高齢猫を看取るための保護猫シェルターの設立にご支援をお願いします！

 

今回はプロジェクトの概要に書いた、黒猫ちゃんのお話です。

 

この子との出会いは今から5年ほど遡り、2017年の12月頃になります。

 

当時の私はTNRに取り組みはじめたばかりのころで、いろいろと忙しい毎日を送っていました。

 

猫の捕獲に不慣れなため時間ばかり掛かっていましたが、野良猫を増やさないための取り組みにはやり甲斐を感じるようにもなっていました。

 

そんな慌ただしい日常を過ごしていたある日、車で帰宅する私の視界に信じがたい光景が飛び込んできました。

 

道路に面したピザ屋さんの入口で、1匹の黒猫が店内を窺うようにしながら座っていたのです。

 

 

その姿は店内にいる人に、何か食べ物をもらおうと訴えているようにも見えました。

 

私は黒猫の何とも言えない寂しそうな後ろ姿に強く心が揺さぶられ、そのままピザ屋さんの駐車場へ車を停めました。

 

その後、ピザ屋さんの入口でじっと佇む黒猫の方へ、私は音を立てないよう近づきましたが、気配を察知した黒猫はピザ屋さんの裏手の方へ逃げていってしまいました。

 

黒猫が逃げていった行方を確かめるためお店の裏手へ行こうとしたところ、ちょうどドアが開いて中から店員さんが出てきたのです。

 

私は出てきた店員さんに黒猫の話を聞いてみたところ、何人かの店員さんが食材の残りを黒猫にあげていることが分かりました。

 

人間用の食材を猫に与えるのは好ましいことではありませんが、店員さんの慈悲のおかげで黒猫の命が繋がっていることは、大いに感謝すべきことでしょう。

 

ひとまず私は店員さんにお礼を伝えてから車に戻り、黒猫のためのご飯を用意してあげることにしました。

 

お店の裏手にご飯を入れたタッパーを置いて物陰から様子を窺っていると、戻ってきた黒猫は私が置いたご飯を食べはじめました。

 

 

黒猫はよほどお腹が空いていたのか、私が置いたご飯を綺麗に平らげ、そして再びお店の裏手のさらに奥へと姿を消しました。

 

その次の日、同じ時間にピザ屋さんの前を通ると、やはり黒猫はピザ屋さんの入口に佇んでいるのが見えました。

 

こうなると、もう放ってはおけません。

 

私は前日と同じように、タッパーにご飯を作って、お店の裏手に置いてあげました。

 

黒猫も前日と同じように、タッパーのご飯を平らげ、お店の裏手のさらに奥へと姿を消しました。

 

 

私はご飯を食べ終えて帰っていく黒猫を見送りながら、今後も黒猫のお世話をすることを決意しました。

 

そのためには、黒猫が住みついているピザ屋さんに交渉することが必要です。

 

まず、私はピザ屋さんの入口で店員さんが出てくるのを待ち、店長さんと話をさせてもらうことにしました。

 

やってきた店長さんは私より少し若い感じで、30代半ばという感じです。

 

私は、黒猫がお店の入口で待っていることと、できれば私が毎日ご飯をあげたいことを、正直に伝えました。

 

それに対して店長さんは、店員さんが黒猫にご飯をあげているのは知っていて黙認しているものの、やはり飲食店なので堂々と猫にご飯をあげられるのは困る、と答えました。

 

 

ただ、店長さんも実家で猫を飼っているので、お腹を空かせている猫に同情する気持ちはあり、入口で待っている黒猫を追い払う気にはなれないそうです。

 

あと一押しという手応えを感じた私は、毎日ご飯をあげる代わりに黒猫の手術と周辺の掃除を約束しました。

 

それを聞いた店長さんは困った顔で黙り込んでしまいましたが、しばらくするとお店の裏手を指差して、人目に付かないよう通りから死角になる裏のスペースであげて欲しい、と言ってきました。

 

こうして、私はピザ屋さんで暮らす黒猫と、新たな関係を築くことになったのです。

 

（つづく）