてきた。

（警備員の女性がそれを目撃し、ねこ（後のトラちゃん）は無傷で助かった。）

 

 

ある時、近隣が騒がしいと思っていると出くわした消防署隊員にあれこれ聞かれた。他ならぬねこ仲間が自室で倒れて消防が呼ばれたのだった。

（ねこ（後のトラちゃん、ミケちゃん）は助かった。）

 

 

またある時は、入院し、のち亡くなったねこ仲間の部屋のカギを預かり、掃除やねこの世話をしていたが、よからぬ輩が現れ「鍵をよこせ」と迫られた。輩は土足のまま故人の部屋に入ってきた。

（遺されたねこ（後の黒丸）は助かった。）

 

 

多頭現場に駆け付け入室すると、

痩せた母ねこが巨大な成猫に授乳していて度肝を抜かれた。

（多頭の子達はほかの団体と協力し合い保護先を探してもらった。）

 

同じく、多頭現場で、ねこが机の引き出しという引き出しにみっちり入っていた。

 

 

授乳が必要な子ねこが残され、母ねこがいなくて途方に暮れていると、

ちょうど授乳が可能な雌猫が現れて、マッチングが叶った。等々。

（子ねこは助かった。）

 

 

Kさんはいつだってきわめて真面目に真剣に語ってくれるのだが、

Kさんの遭遇する事件やエピソードはサンダードルフィン（東京ドーム）やFUJIYAMA（富士急）より刺激に満ちている。

 

そしてその刺激的なエピソードの先には必ずねこがいて、

そしてそのねこ達はもれなくレスキューされることになっているのだ。

 

KさんはわたしたちのNPOのリーダーだが、

レーダーでもあるのかもしれない。

 

もちろんねこの。

特に助けを必要としているねこの。

 

 

 

ハイジの愛児、クリちゃんとモネちゃん。

少女漫画に出てくるようなつぶらな瞳。

 

幼猫ハイジが実は妊娠していた、という驚愕の事件も

レーダーKさんからもたらされたものだった。